タイ○ニパロ「また派手にやってくれたよね」
「そうだろうか」
カチャ、と静かな音と共に外されたフルフェイスヘルメット。内に籠もる熱で夕陽色の髪はしんなりしていて、少しだけ上気して血色の良い頬は、外気の涼しさに少し緩んだ。深呼吸をして、気持ち良さそうに目が細まる。
ここだけ見たら、一試合終えたばかりのアスリートのようだ。ひたすらに爽やか。滅多にメディアに向けて語りかけることなく、必要以上の露出をすることもなく。それでも黄色い歓声が鳴り止むことはない。理鶯は、唯一の海軍所属にして絶対的な実力と人気を兼ね備えたヒーローだ。
人類の中に突如、個性豊かな特殊超能力者が出現して早数十年。我々はその能力をNEXT、と称するようになり、NEXTを保有する人々は非能力者からの差別の眼差しに耐えながら、人類に大きく貢献してきた。ここ十年ばかりの飛躍的な科学の進歩は、電子世界を自在に操るNEXT能力者達の協力によるものだし、最たるものは事故現場でのレスキューだ。通常ならばヘリコプターを要請しなければとてもじゃないが助けられないような高所現場でも、飛行能力を有する者なら軽くひとっ飛び。重機をいれなければどうしようもない、でも重機を搬入するための道すら確保するのに数日を要しそうな瓦礫まみれの現場でも、怪力だったりものを浮遊させるNEXTを保有している者であれば、造作なく立ち入ることができる。こうして、NEXTを保持し、その力を人命救助に用いる者たちはいつしか、“ヒーロー”と呼ばれるようになった。当初彼らはボランティアであったが、名だたる企業がいち早く彼らの支援者として名乗りを上げ、スポンサー名入りの身を守る装甲が作られたり、事件・事故現場の情報をいち早く提供するための連絡網が作られたり。こうして民間主導により、ヒーローはどんどんその名を広めていった。