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    飲茶

    はるち

    DONE二人で飲茶を食べるお話
    いつだってあなたと晩餐を アルコールは舌を殺す。
     酒の肴を考えてみれば良い。大抵が塩辛く、味付けが濃い。それは酒で鈍くなった味覚でも感じ取れるようにするためだ。煙草も同様だ。喫煙者は食に興味を示さなくなることが多いと聞くが、それは煙が舌を盲目にするからだ。彼らにとっては、食事よりも煙草のほうが味わい深く感じられるのだろう。
     だから。
     酒も煙草も嗜む彼が、こんなにも繊細な味付けで料理をすることが、不思議でならない。
    「今日のは口に合いませんでした?」
    「……いや、おいしいよ」
     考え事をしている内に手が止まっていたのだろう。問いかけに頷き返すと、そりゃ良かった、とテーブルの向かいで彼が微笑む。
     飲茶に興味がある、と言ったのはつい先日、彼が秘書として業務に入った時のこと。それから話は早かった。なら次の休みは是非龍門へ、と彼が言うものだから、てっきりおすすめのお店にでも案内してくれるのかと思ったのだが。彼に連れられてやって来たのは探偵事務所で、私がテーブルにつくと次から次へと料理が運ばれてきた。蒸籠の中に入っている料理を、一つ一つ彼が説明する。これは焼売、海老焼売、春巻き、小籠包、食事と一緒に茉莉花茶をどうぞ、等々。おっかなびっくり箸をつけてみれば、そのどれもがここは三ツ星レストランかと錯覚するほどに美味しいのだから。
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