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    独身

    しきしま

    DONE横顔
    (※独身×バツイチの元同級生)
    同窓会で久しぶりに会った柏木の薬指には、あるはずの指輪がなかった。
     すらっとした柏木のその綺麗な左手を見て、俺は喜びとも哀しみとも形容し難い、妙な感情を覚えた。あえて例えるとするならば、胸の奥で、悪魔が鍋を茹でているような感じだった。

     俺が柏木と会ったのは、高校の入学式だった。誰とも話さずに俯いている柏木を見て、俺は、大人しいやつだな、と思った。本当にそれだけだった。
     入学式が終わると、俺たち一年生は激しい部活の勧誘に逢った。俺はその人波をかき分けて、入学する前からずっと入部すると決めていた軽音部の部室に入った。そこでは、上級生たちがライブをやっていた。
     ライブは盛り上がっていたが、俺はうまくその空気についていけないでいた。ライブに行ったことがないわけではなかったが、演者も客も誰一人知らない中で、緊張していたのだと思う。そんな中で、ふと横を向いた時、隣にいたのが柏木だった。
     柏木は、乗ることも、乗ったふりをすることもなく、ただ黙って演奏を聞いていた。その真面目な横顔が、柏木と世界との境目が、どうしてか美しく見えた。

    「つまらない?」

     俺は、今日初めて会ったばかりのその 4473