このまま愛し 殺されてしまえればなんて幸せ僕の狂った世界の中は皆醜かった
救いを求めて向かった荘園も、醜人達の集まりだった。でも、その人達は化け物の僕にも親切に接してくれた。そこは不思議な場所だった。
そんな中でも、一際醜い男がいた。
囚人服に、首には鎖を身に付けていかにも罪人といった見た目の男は、化け物の僕よりも醜くて、誰よりも綺麗だった。
罪人に対してそう思ってしまう僕は、もしかして狂っているのだろうか。
人とは違う見た目の僕を、あいつは笑い飛ばした。
そして、こう言った。
「この世界を蝕んでいる昔からある病気の名は「偏見」だ。
たまたま君は人と違う見た目に生まれてしまっただけで、誰しもが起こりうる事。
つまらない優越感で人を罵る言葉に、傷つく必要なんて無い。そんな奴らを相手にする時間も勿体無い」
そう言って微笑む優しい色をした瞳。
この目に魂を奪われてはいけない
虜になってしまうから。
危険だ。この瞳は危険だ。逃げろ、逃げなくては。
この瞳に捕まってしまう!
それが恐ろしくて、僕は枷の隙間に手を伸ばして、手に力を込めた。
男は、一瞬ぽかん、とした顔をしたが、僕を見つめたまま笑った。
「来世では、私達、普通に出会えるといいね」
そう言って、男は笑った。
その眩しい残像が目の奥に焼き付いて離れない。
もう既に、この目に魂を奪われてしまった。
このまま、力を込めれば枝を折るように簡単にこの細い首は折れてしまうだろう。
だけど、いくらそれを実行しようとしても謎か力らが入らなかった。
そんな僕の手をとって、男はそっと僕を抱き寄せた。
腕の中は暖かくて、僕はまるで産まれたての赤子のように男の腕の中で泣きじゃくったあと、ただ朝まで抱き合ったまま眠った。