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    ナア

    zeppei27

    DONERONIN主福、前作の何となく続きです。無茶な人助けばかりする隠し刀の姿を見たらば、普通は心配になってしまうのでは?理性的に面倒を避けようとする諭吉の理解を超えた行動なんだろうなあと思うと、ちょっとだけ申し訳なくなります。冷静な人がメチャクチャになってしまう姿は良い。
    前作>
    https://poipiku.com/271957/10302464.html
    名付けたならば まだ熱を持っているような気がする。鏡台の前で髪を整えながら、福沢諭吉は努めて上の空でいようと懸命な努力を続けていた。普段であれば真正面から鏡の中の自分に向き合うところが、今日はどうにも難しい。否、この数日ほどはずっと同じ煩悶を繰り返しては鎮めていた。毎日見てそらで思い出せるような自分の顔など、今更何を感じよう。形ばかりの気合を入れてちら、と鏡を見てう、と思わず呻き声が出た。
    「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
    どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
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    knm

    PROGRESS6/30開催さめししオンリー【醒めし視界に愛は降る】にて発行予定の新刊サンプルです。
    絶賛原稿中。
    村雨視点の5章構成に加えて、原稿が間に合えば獅子神視点の後日談全6章予定。

    局部・自慰描写があるのでR-18。
    村雨視点は挿入なし、獅子神視点で本番が書けたらいいなあ。
    【サンプル】下心は必然を呼ぶ1/発端、あるいは天啓

    「呪ってやる!」

     村雨礼二はオカルトを信じない。
     幽霊や超能力はもちろん、『呪い』などという非科学的事象を信じては医者なんぞやっていられない。物事には必ず原因がある。無から生まれるものなどありはしないのだ。
     そんな村雨に対し、馬鹿馬鹿しくも呪ってやるなどと喚いた男は地面に這い蹲っている。そのままスーツの男達に取り押さえられ、引きずられ、待機していた車に雑に詰め込まれる。
     村雨は早々に興味をなくし背を向けていたため直接目にはしていないが、男のくぐもった悲鳴とバタンとドアが閉まる音は聞こえていたので十割合っているだろう。
     男は村雨がオークションで買った人間だった。複数の婦女に対するつきまとい行為と暴行未遂、出所後にギャンブルに手を出すが運も実力もなくあっけなく倉庫行きとなった、ありがちな過去を持つ男である。
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