Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    よあ👁‍🗨

    DONE久々に青空文庫を読み回り、気に入ったものを参考に壊毒の短編を書きました。


    下記の作品を参考にさせて頂いております。

    まれびと
    室生犀星 「星より来れる者 『虫』」

    陽炎の手引き
    梶井基次郎 「Kの昇天ーー或はKの溺死」

    欺けども愛
    芥川龍之介 「悪魔」

    報恩は果たされず
    室生犀星 「蛾」
    嫁入綺譚まれびと


     星月夜、壊のところへ迷い込んできた一匹の生き物はただ一言毒蛾と名乗りそのまま家の隅に居座った。毒蛾は膨らんだ外套を脱ぐと丁寧に畳み、自分の隣にそっと置いた。その背には大きく分厚い一対の白い翅が生えていた。
     毒蛾について何ひとつ明らかにならないまま昼と夜が繰り返された。
    人のような、翅虫のような、朝靄のように物静かな生き物は何をするでもなく、ひがな日と月の光を浴びて過ごしていた。壊は何も問い質そうとはしなかった。いつしかこの謎めいた生き物を心から好ましく思うようになっていたのだ。
    ふと毒蛾の背中に目をやれば柔げな翅が呼吸に合わせてなだらかに揺れ、時折ふるりと身震いしている。この翅を毟ってしまえば何処にも飛んで行けないのではないか。こうした昏い誘惑はしばしば壊の胸に飛来したが、その度自らの理性によって撃ち落とされていた。翅もまた壊の愛する毒蛾の一部であった。
    7845

    fuji_u2dch

    MOURNING亡国の死神のおはなし。或いは何処かの国にいる情報を一手に担った、爪を出さない鷹のおはなし。

    完成させる未来が一切見えないので供養しておきます。古参ふぉろわが覚えているか分かりませんが一応説明すると「一族シリーズ」です。なお文章ではないです。文章ではない。これは(書きたいところしか書いていない)箇条書きと言うんだ
    亡霊の墓を暴く夢の中だ。
    そう、これは夢の中だ。或いは過去の懐かしき記憶の回想。
    自分も彼も、今よりほんの少しだけ背丈が低くて、今よりもっと若いときなのだろう。
    対面する彼の顔は見えない。長い前髪が目を覆い隠してしまっているのだ。深い深い海の底のような瞳を。
    彼が口を開く。
    常の軽々しい声とは異なり、それは重く、決意に満ちた声だった。
    「これだけは、譲れへん。例えグルちゃんの頼みでも、僕は絶対にこれだけは曲げん」
    思えば、彼が明確な意思表示をするのはとても珍しいものだった。確固たる意思なんて持ち合わせていないように見えて、その実、磐石とした決意とプライドを持ち合わせている彼は、それを他者から隠す。何枚ものヴェールを重ね、煙に巻いて、その中身を決してわからせない。性分なのか、誰かからの教えなのか。まぁそんなことはどうでもいいのだ。大切なのは、そんな彼が自分に言い放った内容。
    2350

    tofukinoshita

    MOURNING1~2年ほど前に書こうとして挫折していた文或二次小説の供養です……
    ししょとーのつもりです。オリジナル司書注意!

    作風は全然違うのですが、とあるお方のハイクオリティ司書藤小説を読んで、ししょとーにはまってしまったのです……。マイナーCPなので自給自足の日々です。
    午睡「あれ、何処に行っちゃったんだろう……?」
     談話室で目覚めた藤村は、ソファーの空いた部分に無造作に置いていたはずのマントの不在に気づき、辺りをきょろきょろと伺っていた。
     部屋の角にある蓄音機からは『亡き王女のためのパヴァーヌ』が流れていた。誰か洒落た趣味の文豪がセットしていったのであろう、心地よいクラシックのレコード。ここ最近頻繁に頼まれる助手業務の疲れとこの音楽とが合わさった結果、不覚にも居眠りをしてしまったようだ。
     図書館の文豪の中でも藤村と親しくかつ情報通な独歩に尋ねると、繊細な模様の藤色の裏地が美しい茶色の布を司書が抱えて歩いている姿の目撃情報があったとのことだった。

     コンコン、とドアをノックしたが反応がなかったので、少し躊躇った後、ドアを開ける。年若くして飛び級で大学を卒業しアルケミストになった特務司書は、実験に集中しすぎると周りが見えなくなるきらいがあった。勿論、ノックの音を聞き逃すことも。
    1674