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    美冬

    SOUYA.(シメジ)

    MOURNING📕彼春寄りかもしれん
    美冬のお話は毎度切なくて温かい。
    ―――ねえ、知ってますか十又さん。俺結構寂しがり屋なんです。強がりなんです。弱虫なんです。……知ってますよね、それを、情けないと一喝して俺を立ち上がらせてくれたのは貴方ですもんね。
    なのに、立ち上がった俺の隣に貴方は居なくて俺、寂しいんです。強がるんです…弱くなるんです。

    強く、なったはずなのに。刀を握る手はもう震えていないはずなのに。
    貴方が隣に居ないだけで。とても冷たい風が吹き抜けて。あの時―――。
    走らなければ良かった、なんて。誰かが聞いていたら怒られそうな事をよく考えます。俺も戦っていたら結果は、未来は、変わっていたでしょうか。

    バチン、と。強めに額を小突かれて我に返った。
    「……祈梅さん……」
    「辛気臭い顔、止せ。酒が不味くなる」
    そう言って猪口に入った酒を一気に飲み干した彼は何考えてやがる、だなんて心配する。昔より丸く、優しくなった彼にそれでも俺は何でもないですよ、と笑った。

    なんでもないのだ。昔の事を、思い出すのはよくある事で。昔の、辛い事を思い出すのもよくある事。それを笑い話に出来るまで表に出すなと言ったのはあの黒猫だ。だから、そんな大昔の誰かさんの言葉に従って。 1423