強く儚いきみだから ここやな、と水上が作ってくれた隙に気づいて、生駒は勢いよく駒台の飛車を掴んで盤に打ちおろす。
その時、盤の上に駒が置かれた時とは違う、ペキッと乾いた鈍い音が響いた。
「あ」
驚きの声は生駒と水上、双方から洩れる。
生駒隊作戦室の畳敷の一角に座した足つき盤の上で、飛車の駒が綺麗に真ん中から縦に真っ二つに割れてしまっていた。
「あかーん!」
任務前に指さん?と早めに来ていた二人きりの空間に生駒の声が高らかに響く。そして2つになった駒をそうっと上向けた手のひらの上に置いて、生駒はそれと水上を交互に困り顔で見やる。
うん予想通り、と直後に想像した通りのリアクションに満足そうに頷きながら、水上はめったに拝むことのない駒の断面図をしみじみと眺め入る。
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