分岐点は遥か遠くに　この日は珍しく、雪の降り積もる日だった。外を歩く人影もまばらな夕時に突然、大きな音が鳴り響く。夢うつつで窓の外を眺める男は、はっとしてそばにおいた携帯電話を手に取る。画面を覗くとそこには懐かしい名があった。今でこそ交流はないが、かつての親しい友人の名だ。ほんの少し浮わつく心を抑えながら、男は応答する。電話先から聞こえる声は記憶の中よりずっと大人びていて、友人かと疑う程、違って聞こえる。
「もしもし。久しぶりだな、隼人。元気だったか？」
　そんな電話の常套句にさえ、反応が遅れる始末だ。何とか絞り出した声が変に聞こえていないかだけが不安だった。
「うん、元気してるよ？　そっちこそ忙しくてまともじゃないんじゃないの」

教え子の誕生日.

『 ( ……！！！ もうちょいやん！？！？！ ) 』

6月末の放課後、 普通科の職員室で 自分のクラスの生徒である心操人使に関する書類を整理していた中村は、心操の誕生日が7/1である事を知った。


中村は仕事が終わり 相澤と同棲しているアパートへ帰り、夕飯を食べながらその事を相澤に言うと「特別扱いするなよ」と言われてしまった。
「ヒーロー科へ転入する為に頑張ってんだからちょっとぐらい…」と 眉尻を下げ しゅんとしてしまう。相澤は その顔にめっぽう弱い。

「…その、なんだ、…スポーツ飲料ぐらいなら、良いんじゃないか…？」
言葉を詰まらせつつ頭を掻きながら答える。
「！！！なるほど！ 特訓中に水分補給出来るし、貰っても困らない！！わかった！！」