オルゴールの音色が子守唄を奏でる部屋で僕と彼女は均衡を保っていた。
「その手を離してくれないかな」
「…」
僕の腕をギリギリと握り潰すかのように掴んで、彼女は感情の読めない瞳でこちらを見る。
一体、その細腕のどこにそんな力を隠しているのやら。
外では司くん家の警備隊達が慌ただしく走り回っている。
…これでは捕まってしまうのも時間の問題だろう。
「君は、どうしても彼のことを諦めないんだね?」
最後の質問のつもりで話しかけるが、これも無視されてしまう。
僕の行動一つ一つを見逃さないようにじっと睨むその瞳は獣のようだった。
はぁと一つ、溜め息を吐いてポケットに隠してあったボタンを押した。
時間を置いて、ここから離れた部屋から順に爆発が起きる。
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