8kawa_8
DONEブラレノです。二人で酒飲んで愉快に二次会(概念)に行く話です。5周年読みました? ありがとうございました。【ブラレノ】たまにはこんな夜も! あ、と。その一言を発したのは果たしてどちらが先だっただろうか。
ひっくり返したボトルから、ぽたんと。ひとつの雫が落ちていく。グラスに琥珀色の波が広がって、それ以上増幅することなく消えていった。
「終わっちまったな」
「終わってしまった」
感嘆詞と同じ、喪失の寂しさを乗せたような落胆の声をお互いに口にして。ブラッドリーとレノックスは、相手の赤色の瞳を覗き込み合う。何を考えて、何を望んでいるのか。酒に酔って、しかし酔い切れなくて、愉しさと物足りなさとが綯交ぜになったそれらを感じ取りながら、先に言葉を発したのはレノックスの方である。
「他に酒はあるのか?」
ふっと、ブラッドリーのロゼ色の瞳が細められた。白い頬には、その瞳と同じ色が化粧のようにわずかに混ざり、消さない勲章の傷跡も普段より存在感を強めている。「あるぜ」と答え、彼は大きく指を鳴らす。途端にふわりと浮き上がったのは、部屋に鎮座する宝飾品たちと並んで飾られたブラッドリーのお気に入りの美酒たちだ。
3084ひっくり返したボトルから、ぽたんと。ひとつの雫が落ちていく。グラスに琥珀色の波が広がって、それ以上増幅することなく消えていった。
「終わっちまったな」
「終わってしまった」
感嘆詞と同じ、喪失の寂しさを乗せたような落胆の声をお互いに口にして。ブラッドリーとレノックスは、相手の赤色の瞳を覗き込み合う。何を考えて、何を望んでいるのか。酒に酔って、しかし酔い切れなくて、愉しさと物足りなさとが綯交ぜになったそれらを感じ取りながら、先に言葉を発したのはレノックスの方である。
「他に酒はあるのか?」
ふっと、ブラッドリーのロゼ色の瞳が細められた。白い頬には、その瞳と同じ色が化粧のようにわずかに混ざり、消さない勲章の傷跡も普段より存在感を強めている。「あるぜ」と答え、彼は大きく指を鳴らす。途端にふわりと浮き上がったのは、部屋に鎮座する宝飾品たちと並んで飾られたブラッドリーのお気に入りの美酒たちだ。
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DONEブラレノです。落ち着いた雰囲気のバーが好きな男たちの話。【ブラレノ】美味い酒があればいい カラン、コロン。店の扉に備え付けられたベルが、心地の良い音を奏でていく。
目付け役のスノウとホワイトなら、ミスラとオーエンを引き連れてどこかの任務に旅立ってしまったし。フィガロは気に入りの生徒たちを連れて二泊三日だかの課外学習中。オズも日中は中央の魔法使いたちと一緒に魔法舎を開けていた上に、今日の食事はネロが担当していたものであったから。目立った監視もなくのびのびと一日を過ごし、更には美味い飯までもが待っている開放感といえば、筆舌に尽くしがたいものであったと語るべくもない。
この自由の象徴のような一日を、さらに最高なものに仕立てるにはどうしたらいいか。ブラッドリーの問いの答えは単純だ。美味い酒と、それを分かち合える相手が必要だった。
4013目付け役のスノウとホワイトなら、ミスラとオーエンを引き連れてどこかの任務に旅立ってしまったし。フィガロは気に入りの生徒たちを連れて二泊三日だかの課外学習中。オズも日中は中央の魔法使いたちと一緒に魔法舎を開けていた上に、今日の食事はネロが担当していたものであったから。目立った監視もなくのびのびと一日を過ごし、更には美味い飯までもが待っている開放感といえば、筆舌に尽くしがたいものであったと語るべくもない。
この自由の象徴のような一日を、さらに最高なものに仕立てるにはどうしたらいいか。ブラッドリーの問いの答えは単純だ。美味い酒と、それを分かち合える相手が必要だった。
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DONEブラレノです。負けたボードゲームの話です。東保護者が仲良くしている一方その頃なブラレノです。【ブラレノ】盤上の彼らと僕ら 陽が沈み、忌々しい月の光に支配された世界の中で。その男は月を背に、中庭に立ち尽くすようにして何処かを見上げていた。
太い縁の眼鏡と重たい前髪に遮られた、赤い瞳に乗る感情。それは安堵のようでもあり、驚愕のようでもあり、嫉妬や羨望のようでもあったが。ただ寂寞を秘めているだけにも見えた。きっとどれも間違いではなかったし、どれか一つが真というわけでもないのだろう。人間の感情は、何か一つで支配されるほど単純なものでもなかったから。
どれ、と。彼の視線の先を追っていく。見上げた先の一面の藍色の中には、曇り空の色をした靄と、花火にも似た光とがまばらに散っていたが。彼の目当ては空ではなかったのだとすぐに知った。正しくは、初めから分かっていたが改めて理解した。
2930太い縁の眼鏡と重たい前髪に遮られた、赤い瞳に乗る感情。それは安堵のようでもあり、驚愕のようでもあり、嫉妬や羨望のようでもあったが。ただ寂寞を秘めているだけにも見えた。きっとどれも間違いではなかったし、どれか一つが真というわけでもないのだろう。人間の感情は、何か一つで支配されるほど単純なものでもなかったから。
どれ、と。彼の視線の先を追っていく。見上げた先の一面の藍色の中には、曇り空の色をした靄と、花火にも似た光とがまばらに散っていたが。彼の目当ては空ではなかったのだとすぐに知った。正しくは、初めから分かっていたが改めて理解した。
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DONEブラレノです。付き合ってはいない。二人で食事に行く話。エッ、23ボスBDのレさん台詞……何?!?!?! のあれです。たくさん設定を捏造したモブ女性が出て来ます。
【ブラレノ】「また今度」は遠くない。 まとまった小金の用意ができたから、近いうちに飲みに行かないか。
そうレノックスから切り出されたのは、ブラッドリーの誕生日から暫く経ってのことだった。
バーでの飲み代を賭けた勝負も、先送りを理由にした食事代の請求も、どれもが相手の同意を得ずにブラッドリーが勝手に押し付けたようなものだというのに。『俺の財布が耐えられるといいんだが……』と苦笑いを浮かべるだけで、これといった拒絶もしない。そんな彼は良く言えば気のよい相手であったし。悪く言えば、絶好のカモでもあった。
忘れたふりをされたって、ブラッドリーには『酒の席の出来事だしな』と不問にする懐の深さを見せるつもりだった。だというのに律儀に自分から話題を蒸し返し、奢る前提で進めていくあたり、相当に根が真面目であるのだろう。だからと、相手から金を出すと申し出てくれているのを、わざわざ止める道理もなかったが。
8415そうレノックスから切り出されたのは、ブラッドリーの誕生日から暫く経ってのことだった。
バーでの飲み代を賭けた勝負も、先送りを理由にした食事代の請求も、どれもが相手の同意を得ずにブラッドリーが勝手に押し付けたようなものだというのに。『俺の財布が耐えられるといいんだが……』と苦笑いを浮かべるだけで、これといった拒絶もしない。そんな彼は良く言えば気のよい相手であったし。悪く言えば、絶好のカモでもあった。
忘れたふりをされたって、ブラッドリーには『酒の席の出来事だしな』と不問にする懐の深さを見せるつもりだった。だというのに律儀に自分から話題を蒸し返し、奢る前提で進めていくあたり、相当に根が真面目であるのだろう。だからと、相手から金を出すと申し出てくれているのを、わざわざ止める道理もなかったが。
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DONEブラレノです。マーキングされるブラレノというお題でしたが、多分お題をくださった方の意図していない男にマーキングをされています。すみません。筆が乗ってしまった。
NTRを書こうと意気込んだわけではないのですが、略奪的なテーマが含まれている不思議な話になっちゃいました。
【朗報!】ボスが羊飼いを口説き落とすのに成功してお付き合いしてる世界線
【ブラレノ】残滓は捨てて、飲み干した げぇ、と。言葉を口にしたわけではなかったが。きっとその表情に台詞を当てるとなったら、そんな音が適切だろう。
眉間に皺を寄せて、如何にも不快感を露わにしたブラッドリーを至近距離で見つめながら。そんなに嫌だっただろうかと、レノックスは問いかける。その問いかけにブラッドリーの眉間の皺はますます深まり、「おまえ、本気でそれを言ってるのかよ……」とかぶりを振った。
単刀直入に言うならば。レノックスから、フィガロの魔力の気配がしたのだ。
フィガロといえば、現在は南という厚すぎる皮を被っている、北の国の魔法使いだ。ブラッドリーよりも千年以上もの長い時を悠に生きる魔法使いで、多くの北の魔法使いにとってはオズや双子に並んでの天敵ともいえる。単純な魔力の強さを測ればオズほどに圧倒的なものを持っているわけでもないので、たとえばミスラを味方につけたブラッドリーであれば勝機は見えるのかもしれない。しかし実際にはミスラを手玉に取って意のままに操りながら、フィガロの智謀の裏を掻く必要があるわけなので、その勝利の仮定はあまりに現実的なものではなかったのだ。
4633眉間に皺を寄せて、如何にも不快感を露わにしたブラッドリーを至近距離で見つめながら。そんなに嫌だっただろうかと、レノックスは問いかける。その問いかけにブラッドリーの眉間の皺はますます深まり、「おまえ、本気でそれを言ってるのかよ……」とかぶりを振った。
単刀直入に言うならば。レノックスから、フィガロの魔力の気配がしたのだ。
フィガロといえば、現在は南という厚すぎる皮を被っている、北の国の魔法使いだ。ブラッドリーよりも千年以上もの長い時を悠に生きる魔法使いで、多くの北の魔法使いにとってはオズや双子に並んでの天敵ともいえる。単純な魔力の強さを測ればオズほどに圧倒的なものを持っているわけでもないので、たとえばミスラを味方につけたブラッドリーであれば勝機は見えるのかもしれない。しかし実際にはミスラを手玉に取って意のままに操りながら、フィガロの智謀の裏を掻く必要があるわけなので、その勝利の仮定はあまりに現実的なものではなかったのだ。
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DONEブラレノが好きなのに書くのが異様に難しい。【ブラレノ】認めるには、あまりにも 右手には愛銃、左手にはふわふわの毛玉。くしゃみをした先に出くわしたのは、魔法舎でよく見知った顔だった。
肉弾戦を得意とするわりに、視界の邪魔になりそうな重たい前髪。戦闘時の引き締まった時のそれらとは打って変わり、ぼんやりとした表情に口元。「羊飼い」とブラッドリーが彼の名の代わりを口にすれば、ぱちぱちと紅色の瞳が瞬いた。
見渡したところこじんまりとした室内であったので、飛ばされた先は魔法舎だと一瞬だけ期待をしたのだが。その期待はこの大男の言葉であっけなく打ち砕かれた後である。
南の国にある、レノックスが塒としていた小屋。それが今回のくしゃみでの転移先だった。
「なんでこんなところに」
「それは俺の方が聞きたいくらいなんだが……。くしゃみなら、仕方がないか。俺は魔法舎で過ごす時間の方が長くなったから、家の物を整理しようと」
2727肉弾戦を得意とするわりに、視界の邪魔になりそうな重たい前髪。戦闘時の引き締まった時のそれらとは打って変わり、ぼんやりとした表情に口元。「羊飼い」とブラッドリーが彼の名の代わりを口にすれば、ぱちぱちと紅色の瞳が瞬いた。
見渡したところこじんまりとした室内であったので、飛ばされた先は魔法舎だと一瞬だけ期待をしたのだが。その期待はこの大男の言葉であっけなく打ち砕かれた後である。
南の国にある、レノックスが塒としていた小屋。それが今回のくしゃみでの転移先だった。
「なんでこんなところに」
「それは俺の方が聞きたいくらいなんだが……。くしゃみなら、仕方がないか。俺は魔法舎で過ごす時間の方が長くなったから、家の物を整理しようと」
mochi_3nU7o
DONEブラレノ。ボス誕のレノが良すぎたのでカッとなりました。これからセフレになるふたり。ブラッドリー視点。オチ迷子。ブラレノ掌編「ブラッドリー、俺の羊を食べようとするのはやめてくれないか」
魔法舎の庭でいつものように羊に囲まれた男は困ったようにそう言った。困り眉の下では、鉱物のような赤い瞳も常の硬さを和らげるものだ。
つるりと光る赤に、ほう、と漏らした息はレノックスには届いていない。腕に庇った羊を優しく抱いて宥めるように撫でている。そうしながらレノックスは、代わりのものを仕入れてくるから少し待て、と言った。哀れな羊の代わりを差し出すから、と。
願ってもない台詞に、思わず口角がニヤリとあがってしまう。
「ああ、もらってやろうじゃねえか」
言うやいなや、レノックスの襟をぐいと力任せに引き寄せた。そうして目の前に近寄せた唇にかぶりつく。体格にしてはこぢんまりとした口を、大きく開けた口ですっかり塞いでしまう。赤い瞳が見開かれる。その変化に気をよくして、腰を引き寄せながら舌をねじ込んだ。下手に動かれる前に、と性急に膝で長い両脚を割って手近な木へとその体を押しつける。
1609魔法舎の庭でいつものように羊に囲まれた男は困ったようにそう言った。困り眉の下では、鉱物のような赤い瞳も常の硬さを和らげるものだ。
つるりと光る赤に、ほう、と漏らした息はレノックスには届いていない。腕に庇った羊を優しく抱いて宥めるように撫でている。そうしながらレノックスは、代わりのものを仕入れてくるから少し待て、と言った。哀れな羊の代わりを差し出すから、と。
願ってもない台詞に、思わず口角がニヤリとあがってしまう。
「ああ、もらってやろうじゃねえか」
言うやいなや、レノックスの襟をぐいと力任せに引き寄せた。そうして目の前に近寄せた唇にかぶりつく。体格にしてはこぢんまりとした口を、大きく開けた口ですっかり塞いでしまう。赤い瞳が見開かれる。その変化に気をよくして、腰を引き寄せながら舌をねじ込んだ。下手に動かれる前に、と性急に膝で長い両脚を割って手近な木へとその体を押しつける。