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    一重

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    drsakosako

    TRAINING紙一重の交歓
    タル鍾
    戯れに重ねた刃がぶつかり合う音は、身体の暗い奥底でたゆたう熾火へ注がれる揮発油のようなものだった。児戯であるはずの剣戟の一つ一つが、退屈な策謀でなまくらになりかけた身体を乱暴に叩き起こし、つまらない謀略で喜悦を忘れた精神を目覚めさせていく。
     此方が半歩踏み出せば、彼方が半歩引いて、薙ぐ。彼方が強烈に数歩踏み込めば、此方とて引いてなぞおれない。激流の刃のかけらを服に染ませるタルタリヤは、得も言われぬ興奮を背筋に走らせる。散る水の花びらの奥で、梔子色に爛々と輝く彼の瞳があまりにも熱を帯びていたから。
    「――……全く、見惚れちゃうね」
     槍の穂先に水の刃を砕かれるやいなや、そのまま弾かれるがままに後ろへと飛び退く。さざめく刃を数千の飛沫に変えてから矢の形へとこごらせて、背負った弓を握り、番える。水の刃を砕かれて、ぐ、と限界まで引いた弦から空気を裂く弓矢が放たれるまでは、一秒も無かった。
     的になっているのは、文字通り神の造物たる男。槍の構えも、玉のような汗がなぞり落ちていく頬の輪郭も、闇に浮かびそうな程の凄絶な光を讃えた瞳も、何もかもが誂えられたかのように美しい男だった。そんな男の前で己と 1025
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