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SPOILERハデポセです。1行目から5月発売の最新話ネタバレの為、単行本派の方は閲覧注意です。ぼんぼんさんのこちらのイラスト(https://twitter.com/bonbon_fj/status/1530760998273323010?s=21&t=sbYkrV1StAESrFRZq5ndUA)に文章を付けさせて頂きました。 583now_or_lever
DONEホワイトデーhdpsです。飲料の嗜好に関する捏造あり。TL放流時から特に加筆などはしておりません。作中の茶葉は実在する物をもじってます。海神の別名でググると出ますので機会のある方は是非お飲みください^ ^はじめてのにがみ誰にでも背伸びしたい年頃はあるものだ。この神ですら例外でなく。
ハデスは所謂コーヒー党である。だが、普段と違う味を楽しみたいときに、気分さえのれば別の飲み物を用意することもある。その日選んだのは紅茶だ。戸棚からポットを取り出し、湯を沸かし始めたところで、本を抱えた幼い弟が近寄ってきた。
「…茶を淹れているのか」
「ああ。今から飲もうと思ってな…どうした?そろそろ寝る時間だろう?」
膝を折り目線を合わせてやるが、両手で抱えた本で顔の半分が隠れたポセイドンが、ちらちらとテーブルの上に視線をやっていてなかなか目が合わない。
「…余も飲む」
「お前もか?しかしだな…」
普段ポセイドンが就寝前に口にしているのは白湯やホットミルクだ。よく眠れるように、と昔からそれらばかり飲ませてきており、当のポセイドンが今まで不満を訴えたことも無いため、何の疑問も無く続けている習慣であった。
2667ハデスは所謂コーヒー党である。だが、普段と違う味を楽しみたいときに、気分さえのれば別の飲み物を用意することもある。その日選んだのは紅茶だ。戸棚からポットを取り出し、湯を沸かし始めたところで、本を抱えた幼い弟が近寄ってきた。
「…茶を淹れているのか」
「ああ。今から飲もうと思ってな…どうした?そろそろ寝る時間だろう?」
膝を折り目線を合わせてやるが、両手で抱えた本で顔の半分が隠れたポセイドンが、ちらちらとテーブルの上に視線をやっていてなかなか目が合わない。
「…余も飲む」
「お前もか?しかしだな…」
普段ポセイドンが就寝前に口にしているのは白湯やホットミルクだ。よく眠れるように、と昔からそれらばかり飲ませてきており、当のポセイドンが今まで不満を訴えたことも無いため、何の疑問も無く続けている習慣であった。
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DONEハデポセバレンタイン2022。今更ですが修正後のverをポイピクに載せます。刺々しい冥府には咲かんだろうし今日くらいは花でも見ていけ。その言葉とともに贈られた色とりどりの薔薇。花を活けるのは不慣れだがせっかく弟から贈られたのだから、と埃を被った花瓶を引っ張り出し、悪戦苦闘ののち全て片付け終えたのがつい先ほど。
ハデスはソファに腰掛け、中指の先端に付いた小さな刺し傷を見詰めていた。
(そう言えば棘があったな)
花どころか久しく植物さえ視界に入らない生活だったのが祟った。この余がたかだか花を扱うだけで負傷するとは。大怪我でも無し、放っておいてもいずれ治るであろう。とは言ってもよく使う指であるが故に、何かに触れる度刺したときの感触を思い出して僅かながら不快である。さてどうしたものか、と掌と手の甲を交互に返しながら指を見ていると、今度は爪が気になってきた。少し長いしそろそろ切っても良い気がする。整えるか。
1252ハデスはソファに腰掛け、中指の先端に付いた小さな刺し傷を見詰めていた。
(そう言えば棘があったな)
花どころか久しく植物さえ視界に入らない生活だったのが祟った。この余がたかだか花を扱うだけで負傷するとは。大怪我でも無し、放っておいてもいずれ治るであろう。とは言ってもよく使う指であるが故に、何かに触れる度刺したときの感触を思い出して僅かながら不快である。さてどうしたものか、と掌と手の甲を交互に返しながら指を見ていると、今度は爪が気になってきた。少し長いしそろそろ切っても良い気がする。整えるか。
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DONEハデポセ未満。兄弟愛の範囲でほのぼのを目指した筈だった。おわりと始まり所用で出掛ける兄の脚にとてとてと転がるようにしがみ付く。
「いってらっしゃい…はやくかえってきて…」
健気にも門まで見送りに来る幼い彼の頭を撫で、必ず帰るから良い子で待っているんだぞ、と伝えると、花が咲くようにふわりと笑って手を振ってくれた。
そんな事があった。確かにあったのだ。この頃のお前の笑顔は、余だけが知っている。例えお前自身が成長し、記憶に残す価値も無いと忘れても、余だけは覚えているから、この先も、ずっと。
はてどうして天井を見ているんだったか。静謐な白亜の城は隅々まで手入れが行き届いているのがよくわかる。例え平素はこのように凝視されることが無くともだ。
ハデスが自身の身を振り返ると、冷たい床に背と手を任せ、持参した荷物は周囲に散り散りばらばらになっていた。最後に尻餅をついたのはどのくらい昔だったか。きっともう思い出せないくらい、ずっとずっと過去のことだ。
2565「いってらっしゃい…はやくかえってきて…」
健気にも門まで見送りに来る幼い彼の頭を撫で、必ず帰るから良い子で待っているんだぞ、と伝えると、花が咲くようにふわりと笑って手を振ってくれた。
そんな事があった。確かにあったのだ。この頃のお前の笑顔は、余だけが知っている。例えお前自身が成長し、記憶に残す価値も無いと忘れても、余だけは覚えているから、この先も、ずっと。
はてどうして天井を見ているんだったか。静謐な白亜の城は隅々まで手入れが行き届いているのがよくわかる。例え平素はこのように凝視されることが無くともだ。
ハデスが自身の身を振り返ると、冷たい床に背と手を任せ、持参した荷物は周囲に散り散りばらばらになっていた。最後に尻餅をついたのはどのくらい昔だったか。きっともう思い出せないくらい、ずっとずっと過去のことだ。
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DONEハデポセ。幼少期捏造あり。さらっとですが事後描写注意。昔話をしようかかつては兄弟全員で使っていた寝台も、次男と三男が自分の部屋を持ったため、今は末弟と長兄だけが横になっている。あんなに窮屈に感じていたのに広くなったものだ。ハデスは弟たちの成長ぶりに、一柱感慨に耽っていた。
もう遅いしそろそろ自分も床につくか。隣ですやすや眠る末弟を起こさないよう注意を払いながら、横になったその時、ごく小さな音がドアの方から聞こえた。こんな時間にノックとは珍しい。アダマスだろうか、それとも…起き上がる前に控えめにドアが開かれ、ノックの主がひょっこり顔を見せた。
「どうした、こんな夜更けに。眠れないのか?」
三男ポセイドンが自室で一柱で寝始めてから今日で一週間。アダマスはもっと遅い年齢での独立であったが、このポセイドンは兄たちの想定より早めに寝所を出たがった。神は群れぬ、もう添い寝は不要だと主張して。
1311もう遅いしそろそろ自分も床につくか。隣ですやすや眠る末弟を起こさないよう注意を払いながら、横になったその時、ごく小さな音がドアの方から聞こえた。こんな時間にノックとは珍しい。アダマスだろうか、それとも…起き上がる前に控えめにドアが開かれ、ノックの主がひょっこり顔を見せた。
「どうした、こんな夜更けに。眠れないのか?」
三男ポセイドンが自室で一柱で寝始めてから今日で一週間。アダマスはもっと遅い年齢での独立であったが、このポセイドンは兄たちの想定より早めに寝所を出たがった。神は群れぬ、もう添い寝は不要だと主張して。