今週もまた、この扉の前に立つ時がやって来た。
見慣れた寮の扉についた部屋番号は、創の部屋のものではない。それは間違いようのない、大切な人の部屋番号だ。
その数字の羅列を見つめながら、懐で水筒を抱える手にきゅっと力を込める。
この扉の中に招かれたらきっと、今夜もこの扉の奥にいる大切な彼と二人、水筒の中の紅茶を飲みつつ、他愛のない話をするのだろう。
それから彼の手が自分に触れて、自分も彼に触れて……その先のことを想像すると創の頬はかっと熱を持ち、抱えた水筒の奥にある心臓がドキドキと高鳴っていく。
羞恥の奥に潜む甘美な刺激は、脳をじんと痺れさせる。その痺れに飲み込まれないうちにと、大きく呼吸をすると、意を決して手を前へと伸ばす。
コンコンと扉を軽くノックをすると、閉ざされた奥からは足音と共に「はい」といつもの彼の声が近づいてきた。
ガチャリと開いたドアから顔を出した友也の髪はなぜか濡れていた。
ほわりとした湿気と石鹸の香りが創に届く。
「創、待ってたよ」
「は、はい……お邪魔します」
首にかけたタオルでがしがしと髪を拭く仕草を見ながら、部屋の中へ入っていく友也の背を問いかける。
「友也くん、お風呂入ってたんですか?」
「あぁ、シャワー浴びたんだよ。さっきまでサークル活動で外走らされて、もう汗だくでさぁ…」
友也の言葉を耳にしながら、創はふと気がつく。
そうだ、自分も今日は授業やレッスン、個人の仕事等でバタバタと移動することが多く……酷く汗をかいた。
自分もきちんと汗を流してからきた方がよかったのかもしれない