つづり
DONE姉上さえ生きていてくれたらなぁと詮無きことを考える。江澄が江澄でいてくれるだけで良いって阿離から伝えて欲しい。姉と弟産まれたばかりの柔らかい甥を抱き、胸を赤子の香りでいっぱいにする。姉と甥のそばに居られる短い間は泣けば抱き、おしめが濡れれば代える。乳をやる以外のことは何でもやった。
「姉上、何故人は誰かを好きになるんです?」
寝もせず落ち着いた金凌を抱えて飽きもせずあやしながら、ふとそんな言葉を口にした。
人はどうして別の誰かを好きになるの。江厭離はそう尋ねたもう1人の弟を想った。
「阿澄にも好きな人が出来たの?」
それにしては思い詰めた表情だった。返事はなかった。「是」ということだろう。この子も難しい恋をしているようだ。
「宗主だからこんな人と結婚せねばとか、蓮花塢の為にと自分の心を犠牲にしてはだめよ。」
江澄は責任感が強い。悩んでいるのはそんなところだろう。一生を囚われようとしている弟が不憫でならなかった。
1416「姉上、何故人は誰かを好きになるんです?」
寝もせず落ち着いた金凌を抱えて飽きもせずあやしながら、ふとそんな言葉を口にした。
人はどうして別の誰かを好きになるの。江厭離はそう尋ねたもう1人の弟を想った。
「阿澄にも好きな人が出来たの?」
それにしては思い詰めた表情だった。返事はなかった。「是」ということだろう。この子も難しい恋をしているようだ。
「宗主だからこんな人と結婚せねばとか、蓮花塢の為にと自分の心を犠牲にしてはだめよ。」
江澄は責任感が強い。悩んでいるのはそんなところだろう。一生を囚われようとしている弟が不憫でならなかった。
ぬのさと
DONE魔道祖師オンライン交流会6のペーパーラリー「蓮」で書いた、小さい頃の師姐のお話。聖女のような彼女も抑圧や鬱屈があったのかなと。
姉 私が思い出せる限りの昔から、私の両親は不仲でした。夜中に厠へ行こうと起きたとき、両親が云い争いをしている声が扉から漏れていて、暗い廊下をそれ以上は進めずにうずくまってしまったことがあります。ただ、そのころはまだ、子どもの前では喧嘩をしないという意識は、両親にもあったようです。父と母、バラバラでちぐはぐながら、どちらもにかわいがられた記憶もあります。
待望の江氏の嫡男として弟が産まれ、子はかすがいどころか、それにより両親の仲は決定的にこじれました。
元々、雲夢江氏と異なり、母の実家である眉山虞氏は身分による規律と権威を重視し、家風も、個人の気質も相容れません。母にそっくりな風貌の弟は、成長するにつれて性格も母とよく似ていることがわかり、両親の喧嘩も増えていきました。このころには、もはや親の喧嘩を子どもに隠すということすらしなくなりました。
1679待望の江氏の嫡男として弟が産まれ、子はかすがいどころか、それにより両親の仲は決定的にこじれました。
元々、雲夢江氏と異なり、母の実家である眉山虞氏は身分による規律と権威を重視し、家風も、個人の気質も相容れません。母にそっくりな風貌の弟は、成長するにつれて性格も母とよく似ていることがわかり、両親の喧嘩も増えていきました。このころには、もはや親の喧嘩を子どもに隠すということすらしなくなりました。
chunyang_3
MEMOCQL話数ワンドロワンライ2回目(11~20話)。18話の江澄と汁物の思い出の話。魏無羨の話を聞きながら涙を流している江澄※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
忘れ難き味 ドンドンと扉を叩く音に、眠りについていた厭離は起こされた。
「姉上……!」
扉の向こうの姉に向かって江澄は声を上げた。父にも母にも言ったら絶対に怒られるに決まっていて怖くて言えないから、江澄には姉に頼る以外の道は無かった。厭離は一体何があったのだろうと思ったのか、急いで扉を開けてくれた。
「阿澄どうしたの?」
「姉上……姉上、どうしよう!」
厭離の顔を見た瞬間、堪えきれなくなり江澄はわんわんと声を上げて泣き出してしまった。
今日、父は江澄が妃妃や小愛と名前をつけて可愛がっていた犬達を知らぬ間に他所へあげてしまっていた。江澄がそのことを知ったのは彼女達がもうずっと遠くに行ってしまってからだ。そんなの絶対に納得がいかないし、悲しくて苦しくてどうして良いか分からないまま夜になってしまい、江澄は部屋でずっと泣き喚いていた。
2333「姉上……!」
扉の向こうの姉に向かって江澄は声を上げた。父にも母にも言ったら絶対に怒られるに決まっていて怖くて言えないから、江澄には姉に頼る以外の道は無かった。厭離は一体何があったのだろうと思ったのか、急いで扉を開けてくれた。
「阿澄どうしたの?」
「姉上……姉上、どうしよう!」
厭離の顔を見た瞬間、堪えきれなくなり江澄はわんわんと声を上げて泣き出してしまった。
今日、父は江澄が妃妃や小愛と名前をつけて可愛がっていた犬達を知らぬ間に他所へあげてしまっていた。江澄がそのことを知ったのは彼女達がもうずっと遠くに行ってしまってからだ。そんなの絶対に納得がいかないし、悲しくて苦しくてどうして良いか分からないまま夜になってしまい、江澄は部屋でずっと泣き喚いていた。