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    丑年

    hiz_tb

    DOODLE2021年かどかじ書き初め!
    丑年といえば、なお話し。些か不穏
    「今年って丑年なんですね」

     年が明けた日の昼間、何をするでもなくテレビを観ていた梶がポツリと呟いた。
     その声に反応して、門倉もテレビの方へ顔を向ける。

    「あぁ……そうみたいやねぇ」

     梶が観ているのはバラエティ番組の正月特番なのだろう。テレビ画面には、最近売れ出したばかりの芸人が今年の干支である牛の着ぐるみを着ておどけている姿が映っていた。
     干支などさして気にした事も無い門倉は適当に返事をしたが、梶はとてもバラエティ番組を観ているとは思えない神妙な表情でテレビ画面を見つめている。
     しかしその目に芸人の姿は写っておらず、門倉の声も届いてはいない。
     今の梶が見ているのは、彼の脳裏に焼き付いて離れない……青銅製の雄牛の姿だった。
     どれだけ経とうが忘れられない、忘れてはいけない記憶。自らが焼かれた熱、自らで火を着けた熱。
     鳴けなくなった雄牛の中から引きずり出された、もう動かない筈の巨体が恨めしそうに此方を見る。
     梶を見据えた巨体はゆっくりと口を開き、そしてーー

    「梶?」
    「……ッ!」

     そこから発せられるであろう呪詛を聞く前に、梶の意識は門倉の声によって現実へ引き戻さ 1290