星を食べる 日が傾いていく。影が長くなる。校舎も校庭も金色めく。2年の教室は旧校舎の北棟。影に覆われた中庭を通って伏黒のいる教室に向かう。新校舎が完成して吹部の練習が向こうに移ってこっち、放課後の旧校舎はだいぶ静かになった。新校舎のほうからあらゆる楽器のバラバラの基礎練が、校庭や体育館からいろんな運動部のかけ声やはしゃぐ声が遠く響いてくる。
目当ての教室にたどり着くと、おもったとおり伏黒だけが残っていた。頬杖をつき机に置いた文庫本を片手で退屈そうにめくる伏黒に、ゆっくりと近づく。そのすぐ前に立って、眼鏡を奪ってやろうと手を伸ばす。
そこで視線をあげた伏黒と目があう。上目遣いの伏黒と、眼鏡のレンズを通さない角度で。
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