そのこ
DOODLEパーンがテオの前に立ちふさがるときの坊。パーン、うっかりレベル上げが足りなかったりして死にがち。
2025ー04ー09
パーンが笑った。ぎこちなく頬を緩め、目を細める。握った拳を僕に突き付け、僕はそれに自らの拳を添えた。
テオ・マクドールの鉄甲騎馬隊は解放軍を蹴散らした。錬度も足りなければ兵の数も叶わない。勢いだけで勝てるほど甘い相手ではなく、勢いぐらいしか優っているものがないから、それをくじかれれば終わりだ。
今は逃げるしかない。いくらそれが難しくても、僕らは、僕は死ぬわけにはいかないのだ。僕が死ねば、何もかも無意味になってしまう。
だから、僕はここでパーンを置いていかざるを得ない。一度は離れ、それでも僕を信じてくれた兄とも慕う人間を、置いていく理由が僕にはあるのだ。
解放軍の兵たちは、僕を見つめている。行くな、と言うべきなのだろうか。そして共に戦う姿を見せるべきなのか。それはできない。皆が逃げるために殿を務める事はできない。だからと言って、何も言わずにパーンを残し、すたこらっさっさともいかないのが面倒なところだ。
1242パーンが笑った。ぎこちなく頬を緩め、目を細める。握った拳を僕に突き付け、僕はそれに自らの拳を添えた。
テオ・マクドールの鉄甲騎馬隊は解放軍を蹴散らした。錬度も足りなければ兵の数も叶わない。勢いだけで勝てるほど甘い相手ではなく、勢いぐらいしか優っているものがないから、それをくじかれれば終わりだ。
今は逃げるしかない。いくらそれが難しくても、僕らは、僕は死ぬわけにはいかないのだ。僕が死ねば、何もかも無意味になってしまう。
だから、僕はここでパーンを置いていかざるを得ない。一度は離れ、それでも僕を信じてくれた兄とも慕う人間を、置いていく理由が僕にはあるのだ。
解放軍の兵たちは、僕を見つめている。行くな、と言うべきなのだろうか。そして共に戦う姿を見せるべきなのか。それはできない。皆が逃げるために殿を務める事はできない。だからと言って、何も言わずにパーンを残し、すたこらっさっさともいかないのが面倒なところだ。
そのこ
DOODLEグレミオの外套なんじゃないか、の話をもう一回。坊ちゃん視点。直して坊ちゃんが使っているとしたらどうかな、って。2025-04-03
両の手で大きく外套を広げた。誰もいない夜の部屋。しんと静かで誰の声もしやしない。これを届けた男ももうとっくに去ってしまって、僕は夜の中一人取り残されている。
似合いもしないのに握りしめていた斧と瞳の色と良く似合う緑の外套。随分前に失った僕のグレミオ。ずっと隠し持っていたくせに、明日死ぬかもしれないから返しに来たなんて笑わせる。
どれだけ腕を持ち上げても、僕の背丈では裾が床についてしまう。菌糸にやられたのか、それとも保管方法が悪かったのか、使い込まれて柔らかな外套にはそこここに穴が開いていた。グレミオならすぐに直してしまうだろうが、僕にその技術はない。
自分が腕を上げた場所よりももう少し上にグレミオの頭はあった気がする。手足ばかりがひょろりと長くて、眉を下げて情けなく笑う。僕を叱る時でさえ、厳めしい顔は出来なかった優しい男。
1309両の手で大きく外套を広げた。誰もいない夜の部屋。しんと静かで誰の声もしやしない。これを届けた男ももうとっくに去ってしまって、僕は夜の中一人取り残されている。
似合いもしないのに握りしめていた斧と瞳の色と良く似合う緑の外套。随分前に失った僕のグレミオ。ずっと隠し持っていたくせに、明日死ぬかもしれないから返しに来たなんて笑わせる。
どれだけ腕を持ち上げても、僕の背丈では裾が床についてしまう。菌糸にやられたのか、それとも保管方法が悪かったのか、使い込まれて柔らかな外套にはそこここに穴が開いていた。グレミオならすぐに直してしまうだろうが、僕にその技術はない。
自分が腕を上げた場所よりももう少し上にグレミオの頭はあった気がする。手足ばかりがひょろりと長くて、眉を下げて情けなく笑う。僕を叱る時でさえ、厳めしい顔は出来なかった優しい男。
そのこ
DOODLE坊ちゃんのマント、グレミオのマントを手直ししたやつとかだといいなって。マリーさんが直してたりすんのかなって。2025-04-02
「マリー、少しいいかな」
仕事の落ち着いた午後の宿、カウンターで拭き掃除をしていたマリーに軍主が声をかけた。ひそめた声、毛羽だった布を大事そうに抱えた姿はまるで悪いことをしているかのようだ。
幸いなことに客はおらず、窓から初秋の穏やかな光が入るばかり。兵のざわめきが時折外から聞こえることを、セキアは少し怖がっているように見えた。
「はいはい。どうしたんだい」
ひとりで宿に来るのは本当に珍しい。マクドールのお坊ちゃんと呼ばれていた頃から知っているが、その時もいつだって誰かと連れ立っていた。今はもう亡い金色の髪の従者が、いつだってそばに居て、なんくれとなく世話を焼く。それがずっと続くと、マリーとて信じていた。
1533「マリー、少しいいかな」
仕事の落ち着いた午後の宿、カウンターで拭き掃除をしていたマリーに軍主が声をかけた。ひそめた声、毛羽だった布を大事そうに抱えた姿はまるで悪いことをしているかのようだ。
幸いなことに客はおらず、窓から初秋の穏やかな光が入るばかり。兵のざわめきが時折外から聞こえることを、セキアは少し怖がっているように見えた。
「はいはい。どうしたんだい」
ひとりで宿に来るのは本当に珍しい。マクドールのお坊ちゃんと呼ばれていた頃から知っているが、その時もいつだって誰かと連れ立っていた。今はもう亡い金色の髪の従者が、いつだってそばに居て、なんくれとなく世話を焼く。それがずっと続くと、マリーとて信じていた。
しん☆
INFOpixivアナログ垢にて幻想水滸伝の坊ちゃんを投稿しました
https://www.pixiv.net/artworks/128631729
色鉛筆メインで描きましたので
いつもと雰囲気違うかも
知らない人だと目に付きにくいのも
あるのですが良かったら見に来てね
版権絵 滅多に描かんのでね
sabasavasabasav
DONEテッドの日おめでとうございます。坊ちゃんとのとある日。紋章に囚われているテッド。
▽
「テッド、狩りに行くんだろう? 僕も連れて行ってくれないか」
「えっ? お前を?」
突拍子もないことを言い出すのは今に始まったことではなかったが、まさかそう言われるとは思わず、テッドはティアを指差し怪訝な表情を浮かべた。
「手助けはできないだろうけど、テッドが狩りをするところが見てみたいんだ。それに、狩りをするなら街の外に出るだろう? 僕、大きくなってからはまだ、この街から出たことないから……外を見てみたい」
ああ、成る程。
街の外に出てみたいという興味なら、ティアの提案にも合点がいく。
心身ともに鍛え上げられながらも、綺麗に整備された街から出してもらえない五将軍の嫡男は、遠出がしてみたいと何度かグレミオに言っていたことがある。
4207「テッド、狩りに行くんだろう? 僕も連れて行ってくれないか」
「えっ? お前を?」
突拍子もないことを言い出すのは今に始まったことではなかったが、まさかそう言われるとは思わず、テッドはティアを指差し怪訝な表情を浮かべた。
「手助けはできないだろうけど、テッドが狩りをするところが見てみたいんだ。それに、狩りをするなら街の外に出るだろう? 僕、大きくなってからはまだ、この街から出たことないから……外を見てみたい」
ああ、成る程。
街の外に出てみたいという興味なら、ティアの提案にも合点がいく。
心身ともに鍛え上げられながらも、綺麗に整備された街から出してもらえない五将軍の嫡男は、遠出がしてみたいと何度かグレミオに言っていたことがある。
sabasavasabasav
DONEサンチェスの心境とマッシュとの関係。好き勝手に妄想しました。
彼はどうしてああいうことをしたのか。個人的解釈です。
▽
反乱軍と会議で名を付けられた、反勢力の集団を監視してほしい。
それは皇帝閣下直々の命ではなくアイン・ジードたっての願いだった。国の重鎮が表立って動くことがあっては帝国の──バルバロッサの威厳に関わるということらしい。概ねその提案は理由を含めて同調できるものだったため、サンチェスは少し思考を巡らせた後、同意した。
今思えば、そのときのアインは何とも言えぬ複雑な表情を浮かべていた。諜報員だと知れればこの身がどうなるか分からない。危険な任務を与えた故の思慮だと思っていたのだが、サンチェスは遠くないうちにその表情の意味を理解することになった。
反乱軍リーダーと遭遇したのは、寂れた街の酒場の一角であった。
4126反乱軍と会議で名を付けられた、反勢力の集団を監視してほしい。
それは皇帝閣下直々の命ではなくアイン・ジードたっての願いだった。国の重鎮が表立って動くことがあっては帝国の──バルバロッサの威厳に関わるということらしい。概ねその提案は理由を含めて同調できるものだったため、サンチェスは少し思考を巡らせた後、同意した。
今思えば、そのときのアインは何とも言えぬ複雑な表情を浮かべていた。諜報員だと知れればこの身がどうなるか分からない。危険な任務を与えた故の思慮だと思っていたのだが、サンチェスは遠くないうちにその表情の意味を理解することになった。
反乱軍リーダーと遭遇したのは、寂れた街の酒場の一角であった。