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    電話

    oicsuck

    DOODLE現パロ🇹🇼旅行話筋。ただただ電話で喋ってるだけのあほ話です。
    InfinityInfinity

    たんと軽い音がして、背筋からお腹まで細く一直線に衝撃が走る。型抜きでもしたかのように正確に、ひとつ小さな穴が胴体にあいて、身体の熱を根こそぎ奪うように急速に熱を持ち、拍動は全身に響く。まずいと思って傷口をあらためると、みるみるうちに穴はみぞおちから臍まで届く程に拡がっていった。困った事に、中はすっかり空洞であった。砕けていようはずの背骨の欠片すらも見付からなかった。血の一滴も落とさず現実味なく拡がりゆく穴を為す術なく眺めて、このままいくと身体がふたつに分かれてしまうなと他人事のような考えが頭を掠めたところで、ようやく目が覚めた。
    酷い寝汗をかいていて、枕もシーツも少し湿っていた。歯を食いしばっていたのか、顎関節は怠さを伴う鈍痛を訴え、左右両方の前腕も何だか痺れていた。時刻は午前一時を少し過ぎたところで、ジェクトは押し寄せる現実に流されるように、先程まで見ていた夢の記憶を喪っていった。発熱を疑い念の為体温も測ったが、三十六度五分と極めて健康的な値が五秒と待たずに叩き出され、若干バカバカしくなりジェクトはもう一度ベッドに寝転がって携帯電話のディスプレイを眺めた。今ならまだ、起きているかもしれない。十秒くらい迷った後、出なかったらメッセージで「何でもない」と入れておこうと思って、恋人の番号にコールした。
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    Masima2022

    DONEワンドロより〜電話〜
    電話「あざ、」

    まだまだ夜風は冷たく感じる二十時。莇を探して向かったバルコニーでその後ろ姿をやっと発見したオレは嬉々として声を掛けようとした。
    …した、んだけど、オレの気配に振り返った莇の耳元にはスマホが押し宛てられていて、電話中だと直ぐに気付いたオレは慌てて自分の口を両手で塞いだ。そんなオレを見ながら人差し指を唇に当てる莇の黒髪が冷たい夜風に撫でられてさらりと流れる。静かにしろ、と声が無くてもその仕草が何を示しているかなんて一目瞭然、オレはうんうんと口を塞いだまま頷いた。

    「……、」

    そんなオレを見て莇は綺麗な瞳の端っこをほんのり細めて、艶々の唇をちょこっとだけ笑った形に変えて指を離した。あ、悪い何だっけ。なんて直ぐにその視線はオレとは反対方向に向かっちゃったけど、オレの心臓はどきどき煩くなっちゃって聞こえてないか心配になるくらいだった。オレにだけ向けられた秘密を共有してるみたいな笑い顔が凄く綺麗で可愛くって、何だか電話口の先のオレの知らない人に勝ったみたいな気持ちになっちゃうとか意味の分からない充足感を噛み締めていると唐突に莇からおっきな笑い声が上がった。
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