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    サビ

    n_lazurite

    DONEご都合時空な裂浪小話。
    雪遊びをする、本当は「さびしい」のかもしれなかった二人の話。
    雪兎を作る話 一晩降り続いた雪は、翌日には中庭を見事な銀世界に変えていた。
     これに目を輝かせ、身を切るような冷たさもものともせずに飛び出していったのはもちろん裂魔弦で。言霊を繰る珍しい琵琶から、自在に人型へ変化できるいっそう摩訶不思議な琵琶へと進化を果たした彼は、自由に動き回れる手足を得たことで、様々なものへの好奇心を顕にするようになった。
     食べ物を目にすれば、器用に箸を操って口に含み、咀嚼することの新鮮さを面白いと笑い。ある時ふつりと糸が切れたように眠りに落ちたかと思えば、電源を入れた絡繰のようにぱちりと目を覚まして、「俺今寝てた?!」と一頻り驚いてはやはり楽しそうに笑い声を上げる。
     自由になる身体を得たことで出来ることが増えた分、見聞きし触れるもの全てにこれまでなかった新鮮さを垣間見ているのだろう。琵琶であった頃からわざとらしく子供じみた言動を取ることがあったが、人に似た形を得たことでそれが実を得たような気がするのは、巫謠の錯覚ではないだろう。早い話が、琵琶であった頃より子供っぽい行動が増えた、と思う。
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