ユーリ
Satsuki
DOODLEユリアシュ。アリルでユーリスにぶん殴られて先生の陣営に来たアッシュくんがアビスで飼われている短い話です。僕は悪い子になりたい「おら起きろ、アッシュ」
コツン、と頭を足先で小突かれて、アッシュはのろのろと目を開いた。
「起きてるよ、ユーリス……ッ」
「そんならさっさと支度しとけよ」
口答えが気に障ったのか、ユーリスは靴の裏でアッシュの頭を軽く踏む。軽く、といっても、アッシュは起こしかけた体をもう一度床に敷かれた薄い毛布に縫い付けられてしまった。やめてよ、と言いたかった口は閉じ、今度こそ体を起こす。まだ回復しきっていない腕が痺れたが、さっさと寝床の始末をする。
「今日は俺らが朝飯の当番だ、行くぜ」
「……」
ユーリスはアッシュの首に付けられた首輪―――かつて灰狼学級の制服に付属していたものだ―――に結んだ縄を掴むと、まるで罪人を引っ立てていく看守か処刑人のように歩き出す。実際、その通りなのだ。一度はローベ家に仕える身となり、ベレト率いる同盟軍に敵対したアッシュは、先の戦場で何人かに弓を射かけ負傷させている。無論、自身の信念に従って行動した結果であり、後悔はない。……はず、だった。
2385コツン、と頭を足先で小突かれて、アッシュはのろのろと目を開いた。
「起きてるよ、ユーリス……ッ」
「そんならさっさと支度しとけよ」
口答えが気に障ったのか、ユーリスは靴の裏でアッシュの頭を軽く踏む。軽く、といっても、アッシュは起こしかけた体をもう一度床に敷かれた薄い毛布に縫い付けられてしまった。やめてよ、と言いたかった口は閉じ、今度こそ体を起こす。まだ回復しきっていない腕が痺れたが、さっさと寝床の始末をする。
「今日は俺らが朝飯の当番だ、行くぜ」
「……」
ユーリスはアッシュの首に付けられた首輪―――かつて灰狼学級の制服に付属していたものだ―――に結んだ縄を掴むと、まるで罪人を引っ立てていく看守か処刑人のように歩き出す。実際、その通りなのだ。一度はローベ家に仕える身となり、ベレト率いる同盟軍に敵対したアッシュは、先の戦場で何人かに弓を射かけ負傷させている。無論、自身の信念に従って行動した結果であり、後悔はない。……はず、だった。
Satsuki
MAIKING〇レトユリ。ユーリスに歌を習う先生。このあと支援Cする。210510人食い燕は歌わない2「あら~、今日の先生、とっても機嫌がよさそうね。何かいい事でもあったの?」
メルセデスの声に、ベレトは土をいじっていた手を止めて振り返った。どうして、と言いたげな視線にメルセデスの方が目を瞬かせる。
「だって、ずっと鼻歌をうたっているんだもの~」
「鼻歌……」
そう言われればそうだったかもしれない。ベレトは少し気恥ずかしくなって、コホンと咳ばらいを一つ。誤魔化した。如雨露を傾けて花に水をやりながら、メルセデスはにこにこと続ける。
「今の、賛歌のひとつよね。私も好きな歌よ。でも、ちょっとだけ意外ね。……先生は、歌がそんなに好きじゃないのかと思っていたわ」
「そう見えるかな」
「見えるというか……気を悪くしないでほしいのだけれど、讃歌会で一緒に歌った時、全然声が聴こえなかったから……」
4037メルセデスの声に、ベレトは土をいじっていた手を止めて振り返った。どうして、と言いたげな視線にメルセデスの方が目を瞬かせる。
「だって、ずっと鼻歌をうたっているんだもの~」
「鼻歌……」
そう言われればそうだったかもしれない。ベレトは少し気恥ずかしくなって、コホンと咳ばらいを一つ。誤魔化した。如雨露を傾けて花に水をやりながら、メルセデスはにこにこと続ける。
「今の、賛歌のひとつよね。私も好きな歌よ。でも、ちょっとだけ意外ね。……先生は、歌がそんなに好きじゃないのかと思っていたわ」
「そう見えるかな」
「見えるというか……気を悪くしないでほしいのだけれど、讃歌会で一緒に歌った時、全然声が聴こえなかったから……」
からこ
DOODLE「ユーリ、俺がそのバッグ持つよ。小柄だから重い荷物ずっと持ってるのはキツいだろ」「また子ども扱いして。非力なおじいさまには持てませんよ」
「誰がおじいさまだ」
「ふん、お互い様だろ」
買い物帰り。
正面から見ると二人とも笑ってます。
Satsuki
MAIKING〇レトユリ。スカウトされたばかりのユーリスと歌を知らないベレト先生。多分続く。210505人喰い燕は歌わない大聖堂の空気が好きだった。士官学校生として初めてガルグ=マクに足を踏み入れた時、空にも届きそうな天井を見上げて、ここが女神様に一番近い場所なのかと感動したものだ。美しいステンドグラスから差し込む光は神秘的で、ああ、家族にも見せてやりてえな、と思った。祈ることはどこででもできる。女神様は全ての祈りに耳を傾けてくださっている。母さんはそう言っていたけれど、大聖堂での祈りは、やはり特別に思えた。
(俺らみたいな悪党の命でも、女神様は……)
ユーリスは祈りを終えると、周囲の視線を振り払うように堂々と胸を張り、灰狼の制服を誇るようにして椅子から立ち上がった。聖堂内にいる司祭の中には、ユーリスの罪状を知るものが少なくない。
3581(俺らみたいな悪党の命でも、女神様は……)
ユーリスは祈りを終えると、周囲の視線を振り払うように堂々と胸を張り、灰狼の制服を誇るようにして椅子から立ち上がった。聖堂内にいる司祭の中には、ユーリスの罪状を知るものが少なくない。
からこ
DONE「オレが先に死んだらボリスは耐えられないだろう、夢でよかったな」+++
夢、という単語が喉を通ってくれないのはなんでだろう。あの細くしろい首を包んだ感触と愛おしさを宿した笑顔が忘れられない。
顔を離すと、ユーリはいつも通りの凛とした涼しい表情で。俺に向かってユーリがあんなやさしく笑うはずないよなって安心したから。やっと、それをするりと飲み込めたんだ。
Satsuki
MAIKING〇非童貞のベレト先生がユーリスと交接できない話の続き。支援S後、蒼ルートっぽい。まだ続きます。きみだけだよ2はあ、と大きな溜息が大司教の執務室に虚しく響く。ベレトが羽ペンを置くと、セテスは怒ったような仕草で出来上がった書類を机上で揃える。実際、怒っているのだ。
「何か言うことはあるかね」
「……いや、何もない」
はああ、と今度はセテスがとびきり大きな溜息を吐く。それでももう何も言わずに部屋を出て行ってくれたのはありがたい。午前中いっぱい執務をサボッたせいで、昼食の席で彼に捕まった時はガミガミ叱られながら食事する羽目になったのだ。
ベレトは朝から昼まで、このガルク=マク大修道院を走り回った。しかし、街にも、庭園にも、士官学校にも、おまけにアビスにもユーリスの姿はなかった。狼の牙たちはベレトの問いに首を横に振り、商人たちも首を傾げた。大聖堂にも彼の姿はなく、司祭たちはベレトの姿を見て「今日はどうされたのです?」と訝し気に声をかけてきた。適当にお茶を濁してその場を後にしたが、やはり『大司教』という立場は少々息苦しい。
6090「何か言うことはあるかね」
「……いや、何もない」
はああ、と今度はセテスがとびきり大きな溜息を吐く。それでももう何も言わずに部屋を出て行ってくれたのはありがたい。午前中いっぱい執務をサボッたせいで、昼食の席で彼に捕まった時はガミガミ叱られながら食事する羽目になったのだ。
ベレトは朝から昼まで、このガルク=マク大修道院を走り回った。しかし、街にも、庭園にも、士官学校にも、おまけにアビスにもユーリスの姿はなかった。狼の牙たちはベレトの問いに首を横に振り、商人たちも首を傾げた。大聖堂にも彼の姿はなく、司祭たちはベレトの姿を見て「今日はどうされたのです?」と訝し気に声をかけてきた。適当にお茶を濁してその場を後にしたが、やはり『大司教』という立場は少々息苦しい。