ssaw
DONE失恋の後に両思いがある侑佐久sweet after bitter「侑、失恋してすっかり落ち込んでるからさ。お前次の休みとかちょっとどっかに連れ出してやってよ」
ある日の練習終わり、周囲に人気がないのを確認して犬鳴さんが俺にそう耳打ちした。
「……は」
「お前らが意外と仲良いの俺知ってんだから。ちゃんと優しくしてやって」
ぽんと背中を軽く叩き、それだけ言って彼はロッカールームへと去って行った。その背中を見送って、今かけられた言葉の意味をもう一度考える。
――宮が、失恋した。
犬鳴さんは俺が当然にそのことを知っていると思って声をかけてきた様子だった。からかっているわけじゃない、本気で後輩を心配していたのだということは短い会話の中でもしっかりとわかった。
「あれ、臣くん。こんなとこでぼーっとしてどしたん」
6672ある日の練習終わり、周囲に人気がないのを確認して犬鳴さんが俺にそう耳打ちした。
「……は」
「お前らが意外と仲良いの俺知ってんだから。ちゃんと優しくしてやって」
ぽんと背中を軽く叩き、それだけ言って彼はロッカールームへと去って行った。その背中を見送って、今かけられた言葉の意味をもう一度考える。
――宮が、失恋した。
犬鳴さんは俺が当然にそのことを知っていると思って声をかけてきた様子だった。からかっているわけじゃない、本気で後輩を心配していたのだということは短い会話の中でもしっかりとわかった。
「あれ、臣くん。こんなとこでぼーっとしてどしたん」
ssaw
DONE年末年始の侑佐久※少しだけ元カノへの言及がある
Re:Re:「今日寒いし鍋でもしない?」
今年最後の練習終わり、一緒に更衣室を出たところで臣くんが小さな声でそう言った。べつにありきたりな夕食の提案だというのはわかっているのに、その聞き方がなんだか内緒話をしているようだと思った。
「ええやん。何鍋にする?」
「白菜と豚バラで重ねるやつは?」
「あれ美味そうやんな。作ったことないんやけど臣くんある?」
「大学の時元カノがよく作ってくれてた」
「ええ〜ここで元カノの話は嫉妬してまう」
「嘘つけ。お前もするくせに」
「それはそう」
「サンディと万代どっち?」
「俺クーポン持っとるから万代にしよ」
「オッケー」
そんな会話をしてそれぞれの車に乗り込む。
ひとりになった運転席で、俺はたった今された会話を反芻する。
6625今年最後の練習終わり、一緒に更衣室を出たところで臣くんが小さな声でそう言った。べつにありきたりな夕食の提案だというのはわかっているのに、その聞き方がなんだか内緒話をしているようだと思った。
「ええやん。何鍋にする?」
「白菜と豚バラで重ねるやつは?」
「あれ美味そうやんな。作ったことないんやけど臣くんある?」
「大学の時元カノがよく作ってくれてた」
「ええ〜ここで元カノの話は嫉妬してまう」
「嘘つけ。お前もするくせに」
「それはそう」
「サンディと万代どっち?」
「俺クーポン持っとるから万代にしよ」
「オッケー」
そんな会話をしてそれぞれの車に乗り込む。
ひとりになった運転席で、俺はたった今された会話を反芻する。
ssaw
DOODLE侑佐久ファーストラブ キスをしたいって、これまでの人生で一度も思ったことがない。生理現象として対処が必要な性欲とも違い、他人とわざわざ病原菌を伝染し合うリスクを孕みながら唾液を交換する意味がわからない。吐息とか気にしながら唇を押し当てるだけの行為も無意味だ。
相手のことが好きだからするというのであれば、そんなことをしなくても充分に好意は伝えられると思う。
だから俺は一度も、侑とキスをしたことがなかった。
侑と付き合ってもうすぐ3ヶ月になる。お互いに好きであることはちゃんと知っていて、恋人同士としての関係は良好であると思う。俺が付き合う前に最初に「キスはしたくない」と告げたから、これまでに侑の方からキスを求められたことは一度もない。
2607相手のことが好きだからするというのであれば、そんなことをしなくても充分に好意は伝えられると思う。
だから俺は一度も、侑とキスをしたことがなかった。
侑と付き合ってもうすぐ3ヶ月になる。お互いに好きであることはちゃんと知っていて、恋人同士としての関係は良好であると思う。俺が付き合う前に最初に「キスはしたくない」と告げたから、これまでに侑の方からキスを求められたことは一度もない。
ssaw
DOODLE侑佐久am 03:21「……ったあ!?」
いきなり腹に結構な衝撃を食らい、侑は驚きに目を覚ました。枕元に放り出した携帯で時間を確認すると、まだ午前3時21分。夜中も夜中、普段ならぐっすり夢の中を堪能している時間だというのに。
寝覚めの目には刺激の強いブルーライトが隣に眠る人の寝顔を照らし出す。
なんだか変な夢でも見ているのか、眉間にはいつもはない皺が寄っている。
「……ちょっとお、足癖悪すぎん?」
容赦なく侑の腹の上に被さる重たい足をそっと持ち上げて、侑は小さな声でバイオレンスな寝相の犯人に苦言を呈す。
「〜〜〜〜だから」
すると、侑の声に反応して聖臣がなんだかよくわからない言葉を返してよこした。寝言特有の全然聞き取れない謎言語だが、かろうじてなんか怒ってることだけはわかる。
1845いきなり腹に結構な衝撃を食らい、侑は驚きに目を覚ました。枕元に放り出した携帯で時間を確認すると、まだ午前3時21分。夜中も夜中、普段ならぐっすり夢の中を堪能している時間だというのに。
寝覚めの目には刺激の強いブルーライトが隣に眠る人の寝顔を照らし出す。
なんだか変な夢でも見ているのか、眉間にはいつもはない皺が寄っている。
「……ちょっとお、足癖悪すぎん?」
容赦なく侑の腹の上に被さる重たい足をそっと持ち上げて、侑は小さな声でバイオレンスな寝相の犯人に苦言を呈す。
「〜〜〜〜だから」
すると、侑の声に反応して聖臣がなんだかよくわからない言葉を返してよこした。寝言特有の全然聞き取れない謎言語だが、かろうじてなんか怒ってることだけはわかる。
ssaw
DONE宮選手と佐久早選手の結婚を受けてバレーボール協会の企画動画を作ろうと黒尾さんが大阪へやってくる!侑佐久第三者視点シリーズ第③ 黒尾くん🐈⬛
【結婚おめでとう】宮&佐久早のパートナー理解度クイズ #バレーボール男子 オリンピックが閉幕しほどなくして、宮侑選手と佐久早聖臣選手の結婚が突然発表された。ついこの間まで数々のドラマティックな試合を戦い抜き世間を白熱させていた選手同士の結婚に、日本だけでなく世界中からリアクションがあった。
黒尾はというと、なんだかんだふたりとは数年来の知り合いであるというのにその発表までこれっぽっちも関係に気がついていなかった。職場で上司に言われた「ミヤアツとサクサ結婚したってね。知ってた?」の言葉に最初、誰と誰のことか一瞬理解が追いつかずフリーズしてしまったほどである。
黒尾にとって、宮と佐久早は旧友である木兎のチームメイトであるというのもあり、その活躍を見る機会は数いる選手たちの中でもかなり多い方だったように思う。佐久早にいたっては高校・大学時代と何度も戦っては苦杯を喫してきた相手でもある。
11020黒尾はというと、なんだかんだふたりとは数年来の知り合いであるというのにその発表までこれっぽっちも関係に気がついていなかった。職場で上司に言われた「ミヤアツとサクサ結婚したってね。知ってた?」の言葉に最初、誰と誰のことか一瞬理解が追いつかずフリーズしてしまったほどである。
黒尾にとって、宮と佐久早は旧友である木兎のチームメイトであるというのもあり、その活躍を見る機会は数いる選手たちの中でもかなり多い方だったように思う。佐久早にいたっては高校・大学時代と何度も戦っては苦杯を喫してきた相手でもある。
ssaw
DONE臣くんのお姉ちゃん視点の侑佐久。※臣くんの家族のお名前を捏造している
帰省してきた弟が実家に恋人を呼びつけた「ちいさ……」
初めて会った姪の顔を見るなり、弟はそう言って固まってしまった。
夏が始まりかけた深緑の季節、一時的に実家に帰省している私に合わせ大阪にいる弟が姪に初対面するべく帰ってきた。
兄弟でそっくりと幼い頃からよく言われ続けてきた真っ黒い瞳が困惑げに私の腕の中ですぴすぴ眠る存在を見つめている。
「抱っこする?」
「いい、大丈夫」
相変わらず慎重で心配性な弟は、限りなくひそめた声で首を横に振った。
「なんか、意外とちゃんと似てるってわかるんだ」
「ね。今寝てるからわかんないけど目開くと私に似てるってすごい言われる」
「口とか鼻は匠くんっぽいね」
聖臣はまじまじと興味深そうに娘の顔を覗き込むが、それでも決して触ろうとしないあたりが彼らしい。
8635初めて会った姪の顔を見るなり、弟はそう言って固まってしまった。
夏が始まりかけた深緑の季節、一時的に実家に帰省している私に合わせ大阪にいる弟が姪に初対面するべく帰ってきた。
兄弟でそっくりと幼い頃からよく言われ続けてきた真っ黒い瞳が困惑げに私の腕の中ですぴすぴ眠る存在を見つめている。
「抱っこする?」
「いい、大丈夫」
相変わらず慎重で心配性な弟は、限りなくひそめた声で首を横に振った。
「なんか、意外とちゃんと似てるってわかるんだ」
「ね。今寝てるからわかんないけど目開くと私に似てるってすごい言われる」
「口とか鼻は匠くんっぽいね」
聖臣はまじまじと興味深そうに娘の顔を覗き込むが、それでも決して触ろうとしないあたりが彼らしい。
ssaw
DONE侑佐久侑のリアコオタが侑佐久の結婚発表に失恋する話
あなたを好きなことは私の自慢だった 昼休みに開いたSNSで推しの結婚を知った。
宮侑、男子バレー全日本代表にも選出された超優秀なセッター。私の生きがいであり、支えであり、好きな人である自慢の推し。その人が今日、入籍をしたらしい。お相手はかねてよりお付き合いしていたという同じ実業団に所属する佐久早聖臣選手。
「パートナーとしてこれから先もずっと支え合い、共に生きていきたいと思います。」
ファンや関係者への感謝と共に綴られた短い文章を、信じられない思いで何回も読み返した。何かのドッキリであってほしいと願う気持ちを、ふたりの手書きの署名が粉々に打ち砕いていく。心臓がバクバクと鳴って、スマホを握る手に尋常じゃないほど汗が浮かぶ。
目をつぶって深呼吸をしもう一度SNSを開けば、ふたりの結婚を驚き寿ぐネットニュースの見出しがいくつも並んでいた。おそるおそる、検索から侑のアカウントに飛ぶ。先ほど見た報告文の白い画像、そうして今、ちょうどもうひとつ新しい投稿が追加されたところであった。指が勝手に投稿された写真を押してしまう。侑が写真を投稿したら音速で拡大して見てしまうのは、もう癖なのだ。何年も何年もそうしてきたから。そして、スマホの画面に大きく映し出された推しの笑顔に今度こそ涙が出た。
4033宮侑、男子バレー全日本代表にも選出された超優秀なセッター。私の生きがいであり、支えであり、好きな人である自慢の推し。その人が今日、入籍をしたらしい。お相手はかねてよりお付き合いしていたという同じ実業団に所属する佐久早聖臣選手。
「パートナーとしてこれから先もずっと支え合い、共に生きていきたいと思います。」
ファンや関係者への感謝と共に綴られた短い文章を、信じられない思いで何回も読み返した。何かのドッキリであってほしいと願う気持ちを、ふたりの手書きの署名が粉々に打ち砕いていく。心臓がバクバクと鳴って、スマホを握る手に尋常じゃないほど汗が浮かぶ。
目をつぶって深呼吸をしもう一度SNSを開けば、ふたりの結婚を驚き寿ぐネットニュースの見出しがいくつも並んでいた。おそるおそる、検索から侑のアカウントに飛ぶ。先ほど見た報告文の白い画像、そうして今、ちょうどもうひとつ新しい投稿が追加されたところであった。指が勝手に投稿された写真を押してしまう。侑が写真を投稿したら音速で拡大して見てしまうのは、もう癖なのだ。何年も何年もそうしてきたから。そして、スマホの画面に大きく映し出された推しの笑顔に今度こそ涙が出た。