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DOODLE #いこみずワンドロワンライ第102回 お題【待ち合わせ】
一番先に彼らを見つけたのは影浦だった。
「あれ、嵐山さんと迅さんと弓場さんじゃね?」
祝日のショッピングモールのフードコートとなれば人は多く、だがそれでも長身だからと言う理由だけからではなく、コーヒースタンドに並ぶ彼らの存在は一際目を引くものだった。
「強いな、存在感が」
「ちゅーか、強いんは顔圧やろ」
そんなやりとりをしている穂刈は野菜とチキンがぎゅうぎゅうにはさまった胚芽玄米のサンドウィッチを、影浦は石焼ビビンバと冷麺のセットを、水上は天かすが乗ったうどん(「言わないのか、たぬきうどんとは」「言わんし」)をと、統一感もなく好きなものをつつきながらだった。
「三門の文字通りツラがいるかんな」
「けどいないじゃないか、一番圧が強そうな人が」
5217「あれ、嵐山さんと迅さんと弓場さんじゃね?」
祝日のショッピングモールのフードコートとなれば人は多く、だがそれでも長身だからと言う理由だけからではなく、コーヒースタンドに並ぶ彼らの存在は一際目を引くものだった。
「強いな、存在感が」
「ちゅーか、強いんは顔圧やろ」
そんなやりとりをしている穂刈は野菜とチキンがぎゅうぎゅうにはさまった胚芽玄米のサンドウィッチを、影浦は石焼ビビンバと冷麺のセットを、水上は天かすが乗ったうどん(「言わないのか、たぬきうどんとは」「言わんし」)をと、統一感もなく好きなものをつつきながらだった。
「三門の文字通りツラがいるかんな」
「けどいないじゃないか、一番圧が強そうな人が」
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DONE2024/01/21 お題『好物』第73回の開催ありがとうございます。久々に参加します。
好物と書いてよきものと読む変則です。
強く儚いきみだから ここやな、と水上が作ってくれた隙に気づいて、生駒は勢いよく駒台の飛車を掴んで盤に打ちおろす。
その時、盤の上に駒が置かれた時とは違う、ペキッと乾いた鈍い音が響いた。
「あ」
驚きの声は生駒と水上、双方から洩れる。
生駒隊作戦室の畳敷の一角に座した足つき盤の上で、飛車の駒が綺麗に真ん中から縦に真っ二つに割れてしまっていた。
「あかーん!」
任務前に指さん?と早めに来ていた二人きりの空間に生駒の声が高らかに響く。そして2つになった駒をそうっと上向けた手のひらの上に置いて、生駒はそれと水上を交互に困り顔で見やる。
うん予想通り、と直後に想像した通りのリアクションに満足そうに頷きながら、水上はめったに拝むことのない駒の断面図をしみじみと眺め入る。
2380その時、盤の上に駒が置かれた時とは違う、ペキッと乾いた鈍い音が響いた。
「あ」
驚きの声は生駒と水上、双方から洩れる。
生駒隊作戦室の畳敷の一角に座した足つき盤の上で、飛車の駒が綺麗に真ん中から縦に真っ二つに割れてしまっていた。
「あかーん!」
任務前に指さん?と早めに来ていた二人きりの空間に生駒の声が高らかに響く。そして2つになった駒をそうっと上向けた手のひらの上に置いて、生駒はそれと水上を交互に困り顔で見やる。
うん予想通り、と直後に想像した通りのリアクションに満足そうに頷きながら、水上はめったに拝むことのない駒の断面図をしみじみと眺め入る。
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MAIKINGいこみずワンドロワンライ40th お題「約束」途中まで!猫が見ていた 行きたいか、と訊かれた。
居合といえど、人殺しの技。だから真剣を使う。
そう言って、父親は伝来の直ぐに樋をかき通した刀の鯉口を切り、三寸ばかり見せたその刀身にちょうど生駒の視線を迎えるようにかざした。
『おまえが7つの頃から持たされたこれは命を断つ為の道具や。例えば誰かを救う為、例えば主の命、例えば己の矜持を守らんが為……どんな言い訳をしようと人を殺め得るゆえのこと。それをなそうとなすまいと。おまえはこれを手にして得た技術で、どうあれ何かの命を斬ることになる。その覚悟は出来てると思うとるか?』
『……それは』
まだ十六の生駒はとっさに答えることが出来なかった。
一年ほど前の春のことだった。三門市という、京都で生まれ育った生駒からしたらあまり聞いたことがない、どこの県にあるのかもとっさに出てこないほどに見知らぬ街はその日、一気に日本国内ばかりか国外にもその名を知らしめることになった。まるで日曜朝の子供番組から抜け出てきたような、異世界からの望まれない来訪者によって。
1336居合といえど、人殺しの技。だから真剣を使う。
そう言って、父親は伝来の直ぐに樋をかき通した刀の鯉口を切り、三寸ばかり見せたその刀身にちょうど生駒の視線を迎えるようにかざした。
『おまえが7つの頃から持たされたこれは命を断つ為の道具や。例えば誰かを救う為、例えば主の命、例えば己の矜持を守らんが為……どんな言い訳をしようと人を殺め得るゆえのこと。それをなそうとなすまいと。おまえはこれを手にして得た技術で、どうあれ何かの命を斬ることになる。その覚悟は出来てると思うとるか?』
『……それは』
まだ十六の生駒はとっさに答えることが出来なかった。
一年ほど前の春のことだった。三門市という、京都で生まれ育った生駒からしたらあまり聞いたことがない、どこの県にあるのかもとっさに出てこないほどに見知らぬ街はその日、一気に日本国内ばかりか国外にもその名を知らしめることになった。まるで日曜朝の子供番組から抜け出てきたような、異世界からの望まれない来訪者によって。