眉見鋭心
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DONE眉見鋭心の勘違いです。物悲しい。100本チャレンジその41(2023-02-26)
おいてかないで 勘違いをしていた。
どうしようもないほどロマンチックで、笑えるほどに愚かな間違いを。
「それじゃあ鋭心、お留守番お願いね」
お手伝いさんにも俺を頼むと言ってどこかに出かける母とそのあとを歩く父。そうやって物心ついたときから両親が揃って出かける日があった。それが毎年同じ日だということに気がついたのは、小学校で画数の多い漢字を習い始めたあたりからだ。
いったい何の日なんだろう。カレンダーを見ても何も書いていない。平日か、休日か、祝日か、雨か、晴れか。そのどれにも規則性はなく、ただ同じ日に両親は揃って出かける。あんなに忙しい、めったに休みが揃わない両親が、だ。
ふたりしてどこに行くのかと、珍しく食い下がって問い詰めた時があった。それは興味と呼ぶにはあまりにも幼い、たんなる子供の癇癪だ。両親が一緒に休む日など、俺の誕生日を含めて年に数日しかない。俺はただ、両親と一緒にいたかった。
1365どうしようもないほどロマンチックで、笑えるほどに愚かな間違いを。
「それじゃあ鋭心、お留守番お願いね」
お手伝いさんにも俺を頼むと言ってどこかに出かける母とそのあとを歩く父。そうやって物心ついたときから両親が揃って出かける日があった。それが毎年同じ日だということに気がついたのは、小学校で画数の多い漢字を習い始めたあたりからだ。
いったい何の日なんだろう。カレンダーを見ても何も書いていない。平日か、休日か、祝日か、雨か、晴れか。そのどれにも規則性はなく、ただ同じ日に両親は揃って出かける。あんなに忙しい、めったに休みが揃わない両親が、だ。
ふたりしてどこに行くのかと、珍しく食い下がって問い詰めた時があった。それは興味と呼ぶにはあまりにも幼い、たんなる子供の癇癪だ。両親が一緒に休む日など、俺の誕生日を含めて年に数日しかない。俺はただ、両親と一緒にいたかった。
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DONE眉見鋭心とモブの過去話。全部が酷い捏造です。暗いし、書いてて悲しかったです。(2023-02-19)
ただこのモブは殴った相手にくっついてた下っ端で、実際は殴ってない(その場にいた素行の悪い人間だったので当事者になった)といいなぁと思ってます。
繭の中 夢を見た。悪夢と言って差し支えないだろう。もう幾度となく見ている夢なので、いつもの夢と言っていい。
内容はシンプルで、意味の聞き取れない罵詈雑言を浴びせられるというものだった。「眉見」も「鋭心」も「会長」も、一言も自分を表す言葉など読み取れないくせに悪意は俺に向けられているとわかる。日本語なのかも怪しい怒声はひどいノイズに覆われているが、おそらくは同世代の男のものだ。ただ目の前で俺に敵意を剥き出しにしている男の顔は黒のマジックで塗りつぶしたような影がこびりついていて表情がわからない。いや、誰のものかもわからなかった。
夢というのは眠りが浅いときに見ると聞いている。大抵は真夜中に、酷いときには真夜中と明け方に目が覚めた。台所に行って水を一杯飲むまで生きた心地がせず、再度眠るのには労力がいる。俺はあっという間に寝不足になった。
3046内容はシンプルで、意味の聞き取れない罵詈雑言を浴びせられるというものだった。「眉見」も「鋭心」も「会長」も、一言も自分を表す言葉など読み取れないくせに悪意は俺に向けられているとわかる。日本語なのかも怪しい怒声はひどいノイズに覆われているが、おそらくは同世代の男のものだ。ただ目の前で俺に敵意を剥き出しにしている男の顔は黒のマジックで塗りつぶしたような影がこびりついていて表情がわからない。いや、誰のものかもわからなかった。
夢というのは眠りが浅いときに見ると聞いている。大抵は真夜中に、酷いときには真夜中と明け方に目が覚めた。台所に行って水を一杯飲むまで生きた心地がせず、再度眠るのには労力がいる。俺はあっという間に寝不足になった。
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DONE眉見鋭心が誰かの人生をトレースしているという妄言の元に書きました。(22/8/3)もしもの話。眉見鋭心が他人の人生を生きてるという妄言前提
ぴぃちゃんが持ってきた雑誌には僕が載っていた。僕が出演した舞台の特集記事が乗っている雑誌だ。僕が演じたのは主役じゃないけど結構見せ場のある役で──それでも分不相応なほどに長い文章で取り上げられているのは少し緊張する。なんとなしに雑誌を読んでいたら『鬼気迫る演技』だなんて紹介されていて、花園百々人の面影もなかったと評されていた。
「舞台って、こわいね」
一言、口にしたらようやく落ち着いた。それを聞いていたのはマユミくんだけだった。アマミネくんとぴぃちゃんはお仕事に行っていなかったけど、マユミくんは僕の隣に座って一緒に雑誌を読んでいた。マユミくんはこうやって、理由もなく僕のそばにいることがある。
2241ぴぃちゃんが持ってきた雑誌には僕が載っていた。僕が出演した舞台の特集記事が乗っている雑誌だ。僕が演じたのは主役じゃないけど結構見せ場のある役で──それでも分不相応なほどに長い文章で取り上げられているのは少し緊張する。なんとなしに雑誌を読んでいたら『鬼気迫る演技』だなんて紹介されていて、花園百々人の面影もなかったと評されていた。
「舞台って、こわいね」
一言、口にしたらようやく落ち着いた。それを聞いていたのはマユミくんだけだった。アマミネくんとぴぃちゃんはお仕事に行っていなかったけど、マユミくんは僕の隣に座って一緒に雑誌を読んでいた。マユミくんはこうやって、理由もなく僕のそばにいることがある。