Rin
MOURNINGクリスマスの日に灰王とカケ王窓の外からハイジさんの声が聞こえる。曇った窓をタオルで拭くと、誰かと話している彼の姿が見えた。窓を開けるとカラカラと軽い音が響く。王子は窓枠に肘を乗せ、その場に腰を下ろす。そこで楽しそうなハイジさんが王子の視線に気づき、チラチラ部屋の方を見て来る。彼は口パクで「かぜをひく、まどをしめろ」とだけ言った。
それもそうだ、と王子はマフラーを巻きコートを着る。今までの笑顔が苦笑いに変わり、ハイジさんは「違う。そうじゃない」とばかり眉をひそめている。早く家に入って欲しい。理由は会話の相手が近所の女子だから、などではない。記念すべきクリスマスの今日、わざわざハイジさんに会いに来たのだろうとか。まさかプレゼントまで渡す気だろうか、とか。決してそういうわけでは。
1281それもそうだ、と王子はマフラーを巻きコートを着る。今までの笑顔が苦笑いに変わり、ハイジさんは「違う。そうじゃない」とばかり眉をひそめている。早く家に入って欲しい。理由は会話の相手が近所の女子だから、などではない。記念すべきクリスマスの今日、わざわざハイジさんに会いに来たのだろうとか。まさかプレゼントまで渡す気だろうか、とか。決してそういうわけでは。
Rin
REHABILIハイジと走と王子カフェにて 温かいブラックコーヒーを飲みながら、ハイジは店内を見回す。穏やかな音楽の流れるカフェには、カップルがまばらに座っていた。他は一人で来ている男性客が四人程。その内一人はサンドイッチを齧りながらチラチラこちらを見ている。もう一人は隣に座っている年上の風貌の男だが、読書中というのに気もそぞろで、紅茶のコップを持ち上げる度こちらを盗み見ている。
走もそれらの視線に気づき、明らかに眉間に皺を寄せる。居心地が悪そうに肩を回し、ぶどうジュースに刺したストローに口をつけたまま、彼らの視線の先を見た。
「美味しい!このフォルムは……あの漫画に出てくるケーキにそっくりだな……」
そして肝心の本人はというと、嬉しそうに苺のショートケーキを突いている。二人のため息にも気づかぬまま、大きな苺を齧ったところだ。
3503走もそれらの視線に気づき、明らかに眉間に皺を寄せる。居心地が悪そうに肩を回し、ぶどうジュースに刺したストローに口をつけたまま、彼らの視線の先を見た。
「美味しい!このフォルムは……あの漫画に出てくるケーキにそっくりだな……」
そして肝心の本人はというと、嬉しそうに苺のショートケーキを突いている。二人のため息にも気づかぬまま、大きな苺を齧ったところだ。
Rin
MOURNING灰王とカケ王気味二人のアルファと王子の話【 運命を呪っている人 】
検診する前から、自分はオメガ、またはベータだろうと思っていた。人より体格が小さく力も弱かった。成績は比較的良い方だったけれど、数か月に一度来る独特な性欲に耐え切れず、試験日に登校出来なかった日もあった。だから自分がオメガだという検診結果を知っても、王子は特に動揺もしなかった。オメガは生まれつき社会的地位が低く、冷遇される立場だと分かっている。アルファに翻弄されるなんて馬鹿らしい。自分は一生番など作らず、一人でひっそり生きていければ良い、と思っていた。
灰二は王子がオメガであることを知り、いくつかのルールを設けた。一つめはオメガの発情期抑制剤を必ず飲むこと。二つめは発情期の際部屋から出ないこと。三つめはいずれ運命の番を知ったとしても、王子が卒業するまで避妊すること。四つめは、社会のルールとされているオメガ専用の首輪の鍵を、灰二が所持する……ということだった。
5638検診する前から、自分はオメガ、またはベータだろうと思っていた。人より体格が小さく力も弱かった。成績は比較的良い方だったけれど、数か月に一度来る独特な性欲に耐え切れず、試験日に登校出来なかった日もあった。だから自分がオメガだという検診結果を知っても、王子は特に動揺もしなかった。オメガは生まれつき社会的地位が低く、冷遇される立場だと分かっている。アルファに翻弄されるなんて馬鹿らしい。自分は一生番など作らず、一人でひっそり生きていければ良い、と思っていた。
灰二は王子がオメガであることを知り、いくつかのルールを設けた。一つめはオメガの発情期抑制剤を必ず飲むこと。二つめは発情期の際部屋から出ないこと。三つめはいずれ運命の番を知ったとしても、王子が卒業するまで避妊すること。四つめは、社会のルールとされているオメガ専用の首輪の鍵を、灰二が所持する……ということだった。
Rin
MOURNINGカケ王とハイジさん「なんだ、また喧嘩か?きみたちは仲直りしたばかりだろう。走が何か言ったのか?」
茜を一目見ただけで察したらしい。台所で下準備をしていた灰二が振り向く。まず逃げ込むように駆けてきたのは茜だった。レタスを洗っている灰二に気づき、珍しく擦り寄ってくる。
ここから離れまい。一番の安全地帯だ…とでも言いたげな表情を見て、どうせ走とモメたのだろうとピンと来た。それから慌てた様子の走が滑り込む。隣に立っている茜を見て、不服そうに椅子に座った。
「…どうして逃げるんですか。ストレッチは今までもしてましたよね?なんで今更…」
「自分の胸に手を当て考えてみなさい!ぼっ僕は一人でいい…もう一人で出来るから…放っておいてくれ!」
3888茜を一目見ただけで察したらしい。台所で下準備をしていた灰二が振り向く。まず逃げ込むように駆けてきたのは茜だった。レタスを洗っている灰二に気づき、珍しく擦り寄ってくる。
ここから離れまい。一番の安全地帯だ…とでも言いたげな表情を見て、どうせ走とモメたのだろうとピンと来た。それから慌てた様子の走が滑り込む。隣に立っている茜を見て、不服そうに椅子に座った。
「…どうして逃げるんですか。ストレッチは今までもしてましたよね?なんで今更…」
「自分の胸に手を当て考えてみなさい!ぼっ僕は一人でいい…もう一人で出来るから…放っておいてくれ!」