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    リップ

    あまや

    DONESSS/凪茨
    茨がリップクリームを変えた話
    おいしくなあれ閣下の肌に触れるもの、血肉になるもの、身につけるあらゆるものは彼を最も引き立て、その魅力を引き出し、飾るに相応しい最上のものでなくてはならないと思っている。化粧水ひとつとってもそうで、その辺のドラッグストアで売っている数百円のものなんて絶対につけさせてはいけない。メーカー、成分、効能、あらゆるチェックを行って選んだ一品を閣下には提供している。感覚がまだ幼いのか超高級歯磨き粉を突き返されて「……おいしくない」と悲しげな顔で訴えられた時は流石に焦ったが、ネットを駆使してなんとか閣下の意向に沿うものを入手することができた。頼むから閣下の舌が大人になるまで絶対に廃盤になんてならないで欲しい。
    対照的に自分の身につけるものにはあまりこだわりがなかった。流石に経営者として責任ある立場にあるので、公の場ではTPOに相応しいスーツを着たり、それなりに根の張る小物を見繕ったりはしているが、だからといってそこまでハイブランド志向なわけでもない。学生アイドルである以上、あまり年齢不相応に高級なものを身につけているのは逆に印象が悪くなる。もともと上流階級の上二人ならともかく、自分とジュンはどちらかというと親しみやすさがウリな面もあり、手を伸ばせば届きそうな範囲を意識しているということもあった。実際SNSでも高級ランチよりファストフードを囲んでいる自分とジュンの写真の方がウケが良かったし、そういう庶民派な中に突然高級ブランドのアンバサダー決定、なんて投稿をすると普段とのギャップでさらに話題を呼んだりした。
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