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    Love Song

    瀬名🍭

    TRAININGPlay A Love Song/まゆあか赤司らはスカイダイビングに必要な全ての資格を有していた。健全な肉体と熱に浮いた魂、約束された未来に、凍てついた戦場(カトラリー)。二人で一つの放物線。
     搭乗した航空機が規定の高さに達して、彼らは地上へ向け、飛び降りた。風を切る音が峻烈に聴覚を覆い尽くす。体が目まぐるしく数度回転するも、気絶している暇はない。ややあって体勢が安定した。まるく地平線が伸び、四方へ煙草を吹きかけたように雲海が横たわっている。彼のズボンの裾が激しくはためいているのが見えた。揃いの赤い髪が強風で逆立ち、額がつるりと日差しを反射した。頭上に日暈。あと一分もしないうちにこの気ままな自由落下(フリーフォール)は終わる。似姿と魂を等分してもなお一つだけ二者で切り分けられない物があった。早く取り交わさねばならない。上空四千メートルから時速二百キロで滑るように地表へ下降していく、この空の旅が終わる間に。だが、
    「それはアイツにくれてやるといい、僕には不要のものだ」
     彼は片目に陽光を宿して、わずかな目くばせの後、パラシュートを広げ、「お先に」と下降していった。麗かな春の午後、眼下には紺碧の大海が広がる。それはどこにもない風 793