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    冬の風物詩

    han_bun_dead

    DOODLEイギリスの打ち上げ花火は秋冬の風物詩と聞いて浮かんだ話です。コウ様14歳時空なので、テンペスト前として解釈を歪めています。テンペスト後、お盆にコウ様の元にレイジさんが現れてくれたら一緒に花火を見てほしいなあ。敦豪と花火に行く続編もいつか書きたい。
    特等席で待っていて福岡支部エントランスの一角を飾る地域情報掲示板。今日貼りだされたばかりの一枚のチラシを視界に入れたコウは思わず足を止めた。
    「花火大会……」
    『第十八回納涼花火大会』の文字が大きく踊るそのチラシに記載された日時は約2週間後、七月末の土曜日だ。
    「連れて行ってやろうか?」
    「っ、敦豪」
    「日本の夏は初めてだろ」
    突然声をかけられ驚くコウの隣に立った敦豪が、同じようにチラシを見つめる。
    「別に行きたいわけじゃない」
    「ならどうして見てたんだよ」
    「こっちでは夏に花火が上がるのか、と思って」
    「花火といや夏だろ。イギリスは違うのか?」
    「イギリスでは、花火が打ち上がるのはだいたい秋か冬だった」
    言って、コウは口を閉ざした。


    イギリスでは十一月に各地で打ち上げ花火を鑑賞できる。しかしコウの生まれ育った村は、花火の光どころか音さえ届かなかった。
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