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    6月7日

    42_uj

    MEMOいたふし。渋谷より前。虎杖のことが好きな伏黒、そのことを察している虎杖、両方から話をきいている釘崎が映画を見たり願いごとについて話したりします。
    (ワンドロで書いた3篇を2021年6月7日にピクシブにまとめた文章。これは同年12月に本にした際のバージョンです。本では最初の章でした)
    摸造のピクニック2018.10

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     目を開ける。テレビ画面には映画が流れている。光が淡い。淡い光のなか、頭に布をかぶった子どもが顔を傾けてテーブルを睨んでいる。テーブルには液体をたたえたコップ、空のコップ、乾いたふうな瓶が並ぶ。セリフはない。コップがすべるように動いて子どものそばを離れていく。ひとりでに。子どもがなんらかの能力を使って動かしているということなのかもしれない。子どもの標的は瓶に、別のコップにと移り、テーブルに顔の側面を預けてしまった子どもがどこを見ているのか、もうわからない。空のコップはテーブルから落ちてしまった。
    「あ、起きた?」
     ベッドにもたれて画面を見つめる虎杖がこちらを振り向かないままで俺に訊ねる。音を立てたりしたつもりはなかったが、気配で察したのだろう。こいつのこういうところは獣みたいだといつも思う。
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