紫@🐏
DONE先生と弟子が再会する話。熾火①「下がれ!」
竦んだまま動けぬ少女の肩を掴み、背後へと押し遣る。
その場でへたり込もうとする子供を編纂者である女が抱き上げ、走り出した。
「周辺地域及び住民の安全確保のため、ギルドはテオ・テスカトルの狩猟を要請します!」
「……拝命した」
大剣を背から引き抜き、紅蓮に燃える魔獣を睨み付ければ、灼熱が頬を炙る。初めて対峙する相手を目の前にした時の緊迫だけは、何年が経とうと変わらなかった。
卑小な人間を睥睨する王の双眼には、黄金色の炎が揺らめいている。
「来るよ!」
オトモのニクスの甲高い警戒声を、耳を劈く咆哮が掻き消した。大気をびりびりと震わせる大音声に、僅か足元が崩れる。額を流れ落ちる汗に視界を遮られ、瞬いた――その時。
4756竦んだまま動けぬ少女の肩を掴み、背後へと押し遣る。
その場でへたり込もうとする子供を編纂者である女が抱き上げ、走り出した。
「周辺地域及び住民の安全確保のため、ギルドはテオ・テスカトルの狩猟を要請します!」
「……拝命した」
大剣を背から引き抜き、紅蓮に燃える魔獣を睨み付ければ、灼熱が頬を炙る。初めて対峙する相手を目の前にした時の緊迫だけは、何年が経とうと変わらなかった。
卑小な人間を睥睨する王の双眼には、黄金色の炎が揺らめいている。
「来るよ!」
オトモのニクスの甲高い警戒声を、耳を劈く咆哮が掻き消した。大気をびりびりと震わせる大音声に、僅か足元が崩れる。額を流れ落ちる汗に視界を遮られ、瞬いた――その時。
紫@🐏
DONEうちのハンターと絶賛無自覚片想い中の少年と悩ましいお姉さん。恋は野の鳥「先生……!」
ぱあ、と顔を輝かせた少年は、今日は風音の村に立ち寄っていたはずだった。跳ねるようにセクレトを飛び降りこちらへと駆け寄って、手にした革袋を開いてみせる。
「すごく質のいい蒼雷晶だって、とても喜んでくれました。ひとつおまけしてくれないかお願いしてみたら、ハンターさんのためなら、って」
傍らから覗き込んだ袋の中には乳清が満たされ、丸められた白いチーズが三つ浮かんでいた。
「先生が、お好きだって仰ったから――」
「……それは、気を遣わせたな」
ありがとう、と微笑む男の白い横顔を見上げた少年の頬は、生来のつややかな褐色ゆえに判りづらくはあるが、ほんのりと朱を上らせているようだった。
「疲れただろう。今日は依頼も入っていないし、午後は好きに過ごすといい」
2035ぱあ、と顔を輝かせた少年は、今日は風音の村に立ち寄っていたはずだった。跳ねるようにセクレトを飛び降りこちらへと駆け寄って、手にした革袋を開いてみせる。
「すごく質のいい蒼雷晶だって、とても喜んでくれました。ひとつおまけしてくれないかお願いしてみたら、ハンターさんのためなら、って」
傍らから覗き込んだ袋の中には乳清が満たされ、丸められた白いチーズが三つ浮かんでいた。
「先生が、お好きだって仰ったから――」
「……それは、気を遣わせたな」
ありがとう、と微笑む男の白い横顔を見上げた少年の頬は、生来のつややかな褐色ゆえに判りづらくはあるが、ほんのりと朱を上らせているようだった。
「疲れただろう。今日は依頼も入っていないし、午後は好きに過ごすといい」