クリスマス 目の前の十字架に首を垂れて祈る。
「天にまします我らの父よ…」
長年唱え続けてきた祈りの言葉は、考えるより先に、歌うように口から出てくる。祈りの言葉を捧げ終わると、そっと目を開けて隣を見る。三ツ谷はまだ目を瞑っていた。神を前にして、此奴は何を祈っているんだろうか。
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今年も礼拝に行ってくると告げた時、問題なければ自分も連れて行ってほしいと三ツ谷が言ってきた。
「ちょっと調べただけだけど、キリスト教って同性愛は『逸脱した行為』ってされてるところもあるんだろ。大寿くん1人で神様の前に祈らせたくねェよ。」
三ツ谷の射抜くような視線は強いのに綺麗で、気づけば大寿は頷きをひとつ返していた。
三ツ谷の祈りが終わると、2人で教会を後にする。日付を越えた今の時間、教会の中どころか周りにも人気は無い。早く帰って風呂に入って温まろうと帰路を急ごうとすると、
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