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    斜め

    StarlightSzk

    MEMO晶蛍/ご機嫌斜めな蛍くんを見ている晶くん(2021.04.08)俺は、彼に口では勝てない。
    何を言おうがひらりと身を翻すかの如く鮮やかに反論を寄越す。すべては自分の意に沿う展開になるよう裏で手を回し、弁を重ねる。それを純粋に凄いと思っているのは本当のことだったけれど、ときどきそれが悪い方向に働くことも知っていた。
    「晶? 何もしないならこの部屋から出ていってほしいんだけど」
    本を読む横顔が明らかに苛ついている。俺がなにか言ったわけでもないのにこうなっているのは、どうしたってこの直前にいた場所が影響していた。
    剥き出しの欲望が渦巻くあの箱は、普段は穏やかな彼の口数をぐんと減らした。
    反論する気も起きないようなのだ。もう。
    だから神経だけを擦り減らしてこの寮に帰ってきて、寝るかと思えば読書をして精神の安寧をはかる。このパターンはもう読めていた。何を言っても彼は聞かないのだろう。

    口では勝てない。
    だからせめて、その横顔が穏やかなものになるまでは傍にいさせてくれないか。

    「……晶?」
    怪訝な顔がこちらを向いたところでさっそく傍にいるだけでは済まない行動に出てしまったけれど、触れた唇のかさつきからナイトティーという名案を思いついたので、それでよしとして 504