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    瀬菜悠貴

    千年戦争アイギスで皇帝×王子が大好きな腐女子です。基本文章書きですがたまに絵も描きます。
    自分の性癖に忠実なので腐向け注意なものばかりですがお好きな方はどうぞ(白目)
    (大抵王子が犠牲となります)(基本タグ付けしております)

    ※リアクション下さった方ありがとうございます!励みになります(*´▽`)♡※

    Twitter:@sakuyakzu525(妄想腐垢。基本鍵垢。時々鍵を外してます)
    Pixiv:https://pixiv.me/sakuya_kzu(文章関係は基本此方に投下してます)

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    瀬菜悠貴

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    個人サイトで公開していた作品で2004年作。

    BLゲーム「王子さまLv1シリーズ」で王子×従者(カナン×セレスト)。写真、のお題で書いたものです。カナン視点。

    #王子さまLv1
    princeLv1
    #カナセレ
    kanasele
    #ほのぼの
    heartwarming

    「うん?」

     調べ物をしようとして書庫から持ってきた本を机に置いた拍子に、ひらりと何かが床に落ちた。

     ―――…? 写真…?

     床に落ちた一枚の写真を拾い上げて僕は眉を顰めた。
     そこに写っている人物。
     それは僕がよく知っている―――彼だった。
     しかし、今と比べて新緑の瞳は心なしに大きく、顔立ちも幼い。
     あどけない表情で微笑んでいるその姿は……まるで天使が微笑んでいるようで。
     何故こんな写真が本に挟んであったのか。
     思う事は沢山あるが、今そんな事を考えてもどうしようもないのも解っている事で。

     ―――確か、アルバムが在った筈だな…。

     ふと思い立って僕は自分が持っているアルバムが収まっている本棚へと足を向けた。



    「……ふむ」

     僕はおやつを運んできたセレストの横顔をじっと見ていた。
     こうしてみると……やはり写真の面影は所々残っている。
     流石に輪郭は大人の男の其れになってはいるが。
     伏せると意外に長い睫毛が表情に影を落として。

    「…? どうかされましたか? カナン様」

     お茶の用意をしていたセレストが僕の視線に気付いたのか、困惑したような表情で問い掛けて来る。

    「いや、……ちょっとな?」

     流石にお前の顔を見ていた、なんて言える訳も無く。
     つい言葉を濁すような物言いをしてしまった。

    「……何を企んでらっしゃるんです?」

     其れをどう受け止めたのか僕に向き合うようにしながら眉根を寄せてそんな事を言ってくるセレストに、

    「企んでる訳じゃないぞ? ……セレスト」

     その腕を掴んで強引に引き寄せる。
     幾ら僕だって彼是企んでいる訳では無いんだがな。

    「…っ…!?」

     行き成りの事に体勢を崩し掛けたセレストの肩を捕らえて、そのまま唇を重ねてみる。

    「~~~~~っっ!!」

     かぁぁっと朱に染まっていく様子を見つめて、僕は思わず笑いを零してしまった。
     本当にセレストの反応は素直で可愛い。

    「行き成り何をされるのですかっ!?」

     口元を手で覆いながら軽く険を含んだ瞳で見据えてくるセレストがやっぱり可愛くて。

    「―――僕のものだと確認しただけだが?」

     しれっと、そう返答してやると案の定セレストはがっくりと肩を落として項垂れた。

    「…っ、全くもう…あなたってお方は…」

     それしか言えないらしいセレストが、深く溜息を吐く。
     その様子を眺めながら思わず笑みが浮かんでしまう。

     ―――お前が好きだから……困らせたくなるんだ。

     子供っぽい感情なのかも知れないが、不意にそんな事を思ってしまった事が可笑しい。
     くすくすっと沸き起こる軽い笑い声を聞いて、セレストが怪訝そうな視線を僕に向ける。

    「いや、……実はな?」

     種明かしをするように僕は椅子から立ち上がった。



    「か、か…カナン様っ!? 一体何処からこれを…??」

     一枚の写真を瞳にしてセレストがわたわたと慌てふためいている。
     その写真は先程僕が拾った……写真。

    「いや、書庫から持ってきた本に挟んであったみたいだぞ?」

     入手の経緯を簡潔に話すと、何か思い当たるのかセレストが形の良い眉を顰めた。

    「あの、カナン様。その…その写真ですが私に頂けませんか?」

     思ったとおりの言葉に、

    「駄目だ」

     あっさりと僕は一蹴した。
     僕が持っているアルバムの中の写真にもセレストが写っているものはあるが。
     彼が一人で写っている写真なんて無いのだから。

    「しかもお前が士官学校に入学した頃の写真だろう? 貴重なものだからな」

     写真の中のセレストは士官学校の制服姿で。
     真新しい制服に身を包んだ姿なんて……僕は知らない。

    「……カナン様は覚えていらっしゃらないかも知れませんが、その時…」
    「うん?」
    「私の視線の先にいらっしゃったのは……カナン様なんですよ?」

     紡がれた言葉に、僕は驚いた。

     ―――僕…が?

    「私が士官学校に入学した頃…その、私が居ないからとカナン様が駄々を捏ねられたとかで」
    「なっ…!?」

     思わず発した僕の声に、セレストがふわりと微笑を浮かべる。
     写真の中で浮かべていたのと全く同じ……微笑み。

    「私がそんな表情をしていたのは知りませんでしたが……昔も今も、私にとってあなたは大切な主君ですから」

     ね? カナン様。
     穏やかな表情でそんな言葉を続けるセレストに、柄にも無く体温が上昇するのを自覚する。

    「うー……ずるいぞ、セレスト」

     頬がどうしても熱くなって。

     ―――何だか、無性に悔しい…。

     絶対に埋める事が出来ない年齢の差。
     其れを見せ付けられたような気がした。
     だが……年齢の差以外のものなら縮める事は出来る。

     ―――…いや、縮めてみせる。

    「とにかく、この写真は渡さないからな?」

     今は…このままで良い。
     前にセレストに言ったが、僕だって歳を重ねていくのだから。

    「~~~~…っ、カナン様ぁ…」

     微笑んでいたセレストの表情が、瞬時に困り果てたそれに変わる。
     傍目からその表情の変化を眺めながら、

    「良いだろう?」

     これ以上何も言わせないように、僕はセレストと視線を合わせたまま悠然に笑みを浮かべた。
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    瀬菜悠貴

    MOURNING個人サイトで公開していた作品で2004年作。

    BLゲーム「王子さまLv1シリーズ」で王子×従者(カナン×セレスト)。写真、のお題で書いたものです。カナン視点。
    「うん?」

     調べ物をしようとして書庫から持ってきた本を机に置いた拍子に、ひらりと何かが床に落ちた。

     ―――…? 写真…?

     床に落ちた一枚の写真を拾い上げて僕は眉を顰めた。
     そこに写っている人物。
     それは僕がよく知っている―――彼だった。
     しかし、今と比べて新緑の瞳は心なしに大きく、顔立ちも幼い。
     あどけない表情で微笑んでいるその姿は……まるで天使が微笑んでいるようで。
     何故こんな写真が本に挟んであったのか。
     思う事は沢山あるが、今そんな事を考えてもどうしようもないのも解っている事で。

     ―――確か、アルバムが在った筈だな…。

     ふと思い立って僕は自分が持っているアルバムが収まっている本棚へと足を向けた。



    「……ふむ」

     僕はおやつを運んできたセレストの横顔をじっと見ていた。
     こうしてみると……やはり写真の面影は所々残っている。
     流石に輪郭は大人の男の其れになってはいるが。
     伏せると意外に長い睫毛が表情に影を落として。

    「…? どうかされましたか? カナン様」

     お茶の用意をしていたセレストが僕の視線に気付いたのか、困惑したような表情で問い掛 2184

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