Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    中国

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAINING8/13ワンライ
    お題【怪談・山】
    山で不思議なおじいさんを見た狡噛さんが中国の故事を持ち出して色々喋るお話です。
    月夜の壺 任務を終え、月が大きな夜中に、木々の連なる山の中をバンで移動していた時の話だ。
     花城は珍しくアイマスクをして眠り入り、須郷は勤勉にもデバイスで報告書を書いていた。俺は愛用の銃の手入れをしていて、狡噛は古びた本を小さなライトで照らしながらゆったりと読んでいた。運転手はこちらには話しかけて来ず、俺たちの間に会話はなかった。ただ少しおかしいことに、狡噛はどういうわけか、ふとした瞬間からバンの窓の外を見つめて動かなくなってしまった。本のページをめくる手も止まり、彼は夜中の山の景色に釘付けになっているようだった。
    「どうしたんだ?」
     俺は不思議に思って、銃の手入れを中断し、恋人に話しかけた。すると彼は狸にでも化かされたかのように「壺を持った老人を見たんだ」と言い、何かを考えるそぶりを見せた。こんな夜中に、こんな山の中を壺を抱えてすごすごと歩く老人か。案外その壺の中には骨が入っていたりして、と、俺は安い怪談のような空想をして、きっとそれとは全く違う想像をしているだろう狡噛を見た。
    2357