辻
Natsusitaa
TRAINING犬辻。さらに雰囲気で読んでください。氷爪洗脳 日差しが強く照り付ける昼下がり。遠くのアスファルトには蜃気楼が見える。
「あつすぎでしょ……」
普段同じくらいの位置にある先輩の頭はがくんと項垂れていて、うなじには白い粉みたいなものが付着していた。
「元気ないですね」
「あるわけなくない?」
いつもなら向こうから話を振ってくるのに、今日はむしろお断りな感じらしい。顔も上げずにぴしゃんと言い切った先輩はまた黙り込んだ。
「……」
「…………」
沈黙が落ちる。心なしか、さらに日差しが強まったような気がする。俺は意味もなく先輩のうなじを眺め続け、あ、この粉日焼け止めだ。
先輩は肌が弱いから、少しでも焼けるとすぐに赤くなって痛み出すらしい。粉が残っているって多分きちんと塗れてないってことだけど、平気なんだろうか。
758「あつすぎでしょ……」
普段同じくらいの位置にある先輩の頭はがくんと項垂れていて、うなじには白い粉みたいなものが付着していた。
「元気ないですね」
「あるわけなくない?」
いつもなら向こうから話を振ってくるのに、今日はむしろお断りな感じらしい。顔も上げずにぴしゃんと言い切った先輩はまた黙り込んだ。
「……」
「…………」
沈黙が落ちる。心なしか、さらに日差しが強まったような気がする。俺は意味もなく先輩のうなじを眺め続け、あ、この粉日焼け止めだ。
先輩は肌が弱いから、少しでも焼けるとすぐに赤くなって痛み出すらしい。粉が残っているって多分きちんと塗れてないってことだけど、平気なんだろうか。
Natsusitaa
TRAINING犬辻。多分トリオン兵が相手を睡眠状態にして連れ去るみたいなそんな新種です…深く考えないで…。黒翻る睡眠薬 割れた窓ガラスが黒いベストの上に散らばっている。倒れ伏した男の濃い瞳が、緩慢な動作でこちらを向く。
「辻ちゃん、平気?」
「……せ、んぱ、?」
「そうそう、犬飼先輩ですよ~っと……二宮さん、こちら犬飼。辻ちゃん発見しました。意識はあるみたいだけどぼんやりしてます」
『……動けないならお前が援護して本部まで向かえ。技術部は既に受け入れ準備を終えているそうだ』
「犬飼了解」
二宮さんに連絡を入れつつ目の前でひらひらと手を振ると、彼は眩しそうにぱちぱちと瞬いた。とりあえず生きてるっぽい、か。
「辻ちゃん、ベイルアウトできる?」
「……?」
「無理か~」
「ぅ、わっ」
持ち上げると、微かな悲鳴が上がった。担ぐみたいな恰好で持ち上げたトリオンの体は、弛緩して全く抵抗もない。
633「辻ちゃん、平気?」
「……せ、んぱ、?」
「そうそう、犬飼先輩ですよ~っと……二宮さん、こちら犬飼。辻ちゃん発見しました。意識はあるみたいだけどぼんやりしてます」
『……動けないならお前が援護して本部まで向かえ。技術部は既に受け入れ準備を終えているそうだ』
「犬飼了解」
二宮さんに連絡を入れつつ目の前でひらひらと手を振ると、彼は眩しそうにぱちぱちと瞬いた。とりあえず生きてるっぽい、か。
「辻ちゃん、ベイルアウトできる?」
「……?」
「無理か~」
「ぅ、わっ」
持ち上げると、微かな悲鳴が上がった。担ぐみたいな恰好で持ち上げたトリオンの体は、弛緩して全く抵抗もない。
🌂🌂🌂
DONE20230707💥💥💥💥目無しクセ強め?主がいます(広瀬以上辻本以下?くらい)自己投影の難易度高いと思います。そもそもちょっと夢絵と趣旨が違うかもしれない…こういう手塚国光が居たらいいという感じ…。私の夢絵はだいたいそうですが、今回も手塚国光全然喋ってくれませんでした…いつも通り何でも許せる方のみ自己責任で! 6
UoxoU
CAN’T MAKE94・💙🤎これもメモ帳に書いてあった話。
メチャクチャ途中で、自分でも気になる!! あらすじ位書いときなさいよ!!
多分、辻バレ前に(何か色々、リッパーさんの記憶とかを思い出したか何かして)カンタロくんを使い魔か眷属にしようとして一噛みしたけど、出来なかった話な気がする。
珍しくシリアス。
ひとくち 「は?」
口にしたのはたった一言なのに、頭の中では世話しなく言葉が紡がれる。
曰く、何だそれそんなのは知らない。だって自分はたった一回、一噛みされたたけで朝陽も銀も流れる流水も苦手な体に成った。欲しくもない能力は、己の血を体の何処からでも刃として生やす事が出来てシンヨコのポンチな吸血鬼とは比べ物にならない暴力的な力だった。
「すいませんであります」
未だに五月蝿く『何故』を繰り返す頭の中。それを遮ったのは目の前で正座をして上目遣いで此方を見上げるカンタロウの謝罪だった。
244口にしたのはたった一言なのに、頭の中では世話しなく言葉が紡がれる。
曰く、何だそれそんなのは知らない。だって自分はたった一回、一噛みされたたけで朝陽も銀も流れる流水も苦手な体に成った。欲しくもない能力は、己の血を体の何処からでも刃として生やす事が出来てシンヨコのポンチな吸血鬼とは比べ物にならない暴力的な力だった。
「すいませんであります」
未だに五月蝿く『何故』を繰り返す頭の中。それを遮ったのは目の前で正座をして上目遣いで此方を見上げるカンタロウの謝罪だった。
何番地ばん
DOODLE鬼🔥のようなもの。tips ある鬼。
相対した者の肉体の一部を攫っていくが、致命傷や即死要因は与えず去っていく。傷付けられたあとが焼かれたようになるため、手足など大きな損傷を負ってもその後の失血死に繋がることはほぼないようである。また、鬼舞辻配下の鬼と隊士との交戦に突如乱入、鬼舞辻側の鬼を攻撃した事例が報告されている。不可解かつ予測不能な点が多く厄介な鬼である。
いさな🌱
DONE既刊「彼女と彼の大団円」の設定をベースに、告白できなかった場合の軸のお話。冒頭に「彼女と彼の大団円」と同じ展開があります。ボーダーを辞めたひゃみさんと忘れられない辻󠄀ちゃんの大人になった頃のお話。
※捏造、年齢操作があります。
※モブがたくさんしゃべります。(名前ありモブもいます)
🎪うそつきたちの約束は学校帰り、ボーダーへと向かう道。
「三十歳になった時にさ……お互い彼氏彼女がいなかったら、結婚しちゃおうか?」
ひょんな話の流れから、ひゃみさんは俺にそう言った。それに思わず固まる。
「……お、俺はまぁ分かるけど……ひゃみさんは大丈夫でしょ?」
真に受けて照れてしまった俺とは対照的に、ひゃみさんはいつもと変わらない顔で「分かんないよ」と言ってくる。照れた自分を恥じて少しムッとした俺に、ひゃみさんは「どうしたの?」と聞いてくるものだから、頬をさすりながら「なんでもない」と答える。少しだけ笑った彼女は、それを深追いすることなく「そう」と返し、前を向いた。
「……あ、ねぇ辻くん」
クンクンと、制服の裾を軽く掴まれる。俺は素直に、彼女が指差す方向へと視線を向けた。そこには、店の前に置かれたガチャガチャが数台並んでいる。
16937「三十歳になった時にさ……お互い彼氏彼女がいなかったら、結婚しちゃおうか?」
ひょんな話の流れから、ひゃみさんは俺にそう言った。それに思わず固まる。
「……お、俺はまぁ分かるけど……ひゃみさんは大丈夫でしょ?」
真に受けて照れてしまった俺とは対照的に、ひゃみさんはいつもと変わらない顔で「分かんないよ」と言ってくる。照れた自分を恥じて少しムッとした俺に、ひゃみさんは「どうしたの?」と聞いてくるものだから、頬をさすりながら「なんでもない」と答える。少しだけ笑った彼女は、それを深追いすることなく「そう」と返し、前を向いた。
「……あ、ねぇ辻くん」
クンクンと、制服の裾を軽く掴まれる。俺は素直に、彼女が指差す方向へと視線を向けた。そこには、店の前に置かれたガチャガチャが数台並んでいる。
いさな🌱
SPOILER🎪【エワ展示】遠距離恋愛している大人辻ひゃみ辻󠄀くん視点・冒頭部(寄稿)野村様が「彼女と彼の大団円」を読んで描いてくださった、「彼女と彼の大団円」の辻󠄀くん視点のお話の冒頭部です。
全文は本編をご購入の方のみ閲覧いただけます。
▼合わせて読んでほしいサンプル
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19205460 6
いさな🌱
SPOILER🎪【エワ展示】遠距離恋愛している大人辻ひゃみ辻󠄀くん視点(寄稿)野村様が「彼女と彼の大団円」を読んで描いてくださった、「彼女と彼の大団円」の辻󠄀くん視点のお話です。
本編のエピソードから抜粋して描いてくださっているので、その点ご留意ください。
※犬飼隊ルーキーの後輩くんの顔出し捏造があります。
PW:ラストの文章「〇〇〇〇いうわけだ。」の〇部分4文字 13
GinkoLxh
DONE20230701-2 エワ用 イラスト(再掲)5枚Twitterで公開したイラストを集めました
・照れ気味辻ちゃん
・小南 バースデーお祝い
・嵐山 バースデーお祝い
・諏訪さん
・修 ペンの試し描き 9
pencil_0505
PAST2023年上半期の子たち(角辻祠# 烏が群れては、極彩色/天方依真# ハイフェッツをなぞる病# コードレス・ゴースト/蓼場礼緒# ムーンエラーアウトサイダー/小鳥遊神楽# ドロップアウトディスパイア/蜉蝣# 空蝉の如く) 7
ragi
MOURNING前に書いた現パロで高校生してるヴぇとゼんの話の続きみたいなもの前→https://poipiku.com/305989/8642227.html
前の話からハピエンを望む人は前のまま終わらせた方が幸せ
辻褄が合わなかったら脳内補完をお願いします 駄文
モブカヴェがある あとヴぇが死ぬ 8181
UoxoU
MAIKING94・💙🤎辻バレ官.ナギ衣食住の、食の話。
美味しいですね! ナ≠″リさん!! 「ナギリさん、お願いであります。どうか、この血液パックを飲んで下さい!!」
「誰が貴様からの施しを受けるか」
「ナギリさん、お願いです。もう暫く、何も口にされていませんよね?」
「黙れ。俺に構うなと言っているだろう!!」
「これだけ言っても聞き入れて頂けないのでしたら、こちらにも考えがあります!!」
「放っておけば良いだろう! 俺の事など!!」
「放っておけないから言っているのであります!!」
「…クソッ!!」
「こちら、VRCの所長さんに頂いた吸血鬼誘引剤であります。本来は下等吸血鬼を引き寄せる程度の効果ですが、無理を言って少し強いものにして頂きました!! これを俺が飲んだら、どうなるか分かりますか?」
2468「誰が貴様からの施しを受けるか」
「ナギリさん、お願いです。もう暫く、何も口にされていませんよね?」
「黙れ。俺に構うなと言っているだろう!!」
「これだけ言っても聞き入れて頂けないのでしたら、こちらにも考えがあります!!」
「放っておけば良いだろう! 俺の事など!!」
「放っておけないから言っているのであります!!」
「…クソッ!!」
「こちら、VRCの所長さんに頂いた吸血鬼誘引剤であります。本来は下等吸血鬼を引き寄せる程度の効果ですが、無理を言って少し強いものにして頂きました!! これを俺が飲んだら、どうなるか分かりますか?」
染井悉
MEMO❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏𝘾𝙖𝙡𝙡 𝙤𝙛 𝘾𝙩𝙝𝙪𝙡𝙝𝙪
❚ 傀逅
作:むつー様
𝙆𝙋:ややや
𝙋𝘾 / 𝙋𝙇
辻堂 レン / 朱音りず
湖白 標 / 染井悉
両生還にてシナリオクリア
❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏ 2
ゆき(ポイピク)
MOURNING没供養。新しい生活に馴染むのに必死で、1人での生活、生きてるだけで精一杯で他人との恋愛についてまだ考えられるような余裕がなかった時の辻田さんにアプローチしまくってフラれたカンタロウが、娯楽を楽しめる程度に生活に余裕が出来たり、他者との人間関係に意識が向くようになるまで待ってリベンジするような話が書きたかったが途中で失速した没です。付き合うにはまだ早かった ケイ・カンタロウは辻田にフラれた。
正確には彼が辻斬りナギリだと判明した後、それでも辻田さんが好きです!と告白した後に、VRCを出た後は本官ちで一緒に暮らしましょう!と言ったのだが、嫌だ無理だと断られたのである。
長い観察期間に問題を起こす事もなく、これ以上の過度な付き纏いはストーカー扱いになるぞと上司や同僚達に叱咤され、カンタロウは泣く泣く辻田への過度な接触を控えるようになった。
同じ新横浜の街に暮らしている身であり、退治人見習いになって仕事をするようになった辻田と吸血鬼対策課のカンタロウはお互いの仕事現場が被る為、仕事中に街中で出会す事は多かったが、プライベートでは全く会えずにいた。
顔見知り以上、友人以下。辻斬り被害者と加害者である部分を取っ払ってしまえば、カンタロウとナギリには同じ街で暮らしているだとか、吸対と退治人見習いとしての仕事上の関わりしかなく、カンタロウからは兎も角、ナギリからカンタロウに仕事のない日まで会わないかと誘われるような事もなく、このまま一時のお付き合い(辻斬り捜査)で終わってしまうのかと、カンタロウは未練たらしく辻田への想いを捨てられずにいた。
1616正確には彼が辻斬りナギリだと判明した後、それでも辻田さんが好きです!と告白した後に、VRCを出た後は本官ちで一緒に暮らしましょう!と言ったのだが、嫌だ無理だと断られたのである。
長い観察期間に問題を起こす事もなく、これ以上の過度な付き纏いはストーカー扱いになるぞと上司や同僚達に叱咤され、カンタロウは泣く泣く辻田への過度な接触を控えるようになった。
同じ新横浜の街に暮らしている身であり、退治人見習いになって仕事をするようになった辻田と吸血鬼対策課のカンタロウはお互いの仕事現場が被る為、仕事中に街中で出会す事は多かったが、プライベートでは全く会えずにいた。
顔見知り以上、友人以下。辻斬り被害者と加害者である部分を取っ払ってしまえば、カンタロウとナギリには同じ街で暮らしているだとか、吸対と退治人見習いとしての仕事上の関わりしかなく、カンタロウからは兎も角、ナギリからカンタロウに仕事のない日まで会わないかと誘われるような事もなく、このまま一時のお付き合い(辻斬り捜査)で終わってしまうのかと、カンタロウは未練たらしく辻田への想いを捨てられずにいた。
38sgmj
DONE以前、犬辻ワンドロライのお題で書いた二宮隊結成直前の犬辻が少し進展して放課後デートをしたようです。犬辻放課後デート 辻ちゃんが応えてくれた。おれの誕生日に、隊とは別に辻ちゃんだけでお祝いしてくれるという。それも、放課後にデートしてくれるんだって。辻ちゃんから、学校が終わってからの時間をください、とメッセージを受け取って、それで、放課後デートだね、と冗談に聞こえるように返事をして、自分で言っておきながら次の返信が来るまでひどく緊張していた。何言ってるんですか。違いますけど。そうやって冷静に返されたらどうしようと、情けなくなるほど不安な時間を過ごしていた。それなのに、はい、よろしくお願いします、なんてわかってるんだかわかっていないんだか微妙な返事をもらって、それから誕生日までの数日間。今度は格好悪いくらいおれはそわそわとしていた。おれがクリスマスに、おれのことももう少し考えてよ、なんて言ったから辻ちゃんは律儀に守ってくれているだけなのか。それとも、本当に考えてくれるようになったのか。正解はわからないけれど、それでも、どちらだとしてもおれは辻ちゃんの気持ちが嬉しくて浮かれてしまっていた。別に付き合えるわけじゃないのに。辻ちゃんの気持ちがおれに向いているわけでもないのに、それなのに、もう、おれのことを考えてくれているだけで胸がいっぱいだった。自分の誕生日には辻ちゃんがおれのためだけにそばにいてくれる。おれのことだけを考えてくれる。嬉しい。嬉しい。どうしよう。こんなの初めてで、嗚呼、おれって、こんなわかりやすい恋愛なんてするんだって自分でも驚いてしまった。
4382dengakudango
DONE鬼いち両片思い※出さずにいられなかった審神者がいます。ズレた優しい人間になりました。一部ゲームの都合に関する独自解釈と、適当な設定に対する辻褄合わせを含みます。 8259
3rdSyk
PASTキスの日ということで過去作ですがmtkiss置いときます※まったく同じ作品がポイピクのどこかにありますが再録同人誌用に作画を修正した方を置いておきます
(前後の話との辻褄合わせのためソファがベッドになっています)(どうでもいいですね) 13
fujisankabe
MEMOいちごジャムの話が続きました。アムロくんが残したメモが前回書いてたものと変わりつつある、、、
支部にあげる時に辻褄が合えばいいかな!
いちごジャムの話4久しぶりの我が家は相変わらず埃っぽかった。
人が住まない家は朽ちていくのだなと、実感する。閉め切っていたカーテンと窓を開けると、初夏の風が入ってきた。
外は随分と暑いのに、家の中はひんやりとしていて心地が良い。埃っぽさには慣れているので一人用のソファにどかりと深く座り込んだ。
シャアはよくこのソファに座って古い本を読んでいた。シャアのお気に入りだったこのソファは、ゴブラン織の生地が張られていて、木材は天然のオークだそうだ。シャアのムンゾにあった自宅にはこれと似たものがあったと、そんな話をしてくれた。シャアの口から語られる思い出話は、そこら辺にいる子どもと似たような他愛のないもので、勿論その境遇は人とかなり違いはするが、シャアにも子ども時代があり、そしてそれはどんな資料にも彼について書かれた書籍にもない生きた人間の記憶だった。実は虫が苦手だったとか、苦手な食べ物があったとか、モンスターについての絵本を読んだ日は怖くて眠れなかったとか、セイラさんがたまらなく可愛かった事や、兄らしく振る舞うことが嬉しかった事、そしてご両親のこと。
813人が住まない家は朽ちていくのだなと、実感する。閉め切っていたカーテンと窓を開けると、初夏の風が入ってきた。
外は随分と暑いのに、家の中はひんやりとしていて心地が良い。埃っぽさには慣れているので一人用のソファにどかりと深く座り込んだ。
シャアはよくこのソファに座って古い本を読んでいた。シャアのお気に入りだったこのソファは、ゴブラン織の生地が張られていて、木材は天然のオークだそうだ。シャアのムンゾにあった自宅にはこれと似たものがあったと、そんな話をしてくれた。シャアの口から語られる思い出話は、そこら辺にいる子どもと似たような他愛のないもので、勿論その境遇は人とかなり違いはするが、シャアにも子ども時代があり、そしてそれはどんな資料にも彼について書かれた書籍にもない生きた人間の記憶だった。実は虫が苦手だったとか、苦手な食べ物があったとか、モンスターについての絵本を読んだ日は怖くて眠れなかったとか、セイラさんがたまらなく可愛かった事や、兄らしく振る舞うことが嬉しかった事、そしてご両親のこと。
kidd_mmm
MOURNINGΔ神ナギのアンソロに参加させていただけることになったので、習作?的に出だしだけ書いてみたやつ。Δ世界の、アカジャで記述されていないところを想像で埋めるための箱庭造り的な。Δ神ナギ習作 ひと様の家を訪ねる際は菓子折を。
よくしらないひとの家にむやみに行かない。
青年の頭の中では二つの教訓がぐるぐると回っていた。部屋の主が彼を壁際に追い詰めている。
「ね、ちょっとでいいんだ。味見程度だよ」
部屋の灯りは逆光になり、部屋の主の痩せて背の高い姿に影が落ちている。四角い縁の眼鏡の奥で、赤い眼が光る。
「あの時の君の血、ほんとにおいしそうな匂いがして――」
部屋の主が大きく口を開け、牙の先がちらと見える。この部屋の主は吸血鬼だったのだ。青年の頬にもつれ気味の長い髪が、首筋に生温かい吐息が触れる。青年は壁に背中を押しつけたまま、なすすべもなく固まっている。せめて菓子折の代わりに血液ボトルを持ってきていれば、状況は変わっただろうか?
1414よくしらないひとの家にむやみに行かない。
青年の頭の中では二つの教訓がぐるぐると回っていた。部屋の主が彼を壁際に追い詰めている。
「ね、ちょっとでいいんだ。味見程度だよ」
部屋の灯りは逆光になり、部屋の主の痩せて背の高い姿に影が落ちている。四角い縁の眼鏡の奥で、赤い眼が光る。
「あの時の君の血、ほんとにおいしそうな匂いがして――」
部屋の主が大きく口を開け、牙の先がちらと見える。この部屋の主は吸血鬼だったのだ。青年の頬にもつれ気味の長い髪が、首筋に生温かい吐息が触れる。青年は壁に背中を押しつけたまま、なすすべもなく固まっている。せめて菓子折の代わりに血液ボトルを持ってきていれば、状況は変わっただろうか?