カン
月咲ひたき
TRAINING原神 鍾離←甘雨無題 孤月が海面で揺れている。静かな夜。甘雨は璃月港の外れでひとり時を紡いでいた。
こんな夜に思うのは、やはり遠い過去。彼女は少女の外見をしているが、三千年以上もの長い時を生きてきた。岩王帝君――岩神モラクスの召喚に応え、彼や仙人たちと璃月の為に戦い続けた。その後も璃月の為に生きてきた。璃月七星の秘書として、ずっと、ずっと。
七つの元素が絡み合うテイワット。人は神の庇護下で慎ましやかに生きてきたが、今は――少し違ってきているように思う。人が人として生きる為に神の存在はどんな国であれ必須だったけれど、今はどうだろう、歴史は人が紡ぐと多くの者が云うかもしれない。それでも甘雨は神の為――岩王帝君との契約を貫き通す。それは絶対的で揺るがぬもの。
430こんな夜に思うのは、やはり遠い過去。彼女は少女の外見をしているが、三千年以上もの長い時を生きてきた。岩王帝君――岩神モラクスの召喚に応え、彼や仙人たちと璃月の為に戦い続けた。その後も璃月の為に生きてきた。璃月七星の秘書として、ずっと、ずっと。
七つの元素が絡み合うテイワット。人は神の庇護下で慎ましやかに生きてきたが、今は――少し違ってきているように思う。人が人として生きる為に神の存在はどんな国であれ必須だったけれど、今はどうだろう、歴史は人が紡ぐと多くの者が云うかもしれない。それでも甘雨は神の為――岩王帝君との契約を貫き通す。それは絶対的で揺るがぬもの。
月咲ひたき
TRAINING原神 鍾離×甘雨(鍾甘)無題 彼女は岩王帝君の為に生き、そして死ぬのだろうと考えている。彼女にとってそれ程「岩王帝君」という存在は大きかった。彼との契約があったからこそ彼女は今の自分がいると思っており、それは紛れもない事実として在る。
だから彼女は――甘雨は「帝君」の「死」を受け止めきれない。あの日、儀式の途中で何者かにより殺害されたという岩王帝君。甘雨はその日から心が激しく痛むのを感じるようになった。
岩王帝君――岩神モラクスは甘雨の全てだ。璃月七星の秘書としての仕事に就いていることも、何もかもが岩神に繋がっている。故に、甘雨は悲しみに暮れた。岩王帝君を殺めた者を許せないという怒りより、そちらの感情が勝り、彼女の心は滂沱の涙を落としている。
481だから彼女は――甘雨は「帝君」の「死」を受け止めきれない。あの日、儀式の途中で何者かにより殺害されたという岩王帝君。甘雨はその日から心が激しく痛むのを感じるようになった。
岩王帝君――岩神モラクスは甘雨の全てだ。璃月七星の秘書としての仕事に就いていることも、何もかもが岩神に繋がっている。故に、甘雨は悲しみに暮れた。岩王帝君を殺めた者を許せないという怒りより、そちらの感情が勝り、彼女の心は滂沱の涙を落としている。
月咲ひたき
TRAINING原神 鍾離×甘雨(鍾甘)雨のなかで 璃月の街に雨の匂いが漂ってくる。空は確かに分厚い雲に覆われつつあった。鈍色のそれは、いずれ大地に雫を落としていくのだろう。傘を持って来れば良かった。鍾離は今になって小さな後悔を抱く。
ややあって、無情にも雨が降ってきた。鍾離は仕方なく雨宿りをする為に大木の下に移動する。雨は多くの恵みを与えるものではあるが、今はタイミングが悪すぎた。
「……」
雨の中で思い起こすのは、水色の髪をした少女の姿。この恵みの雨と――優しく降る慈雨と同じ意味を持つ名をした彼女は、とても穏やかに微笑う。時折酷く寂しそうに遠くを見つめることのある彼女は、鍾離からすると特別な少女だった。
彼女は――甘雨はどうしているのだろうか。鍾離は考える。彼女とはとても「長い付き合い」になる。少し前に雨に降られてしまった時、甘雨は自らの浅葱色の傘を傾けてくれた。その時も鍾離は傘を持っていなかった。
507ややあって、無情にも雨が降ってきた。鍾離は仕方なく雨宿りをする為に大木の下に移動する。雨は多くの恵みを与えるものではあるが、今はタイミングが悪すぎた。
「……」
雨の中で思い起こすのは、水色の髪をした少女の姿。この恵みの雨と――優しく降る慈雨と同じ意味を持つ名をした彼女は、とても穏やかに微笑う。時折酷く寂しそうに遠くを見つめることのある彼女は、鍾離からすると特別な少女だった。
彼女は――甘雨はどうしているのだろうか。鍾離は考える。彼女とはとても「長い付き合い」になる。少し前に雨に降られてしまった時、甘雨は自らの浅葱色の傘を傾けてくれた。その時も鍾離は傘を持っていなかった。