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    クラゲ

    鶴田樹

    DONEくらげさんからリクエストいただきました。お題は【喫煙】です3月末。

    それは決算準備と期末の販売額の積み上げで社内のどこもかしこもが修羅場と化す魔のシーズンだ。

    普段はホワイトな弊社だが、連日深夜まで続く残業に社員の顔からは明らかな疲労の色が見て取れ、そんな中で些細な事件が頻発していた。

    「あ、桑名さん!さっきの仕様書…ひぇっ…!」

    背後に桑名の気配を感じて検印済みの仕様書を返そうとした女子社員が悲鳴を上げる。

    本来ならそんなに驚くことはないのだろうが、振り向いた先にいたのが桑名ではなく営業部エースで『社内の初恋泥棒』という不可思議な通り名で持て囃される豊前だったのだから彼女が驚いたのも無理はなかった。

    「あっ…ごめんなさい…桑名さんかと思って…間違いました」

    恐縮しきりの女子社員に、「いーよ、桑名に持っていけばいいんだな」と好感度MAXなキラキラの笑顔で答え、豊前は軽快な足取りで総務部へ向かう。

    ところ変わって社員食堂。

    「豊前さんもコーヒーですか?ふえっ…!」

    豊前の気配を感じ、振り向いた女子社員が素っ頓狂な声を上げる。彼女の後ろに並んでいたのはオリーブ色の髪の下、ごくたまに見える甘いマスクで女子社員から『毎日会える王子 1805