Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    38sgmj

    DOODLE雰囲気妖怪パロな笹→辻
    死人(モブ)が出ます。辻ちゃんははっきりと名前は出てきません。雰囲気です、雰囲気。
    ちょっと不穏な笹→辻 オレはあの日出会った人を、思い出せないくせに必死に探している。

     友人の誘いで入部した山岳部は思いの外楽しめていて、あっという間に迎えた夏休み前最後の登校日には必要書類の提出も済み、初心者向けの山とはいえ、とうとう初めての縦走の旅に出ることになった。大きなザックに地図や計画書、コンパスにヘッドライト、食料や寝袋等、必要な物を入れて、オレは緊張と同じくらい興奮していた。天気予報だって暗記出来るくらい確認していたし、初心者だからこそ万全な状態で臨めるよう努めていた。つもりだった。
     状況が一転したのは、一日目の予定の半分にも満たない距離を登ってからだった。予報にも、目視出来る限りの空からも予想出来ない雨が降ってきたのだ。山の天気は変わりやすいとは言うけれど、まさか雲すら沸かずに此処まで急変するなんて。そんな風に思いながら引率、顧問、両名の先生からの指示に従いオレ達部員三人は速やかに雨具を着ることになった。雨は降り始めたけれど、やはり空には雨雲は見受けられず、また、勢いも弱く小降りだ。おそらく直ぐに止むだろう、そう全員が考え、だからこそ一人の反対も無く計画書通り山小屋までの道を進むことになった。今思えば、この時に引き返していたならばこんな結末にはならなかっただろうに。しとしと降っていた雨はオレ達の予想を裏切って次第に雨粒を大きくしていって、時折氷の粒まで混ざるようになった。まるで行く先を拒むかのような雨は風まで纏って圧倒的な理不尽さでオレ達を苦しめた。雲なんて一つも無かったのに、今では空は真っ黒で分厚いそれで覆われてしまっていた。真っ白な雨は視界を遮り、足元をぐずぐずに溶かしていく。こんな状況になってようやくオレは己の身の危険に気づいて震え上がった。この山は初心者向けだと聞いていたし、どのガイドブックにもネットで検索した記事にも同じようにそう書いてあったというのに、そんなのまるで嘘かのような険しく危険と隣り合わせの道は余計にオレを焦らせる。どうしてこんなに足元が不安定なんだ。雨で滑る。それに、体が重い。帰りたい。帰りたいよ。オレは一番経験の無い素人だったから、列の真ん中を歩いていた。先頭はこの山に詳しい引率の先生。もう先生の背中すら雨で見えないけれど、せめてオレの前を歩く友人の背中だけは見失わないようにしなければ。そう思った矢先の話だ。ガシャン、と石の崩れる音がした瞬
    9707