受肉の話　遠征に行く時の訓練で腹の中に蟲を入れるのに口内から摂取だったのを悠仁はふと思い出した。
　あれは味が無かったし宿儺の指と違って割と楽勝だったな、釘崎は不味い不味いと叫んでたけど...と少し前のことを思い出す。
　
　脹相から受け取った九相図の亡骸を取り口に放り込むと口のなかに広がるのは屍蝋とはまた違ったドブのような味で、喉を通る前に体がそれを拒絶して押し戻そうとした。
「う...ぐ、」
「悠仁、水を飲むか？」
　その声にフルフルと首を振って、両手で口を抑え込む。
　コイツから貰った大事な命だ、そんな無理やり取り込むような真似はしたくない、そう思うが中々中に入っていかない。
「――ぅぅ、」
　涙目になりぎゅっと目を瞑る悠仁に仕方がないな、と優しい顔でひとつ息をついてから脹相は手に持ったペットボトルの水を自ら口に含み、悠仁の顔に両手を添えた。

少しでも意識してもらいたいので　新しい服を着る時は、いつもドキドキする。楽しみという意味のドキドキではなくて、怖い時のドキドキだ。
　前はそんなことなかった。似合うかわからない怖さはあったけれど、それでも楽しみの方が大きかった。
　私に似合うだろうと思って贈られたお洋服を初めて着る時は、本当に怖い。
「どうかな？」
　でも今日のお洋服はくじで当たったお洋服だからそういう点でとても気楽に着られる。似合うかどうかのドキドキはあるけれど、自分で選んだわけじゃないし、貰ったわけでもないから、彼にガッカリされることはないからね。
「うん、似合うよ。可愛い」
　誰よりも一番に新しいお洋服を見せた相手に無事に似合うと言って貰えたから大満足だ。嬉しい。良かった。特に好きな色に染めたりしてないけれど、このままでいいかな。だって可愛いって言って貰えたわけだし。たまにはこんな色もいいよね。