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    ari_hbr

    MOURNING2.51 ver1.1「出ないように努力しろ!」
    「わははは」

     扉が閉まる音のあと、少し置いて玄関から遠ざかっていく足音が小さく聞こえた。それを聞きながら、結局自分で流しに重ねた皿を洗い始める。真夏の熱気で温められたの水道水は、夜になり多少気温が下がってもなおぬるい。それでも、恥ずかしいことを言ったり支離滅裂な話をしたりで体温の上がった手に、流水の感覚は心地よかった。
    皿を洗えだとかなんだとか、そんなのは照れ隠しのようなもので。実際のところ世話になっているのはこっちの方なんだから、そんなのは自分でやって構わなかった。

     落ち着いて先程の会話を思い返すと結局また恥ずかしさが込み上げてきて、いつもより無駄に丁寧に、時間をかけて皿を洗っていく。一枚洗い終われば次を手に取って、またわしゃわしゃとスポンジで洗う。真城が出ていった部屋は静かで、ただ泡立ったスポンジが皿を擦る音と、シンクを叩く水の音、そしてその合間に食器がぶつかる硬い音が狭い部屋に響いた。
     ……そうしていると、さっきついでに訊いておけばよかったなんてことが今更思い浮かんだりして。自分のテンポの遅さに小さく溜息をつく。……めぐるの嘲りが聞こえた気 3672