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DONE2020~2022のTwitterSSログ。だいたいリーバルの話。テバとカッシーワの話が少し。モブリト青年の話と勇者の話とめどりばの話が一つ。リトSSログ◇憧れ映すは琥珀の眼
風の便りというのは、時にどんな吟遊詩人よりも早く[[rb:市井 > しせい]]の出来事を戯曲に仕立て上げる。たとえばリト族の詩人の元にとある伝説の幕切れを伝えたのは、言葉でなく青い閃光と轟音、そして風が運んできた青い花びらの群れだ。それは彼の友が大切にしていた花で、名前を姫しずかと言った。
それから昼日、近頃リトの村へと帰郷した吟遊詩人を訪ねて、ハイリア人の旅人がやって来た。かつて村の窮地を救ってくれたその旅人にリト達は戦士も商人も深く謝意を示し、詩人の待つ広場へとすぐさま案内をして、後は静かに風の吹くまま彼が過ごせるよう計らった。
吟遊詩人は旅人の青年の姿を認めると、楽器を奏でていた手を止め、他のリト同様に深く一礼した。そして用向きを尋ねてみると青年は「旅の終わりを報告に来たのだ」と言う。吟遊詩人もかつては旅がらす、その道行きの最中で青年と知り合った。旅を終えて故郷の村へと帰ってきたのは、ひとえに旅の目的、すなわち古の唄の研究と完成が果たされたからだった。
32464風の便りというのは、時にどんな吟遊詩人よりも早く[[rb:市井 > しせい]]の出来事を戯曲に仕立て上げる。たとえばリト族の詩人の元にとある伝説の幕切れを伝えたのは、言葉でなく青い閃光と轟音、そして風が運んできた青い花びらの群れだ。それは彼の友が大切にしていた花で、名前を姫しずかと言った。
それから昼日、近頃リトの村へと帰郷した吟遊詩人を訪ねて、ハイリア人の旅人がやって来た。かつて村の窮地を救ってくれたその旅人にリト達は戦士も商人も深く謝意を示し、詩人の待つ広場へとすぐさま案内をして、後は静かに風の吹くまま彼が過ごせるよう計らった。
吟遊詩人は旅人の青年の姿を認めると、楽器を奏でていた手を止め、他のリト同様に深く一礼した。そして用向きを尋ねてみると青年は「旅の終わりを報告に来たのだ」と言う。吟遊詩人もかつては旅がらす、その道行きの最中で青年と知り合った。旅を終えて故郷の村へと帰ってきたのは、ひとえに旅の目的、すなわち古の唄の研究と完成が果たされたからだった。
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DOODLEpixivから引っ越し。惚気るテバともだもだするリーバルの話とんだ闇夜の烏撃ち 暗澹たる夜空は、多く鳥目のリト族にとっては憂鬱なるものだが、リーバルにとってはそうではない。
正確には、リーバルのよく知るリトの戦士にとっては、だ。
その男は、夜の青い闇を指して美しいとさえ言う。そのことを聞くとき、リーバルは胸のあたりがうずくような感覚を覚える。苦々しいものと心地よいものと、行き来するような不思議で落ち着かない心地がするのだ。
飛行訓練場のバルコニーから、リーバルは暗い夜空を見上げて、ふっとそんな男の言った言葉を思い出していた。
『リーバル様の翼は夜の色に似ています』
リーバルは夜がどんな色をしているのか知らない。けれどそんな見えない夜が、美しい色をしているらしいことは、その男の言うとおりに信じていた。
31632正確には、リーバルのよく知るリトの戦士にとっては、だ。
その男は、夜の青い闇を指して美しいとさえ言う。そのことを聞くとき、リーバルは胸のあたりがうずくような感覚を覚える。苦々しいものと心地よいものと、行き来するような不思議で落ち着かない心地がするのだ。
飛行訓練場のバルコニーから、リーバルは暗い夜空を見上げて、ふっとそんな男の言った言葉を思い出していた。
『リーバル様の翼は夜の色に似ています』
リーバルは夜がどんな色をしているのか知らない。けれどそんな見えない夜が、美しい色をしているらしいことは、その男の言うとおりに信じていた。
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DOODLEpixivより引っ越し。リト師弟がリトの仲間からかわいがられている話。 「末っ子が他所ん家の末っ子相手に兄貴風吹かしていやがる!」 リトの村の文化に多大な捏造があります。モブ戦士たちがよく喋る。末っ子誰だリト師弟がリトの仲間からかわいがられている話。
厄災の黙示録メインストーリー7章2節ハイラル城奪還戦までの間のモラトリアム期間のゆるい日常の幻覚。
※リトの村の文化に多大な捏造があります。
※モブ戦士が良く喋る。
厄災の黙示録メインストーリー7章2節ハイラル城奪還戦までの間のモラトリアム期間のゆるい日常の幻覚。
※リトの村の文化に多大な捏造があります。
※モブ戦士が良く喋る。
ひょんなことで伝説に聞く100年前の過去の世界にやってきてからというものの、リトの戦士テバは大きく二つの悩みを抱えていた。
その悩みの一つは、ずばり“[[rb:飯 > めし]]を食べ過ぎていること”である。
テバは戦士であるから、もちろん身体は第一の資本だ。身体づくりのため日々の食事には気をつけている。基本は一日三食、好き嫌いはせずに肉野菜に穀物をバランスよく食べるし水分だって欠かさない。もちろん暴飲暴食などご法度だ。
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DOODLEpixivより引っ越し。雪の日のリト師弟と白い羽毛の話。かくれ雪 はあっとリーバルは嘴の隙間から白い息を吐いて、ごうごうと唸り声のする外の景色を覗き込んだ。
「吹雪いてるねえ」
万年氷漬けの雪山にある飛行訓練場は、今日はとびきりの猛吹雪に遭っていた。ごうごう聞こえるのはその吹雪の音だ。おかげで朝だというのに火を焚かなくては中も外も何も見えないほど薄暗い。リーバルたちリト族は翼に蹴爪に嘴と、鳥のような見た目と同じに[[rb:鳥 > ・]][[rb:目 > ・]]を持っているので、さらに弱り目だ。気分もふさいでしまう。
「これは当分止まないぞ……今日は任務に出るのは厳しそうだ。テバの奴、ちゃんと帰ってこられるかな」
同居人のテバは明朝に雲行きの怪しさを見て、薪の確保をすると言って出て行ったきりまだ帰っていない。まだ備蓄があるから大丈夫だとリーバルは言ったのだが、テバは「ここらの空気がどんより重たくって、うなじの毛がふわふわするようなこういう天気のときは、後でどっさり雪がくる予兆に決まっているんです」と言って籠もりの準備をするのを譲らなかった。未来の世界で飛行訓練場の[[rb:ヌ > ・]][[rb:シ > ・]]をやっている経験と勘がそう教えてくれるらしい。そのときは吹雪がこれほど強くなるとは知らなかったから、リーバルも止めそこなってしまった。今の[[rb:ヌ > ・]][[rb:シ > ・]]であるリーバルはそんな予兆は感じ取れなかったし、テバの言うことにも半信半疑だったのだが、眼前の吹雪はテバの勘の方が正しかったことを容赦なく突きつけてくる。
7597「吹雪いてるねえ」
万年氷漬けの雪山にある飛行訓練場は、今日はとびきりの猛吹雪に遭っていた。ごうごう聞こえるのはその吹雪の音だ。おかげで朝だというのに火を焚かなくては中も外も何も見えないほど薄暗い。リーバルたちリト族は翼に蹴爪に嘴と、鳥のような見た目と同じに[[rb:鳥 > ・]][[rb:目 > ・]]を持っているので、さらに弱り目だ。気分もふさいでしまう。
「これは当分止まないぞ……今日は任務に出るのは厳しそうだ。テバの奴、ちゃんと帰ってこられるかな」
同居人のテバは明朝に雲行きの怪しさを見て、薪の確保をすると言って出て行ったきりまだ帰っていない。まだ備蓄があるから大丈夫だとリーバルは言ったのだが、テバは「ここらの空気がどんより重たくって、うなじの毛がふわふわするようなこういう天気のときは、後でどっさり雪がくる予兆に決まっているんです」と言って籠もりの準備をするのを譲らなかった。未来の世界で飛行訓練場の[[rb:ヌ > ・]][[rb:シ > ・]]をやっている経験と勘がそう教えてくれるらしい。そのときは吹雪がこれほど強くなるとは知らなかったから、リーバルも止めそこなってしまった。今の[[rb:ヌ > ・]][[rb:シ > ・]]であるリーバルはそんな予兆は感じ取れなかったし、テバの言うことにも半信半疑だったのだが、眼前の吹雪はテバの勘の方が正しかったことを容赦なく突きつけてくる。
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DOODLEpixivより引っ越し。リト師弟が飛行訓練場でなんやかやする話。やくもく5章、ハイラル西部救援戦語の神獣戦闘(ヴァ・メドー)が終わった辺りの時間軸。
帰巣の風 雪道をゆく影二つ。ハイラル北西の雪山へブラの麓は今日も今日とて重く雪の舞うなか、日も入り近くでようく冷え込んでくる頃に笠の一つ、上着の一つも無くようようと歩いていける人影は、正気を疑う武者修行の阿呆か、痛みを知らない魔物のどれか、というのはハイラルを旅する者の心得だ。一寸先が白の闇、息も凍る寒さのヘブラで出会うには、どちらも関わり合うことなかれが安全の秘訣である。
しかし、この度の影はどちらの例にも違っていた。
歩いているものの影は魔物というよりも、人というよりも、鳥のすがたをしていた。頭はとさかに嘴、足元は尾羽に蹴爪と、両の肩からは大きな翼が伸びて、羽先が手指のように弓を持っている。
今にも羽ばたいて空へ飛んでいけそうな鳥であり、大地に生きる人でもある生き物。
22698しかし、この度の影はどちらの例にも違っていた。
歩いているものの影は魔物というよりも、人というよりも、鳥のすがたをしていた。頭はとさかに嘴、足元は尾羽に蹴爪と、両の肩からは大きな翼が伸びて、羽先が手指のように弓を持っている。
今にも羽ばたいて空へ飛んでいけそうな鳥であり、大地に生きる人でもある生き物。
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DOODLEpixivより引っ越し。やくもく5章、神獣から生き延びたリーバルが夢を見る話。「雪よりも月よりも白いのは、夜を明けさせる朝日の光だ 」
※厄災の黙示録メインストーリー5章以降のネタバレがあります。
黎明を追う鳥 目蓋の裏から赤い暗闇が見えている。
おや、自分の目蓋のなかを流れる血の色かと思って目を開けると、もっと赤が濃くなる。
目に映るのは黒いばっかりの闇なのだけれど、どうしてかリーバルの脳裏では「赤い」と言う声がするのだ。
赤くて暗い。そんな言葉でしか言い様の無い、ぽっかり心細い暗闇だった。
目と頭で、見ている色もちぐはぐに感じてしまうのは、自分が夜盲のせいなのか。
リーバルは意味を為さないまばたきで自分の鳥目を皮肉った。
リーバルは暗闇がよく見えない。彼がリト族であるせいだ。鳥が翼と嘴を持ったまま人間の知恵と力を手に入れたらこんな姿になるだろう、という見た目をしているリト族は、ハイラルで唯一、空を自由に羽ばたく代わりに、夜を出歩くことがからっきし出来ないのだ。
28356おや、自分の目蓋のなかを流れる血の色かと思って目を開けると、もっと赤が濃くなる。
目に映るのは黒いばっかりの闇なのだけれど、どうしてかリーバルの脳裏では「赤い」と言う声がするのだ。
赤くて暗い。そんな言葉でしか言い様の無い、ぽっかり心細い暗闇だった。
目と頭で、見ている色もちぐはぐに感じてしまうのは、自分が夜盲のせいなのか。
リーバルは意味を為さないまばたきで自分の鳥目を皮肉った。
リーバルは暗闇がよく見えない。彼がリト族であるせいだ。鳥が翼と嘴を持ったまま人間の知恵と力を手に入れたらこんな姿になるだろう、という見た目をしているリト族は、ハイラルで唯一、空を自由に羽ばたく代わりに、夜を出歩くことがからっきし出来ないのだ。
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DOODLEpixivより引っ越し。ヘブラの若大将リーバルがビタロックファンサで大勝利する話。「見せつけるために振り向いてやるし、見てやるために振り返ってあげるんだ」
※捏造200%※やくもく発売前の幻覚
ビタロック寸話 1.ヘブラの疾風
───疾風が戦場を駆ける。
ヘブラ山脈とハイラル平原とをつなぐタバンタ渓谷で起こった、魔物の一斉蜂起。此度は平原西の農耕集落に火を放たれたことによって始まった戦争は、すぐさまヘブラの勇猛なる戦士たちに伝えられ、半刻の内に入り組んだ渓谷とそこを通るこれまた入り組んだ街道が戦場となった。
深いタバンタの渓谷に轟々と戦の喊声が響いては谷底へ落ちる。
濁声を上げながら占拠した集落からじわじわ街道を登って攻め入る魔物の大群と、道を封鎖して陣を組み敵を待ち構えて防衛する人間の大軍。
両軍が隘路にて衝突し敵味方が入り乱れて煩雑としたその戦場に、疾風が駆けていた。
通りすぎた道上の全てを切り裂くような鋭い風が、凄まじい速度でタバンタの渓谷に吹き荒れる。
33008───疾風が戦場を駆ける。
ヘブラ山脈とハイラル平原とをつなぐタバンタ渓谷で起こった、魔物の一斉蜂起。此度は平原西の農耕集落に火を放たれたことによって始まった戦争は、すぐさまヘブラの勇猛なる戦士たちに伝えられ、半刻の内に入り組んだ渓谷とそこを通るこれまた入り組んだ街道が戦場となった。
深いタバンタの渓谷に轟々と戦の喊声が響いては谷底へ落ちる。
濁声を上げながら占拠した集落からじわじわ街道を登って攻め入る魔物の大群と、道を封鎖して陣を組み敵を待ち構えて防衛する人間の大軍。
両軍が隘路にて衝突し敵味方が入り乱れて煩雑としたその戦場に、疾風が駆けていた。
通りすぎた道上の全てを切り裂くような鋭い風が、凄まじい速度でタバンタの渓谷に吹き荒れる。
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DOODLEpixivより引っ越し。あたらよのあけがらす。夜を一緒に飛んでいけたらいいね。という約束の話。※メドーとリーバルに相棒してほしかった夢の跡。やくもく記念の供養そのに。
※捏造200%※厄災復活前のいつか
可惜夜の明烏【彼に夜を贈った記録】
「一緒に夜空を飛んで行きたい」と願った。
「一緒に夜空を飛んで行こう」と交わした。
[[rb:嘴 > くちばし]]の先端から声がする。すごい!と叫ぶのは夜空に向けた感嘆の声だった。雲の上のそのまた上、呼吸すら薄くなる高空の中を悠々と飛ぶ巨大な機械の鳥は、嘴の先に一人の人間を乗せていた。機械の鳥はほんの少し頭を上に傾けていて、その嘴の先端は今まさに世界で最も高い天辺に位置する唯一の場所だった。
そんな世界のてっぺんを独占して立っているのは、機械の鳥の爪の先ほども無い小さな人間だ。夜明けの藍色を朱い朝日で少し焼いたような[[rb:群青 > ぐんじょう]]の髪と同じく群青の“[[rb:翼 > つばさ]]”と、目の縁に紅をさした[[rb:翡翠 > ひすい]]の[[rb:瞳 > ひとみ]]、それからべっ甲みたいな飴色の“[[rb:嘴 > くちばし]]”をしている。
9219「一緒に夜空を飛んで行きたい」と願った。
「一緒に夜空を飛んで行こう」と交わした。
[[rb:嘴 > くちばし]]の先端から声がする。すごい!と叫ぶのは夜空に向けた感嘆の声だった。雲の上のそのまた上、呼吸すら薄くなる高空の中を悠々と飛ぶ巨大な機械の鳥は、嘴の先に一人の人間を乗せていた。機械の鳥はほんの少し頭を上に傾けていて、その嘴の先端は今まさに世界で最も高い天辺に位置する唯一の場所だった。
そんな世界のてっぺんを独占して立っているのは、機械の鳥の爪の先ほども無い小さな人間だ。夜明けの藍色を朱い朝日で少し焼いたような[[rb:群青 > ぐんじょう]]の髪と同じく群青の“[[rb:翼 > つばさ]]”と、目の縁に紅をさした[[rb:翡翠 > ひすい]]の[[rb:瞳 > ひとみ]]、それからべっ甲みたいな飴色の“[[rb:嘴 > くちばし]]”をしている。
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DOODLEpixivより引っ越し。リーバルがミファーに約束する話。この勇者はトルネードの便利さに取りつかれて真っ先にリトにやって来た2周目勇者。
飛んでいったスケーリーフット◇
──まったく貝のような奴だ。こじ開けてもいいが、苦労に見合う中身があったものか分からない。空を飛ぶ小鳥を眺めていた方が幾分か有意義だろう。どうせ地べたに転がっているものなら空の支配者に敵う筈もない。と、英傑リーバルは近衛騎士を評した。
◇
某日、ハイラル城下町から徒歩でしばらくのハイラル式典場にて。
ゴロンの英傑の提案で、古の儀式の真似事に英傑一同が会した。連日古代兵器の研究に忙しい姫は慌てて覚えた儀式の祝詞もたどたどしく、黙って跪いているイケ好かない騎士との絵面だけが粛然としていた。公務のために城へ戻る姫に騎士が付き添って広場を離れ、残された英傑たちは各々散開することとなった。
姫と騎士を追って城下町へ戻る者も居れば、とっとと住み処まで帰る者も居る。自分はと言えば、日暮れも近くなり、タバンタまで飛んで帰るのは危ぶまれる為に城下町まで戻るか、鍛練ついでに野宿でもするかと思案して、式典場に留まっていた。
3206──まったく貝のような奴だ。こじ開けてもいいが、苦労に見合う中身があったものか分からない。空を飛ぶ小鳥を眺めていた方が幾分か有意義だろう。どうせ地べたに転がっているものなら空の支配者に敵う筈もない。と、英傑リーバルは近衛騎士を評した。
◇
某日、ハイラル城下町から徒歩でしばらくのハイラル式典場にて。
ゴロンの英傑の提案で、古の儀式の真似事に英傑一同が会した。連日古代兵器の研究に忙しい姫は慌てて覚えた儀式の祝詞もたどたどしく、黙って跪いているイケ好かない騎士との絵面だけが粛然としていた。公務のために城へ戻る姫に騎士が付き添って広場を離れ、残された英傑たちは各々散開することとなった。
姫と騎士を追って城下町へ戻る者も居れば、とっとと住み処まで帰る者も居る。自分はと言えば、日暮れも近くなり、タバンタまで飛んで帰るのは危ぶまれる為に城下町まで戻るか、鍛練ついでに野宿でもするかと思案して、式典場に留まっていた。
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DOODLEpixivより引っ越し。迷える勇者にカッシーワが宮廷詩人の師匠について語る話。「青い鳥は詠うだろう。紅い月夜にも輝き続け、ただ一人の行く道を照らす星に」
※捏造200%※メドーは解放された後~厄災を倒す前のどこか。
ある詩人の事情
◇
彼は詩を紡ぐ。
届かぬことを知っていても。足りないことを知っていても。必要さえないことを知っていても。
想いを刻み付ける術をそれしか知らない。思いを捧げる術をそれしか知らない。
伸ばした手を、途中で止めてしまった心の裏側を理解する術を、それしか知らない。
彼は詩を詠う。
きっと、それこそに意味があると知っていた。
きっと、それが愛だったと知っていた。
彼は詩を紡ぐ。
届かぬことを知っていても。足りないことを知っていても。必要さえないことを知っていても。
想いを刻み付ける術をそれしか知らない。思いを捧げる術をそれしか知らない。
伸ばした手を、途中で止めてしまった心の裏側を理解する術を、それしか知らない。
彼は詩を詠う。
きっと、それこそに意味があると知っていた。
きっと、それが愛だったと知っていた。
◇
──1枚の絵を見つけた。それが私の命の末路を決めた。
いつも美しくも悲壮な覚悟を背負っていたあの人が、まるで少女らしく朋友たちと過ごしている様子が描かれた、唯一無二の絵だ。何もかもが戦禍の灰と消えてしまった王宮で、唯一その炎を逃れ残った亡国の姫君の絵姿。在りし日の日常の絵画。
12752──1枚の絵を見つけた。それが私の命の末路を決めた。
いつも美しくも悲壮な覚悟を背負っていたあの人が、まるで少女らしく朋友たちと過ごしている様子が描かれた、唯一無二の絵だ。何もかもが戦禍の灰と消えてしまった王宮で、唯一その炎を逃れ残った亡国の姫君の絵姿。在りし日の日常の絵画。
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DOODLEpixivより引っ越し。カッシーワとテバが旅に出たい話。古いものなので拙いのはご容赦を。※捏造設定200%※クリア後時間軸
うたう鳥と弓引く鳥◇
──本当は思い出す予定なんてさらさら無かったのだ、ガキの頃の青臭い夢なんて。ただ聴こえてくる詩があんまりにも綺麗な世界を語るものだから、欲が出てしまった。広い世界を見てみたくなってしまった。
俺が無茶をやらかしてハーツが怪我を負い、あの英傑の末裔殿のおかげでメドーが大人しくなってからしばらくして村に歌が響くようになった。初めはあの賑やかな五つ子がまた何かおっぱじめたのかと思っていたがどうもそれだけでは無いらしい。
飛行訓練場から戻りサキに頼まれていた買い物を済ませて家に帰ろうとすると、いつも五つ子たちが歌を練習している広場に見慣れない人影が増えていた。日が沈み茜色に羽毛を染めた子供たちがきゃあきゃあ騒ぎながら足元をわらわらと通り過ぎていくがその人影は動かない。誰だっただろうかとぼんやり考えていると不躾な視線に気付いたのか人影がこちらを振り向いた。
9346──本当は思い出す予定なんてさらさら無かったのだ、ガキの頃の青臭い夢なんて。ただ聴こえてくる詩があんまりにも綺麗な世界を語るものだから、欲が出てしまった。広い世界を見てみたくなってしまった。
俺が無茶をやらかしてハーツが怪我を負い、あの英傑の末裔殿のおかげでメドーが大人しくなってからしばらくして村に歌が響くようになった。初めはあの賑やかな五つ子がまた何かおっぱじめたのかと思っていたがどうもそれだけでは無いらしい。
飛行訓練場から戻りサキに頼まれていた買い物を済ませて家に帰ろうとすると、いつも五つ子たちが歌を練習している広場に見慣れない人影が増えていた。日が沈み茜色に羽毛を染めた子供たちがきゃあきゃあ騒ぎながら足元をわらわらと通り過ぎていくがその人影は動かない。誰だっただろうかとぼんやり考えていると不躾な視線に気付いたのか人影がこちらを振り向いた。
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DOODLEpixivより引っ越し。不思議な夢を見た姫様と、彼女におまじないをかけてやるリーバルの話。青い鳥は敵を打ち砕く力を得たけれど、それでも、彼女を守る役目はあの人間のものだと知っていた。
※捏造200%※時間軸としてはラネールでの修行よりは前のどこか
群青色の姫君 目を開けると、空の中だった。雲の上にいながらさらに上にも雲がある。地上を探しても広がるは青色ばかり。もしかしたら海かもしれない、と目を凝らしたが、潮騒は聞こえず、さざ波も見えない。足はつかず、頭もつかず。ふうわりと水の中にいるようで、呼吸は楽だった。穏やかに金の髪を揺らす風だけが、慣れ親しんだ気配を残していた。
いつもの夢ではないのだろうか。
暗闇の中で手を伸ばしても届かない光が焦らすように明滅する夢。
見ても気分がいいとは言えない夢の内容を思い出してうつむきかけたとき、澄んだ鈴の音のような声が聞こえた。
「あら……お客さん?」
体ごとよじって振り返ると空の中に一人の女性が立っていた。
金の髪。自分と違って真っ直ぐに切り揃えられた前髪が下りている。
7126いつもの夢ではないのだろうか。
暗闇の中で手を伸ばしても届かない光が焦らすように明滅する夢。
見ても気分がいいとは言えない夢の内容を思い出してうつむきかけたとき、澄んだ鈴の音のような声が聞こえた。
「あら……お客さん?」
体ごとよじって振り返ると空の中に一人の女性が立っていた。
金の髪。自分と違って真っ直ぐに切り揃えられた前髪が下りている。
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DOODLEpixivより引っ越し。「とりあえずサインください」原作リト師弟が出会う話エピローグ。
リトの戦士の話エピローグ◇
あれから。嵐を乗りこなす一夜を明かしてから。
謹慎明けの最初の朝、テバが行ったのは探し物だった。神獣にぶつからない程度に高く飛んで、上から順に蟻の子一匹見逃さない視線の鋭さで、空を射抜いて落ちた筈の矢を探した。流石に龍の角を切り出し特別に誂えた矢とはいえ、見つかったのは欠片だけだった。
その欠片が今は、テバの白い羽毛に紛れるように首元で揺れている。
普段、装飾に無頓着なテバがアクセサリーを作れと言ったものだから、ハーツにも防具屋のネックにも、やれ熱があるのか、やれ明日は槍が降るだの大層な口振りだった。長い付き合いでも失礼すぎるというもの。
その後、始終を話したサキにまで「嵐の時に、誰か別の人と入れ替わったんじゃありませんよね」と言われたテバがこれからはもう少し身なりに拘りを持とう、とチクチク痛む胸に決意を固めるのは、また別の話である。
2469あれから。嵐を乗りこなす一夜を明かしてから。
謹慎明けの最初の朝、テバが行ったのは探し物だった。神獣にぶつからない程度に高く飛んで、上から順に蟻の子一匹見逃さない視線の鋭さで、空を射抜いて落ちた筈の矢を探した。流石に龍の角を切り出し特別に誂えた矢とはいえ、見つかったのは欠片だけだった。
その欠片が今は、テバの白い羽毛に紛れるように首元で揺れている。
普段、装飾に無頓着なテバがアクセサリーを作れと言ったものだから、ハーツにも防具屋のネックにも、やれ熱があるのか、やれ明日は槍が降るだの大層な口振りだった。長い付き合いでも失礼すぎるというもの。
その後、始終を話したサキにまで「嵐の時に、誰か別の人と入れ替わったんじゃありませんよね」と言われたテバがこれからはもう少し身なりに拘りを持とう、とチクチク痛む胸に決意を固めるのは、また別の話である。
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DOODLEpixivより引っ越し。原作リト師弟が出会う話後編。「浴びるは称賛、仰ぐは空。意にかけるは己のみ。その英雄サマを引っ張り出せたんだ。目に留まる程度には見込みがあるってことだろう?上々だ」
リーバルとテバに師弟してほしかった夢の跡。
リトの戦士は生意気である 後編諸注意
※捏造200パーセント。
※キャラも設定もふわふわしてる。正気を失って読んでください。
※リトの戦士達で師弟してほしい願望だけでできています。
※捏造200パーセント。
※キャラも設定もふわふわしてる。正気を失って読んでください。
※リトの戦士達で師弟してほしい願望だけでできています。
◇
「運命なんかに捕まるはずもないと思っていたけれど、これが中々。一つ進めば右と左がひっくり返るような有り様だ。飛べども翔べども風が肺をねじ切り、空気の膜がゆるりと頭をうだらせる。──光を見ただろ。空を裂き、海に溶け落ちる永遠さ。不思議と思うか、悪夢と思うか、どっちにしろ女神は微笑んだままなんだよ」
そういって、若い戦士は弓を手に取りチラチラと燃える火に斜めに横に透かしてニッと笑う。幾何学的な模様が月明かりに光った。
彼が知る限り、気取った様子を崩したことのない屁理屈屋はいつでもこの調子。
39619「運命なんかに捕まるはずもないと思っていたけれど、これが中々。一つ進めば右と左がひっくり返るような有り様だ。飛べども翔べども風が肺をねじ切り、空気の膜がゆるりと頭をうだらせる。──光を見ただろ。空を裂き、海に溶け落ちる永遠さ。不思議と思うか、悪夢と思うか、どっちにしろ女神は微笑んだままなんだよ」
そういって、若い戦士は弓を手に取りチラチラと燃える火に斜めに横に透かしてニッと笑う。幾何学的な模様が月明かりに光った。
彼が知る限り、気取った様子を崩したことのない屁理屈屋はいつでもこの調子。