昔話をしようかかつては兄弟全員で使っていた寝台も、次男と三男が自分の部屋を持ったため、今は末弟と長兄だけが横になっている。あんなに窮屈に感じていたのに広くなったものだ。ハデスは弟たちの成長ぶりに、一柱感慨に耽っていた。
もう遅いしそろそろ自分も床につくか。隣ですやすや眠る末弟を起こさないよう注意を払いながら、横になったその時、ごく小さな音がドアの方から聞こえた。こんな時間にノックとは珍しい。アダマスだろうか、それとも…起き上がる前に控えめにドアが開かれ、ノックの主がひょっこり顔を見せた。
「どうした、こんな夜更けに。眠れないのか?」
三男ポセイドンが自室で一柱で寝始めてから今日で一週間。アダマスはもっと遅い年齢での独立であったが、このポセイドンは兄たちの想定より早めに寝所を出たがった。神は群れぬ、もう添い寝は不要だと主張して。
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