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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第二部9話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第9話です。「クロウリー」の名を王妃から賜ったディアヴァルは、王妃から「お前の助けが必要なの」と言われ、地下の実験室へといざなわれます…。(本文=約1900文字/豆知識=約800文字)

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部九話「地下室にて」 奇妙な地下室の中で、王妃グリムヒルデはディアヴァルを棚に置かれた髑髏の上にとまらせた。四方の壁は、天井まで届く棚に所狭しと置かれた大小の瓶詰めや干物になった動物の身体の一部や植物の欠片が仕舞い込まれている。空気には奇妙に金臭い匂いが混ざっていた。
     王妃は部屋の真ん中に陣取った大釜の下に火を入れ、釜に張った液体を長柄の柄杓ひしゃくでかき混ぜながら様々な瓶を厳しい目でチェックし、少しづつ素材を足してゆく。新たな素材が液面に触れる度に、シュっと小さな音がして怪しげな色の煙が吹き上がる。
     一通り素材を足すと、王妃は柄杓を回す手を止めて、ディアヴァルを見た。
    「さて、クロウリーや、お前の力を分けておくれ。でも痛い思いはさせたくないわ。だからこれを飲んで頂戴」
     王妃に差し出された小さなコップには薄紫の液体が入っていた。
     ディアヴァルは恐る恐るコップの中を覗き込むと、思い切って液をくちばしに含んでみだ。
     甘ったるい香りが立ちのぼり、薄っすらと甘い味がする。
     嘴を上げて喉の奥に液体を流し込むと、それはさらさらと流れ落ちていった。二口、三口と飲むうちに目がしばしばし、真っすぐ立っていられなくなってきた。なんとかしっかり立っていようと思っても、身体がふらふらと揺れてくる。とうとうディアヴァルはくたりとその場にへたり込んでしまった。
     最後に覚えているのは、上から見つめる王妃の瞳の黄水晶シトリンのような美しさだった。

     どれくらいったのだろうか。
     ディアヴァルが目覚めると、そこは柔らかなクッションの上だった。
     ぼんやりする頭を振ってあたりを見回すと、自分がいるのは王妃の部屋の片隅に置かれた台の上だとわかった。
     自分は、いや、王妃はあれからどうしたんだろう。何が起こったのだろうか。
     そう思って立ち上がろうとした時、左足の爪先に軽い痛みが走った。
     見下ろすと、中指の爪の先が少しだけ短くなっているように見えた。頭を足の高さまで下ろしてよくよく見てみると、爪の先を血が出るギリギリの位置で鋭利な刃物で切ってあるように見えた。おそらく、焼いて止血したのだろう、爪が少しだけ溶けたようになっている。
     もしかして、血を取られたのだろうか。
     そうか、「お前の力を分けておくれ」ってそういうことだったのかな。
     眠らされて深爪を切られたことに軽くショックを受けてはいたが、同時にあの女性ひとの役に立てたのかもしれないと思うと、静かな喜びも湧き上がってきた。
     そうか、あの女性ひとが俺をここまで運んでくれたのか……。調合は成功したのだろうか。いったい何の薬を作ったのだろう?
     そんなことを考えていると、腹が減っていることに気がついた。あたりを見回してみると、クッションの横に食べ物を入れた箱が置いてある。茹でた卵や新鮮な野菜、少しだけど肉もある。彼はありがたくご馳走になることにしたのだった。
     食事が終わって一息ついたころ、部屋の扉が開いて王妃が戻ってきた。
     後ろにには侍女が付き従っている。
     王妃の姿はこれまでで最高に美しく見えた。
     着ているのは紫を基調とした装飾の少ないドレスだが、余計な装飾がない分逆に王妃の美しさが際立っているように思えた。美しい金髪はすっぽりと黒い布に覆い隠されていて、ディアヴァルはそれだけは残念だなと思った。
     髪を覆う黒布の上には冠を被り、肩には漆黒のベルベットを贅沢に使ったシンプルだが豪華なマントを羽織っている。侍女は王妃の後ろに回ると、マントを脱がせた。王妃は「ありがとう。もう良いわ」と言うと片手を振って侍女を下がらせた。
     それから彼女はディアヴァルに目を留めると、ふっと目元を和ませ歩み寄ってきた。
    「良かった。ちゃんと目が覚めたわね。お前の血のおかげで良い薬が出来たわ。これであの男を返り討ちにしてやれる」
     王妃の手が、ディアヴァルの頭にそっと触れた。そのまま首から背中へと撫で下ろす。ディアヴァルは心地よさに身震いし、うっとりと目を細めた。王妃は彼を撫でながら、言葉を継いだ。
    「殺したりはしないわ。それよりもっと良い方法よ。あの薬を飲めば、たちまち私に恋をする。しかも私に逆らえなくなるのよ。そうなればもうこの国を奪うことはできなくなる。我が君の遺されたこの国を守れるのよ……」
     最後の言葉を聞いて、ディアヴァルは胸が痛んだ。彼女は今も、亡くなった王を愛している……。自分の想いを彼女に届けようもないことが引き裂かれるように辛く、想いに応える者がもはや居ない彼女の辛さを思うこともまた、とてもつらいのだった。





    【カラス豆知識】
    今回は、カラスとオオカミがタッグを組んで狩りをする話をご紹介します。
    種の異なる動物同士が助け合って生活する「共生」はそう珍しいものではありません。が、共に狩りをする、となると激レアになるのではと思います。
    そのレアな関係がオオカミとカラスの間にあるのだそうです。まるで神話か伝説のお話のようですが、これは実際に観察されている事実です。鳥萌え×獣萌えの性癖持ちにはとてつもなくロマンのある話ですね。
    カラスは空の上からオオカミよりも遠くまで見ることが出来、先んじて獲物をみつけてオオカミに知らせます。オオカミはカラスおかげで獲物をより見つけやすくなり、カラスはオオカミのおかげでより多くの餌にありつける、というわけです。
    もっとも、良いことばかりではないようで、オオカミの仕留めた獲物のなんと三分の一もの肉をカラスが持ち去ってしまうこともあるそうです。
    詳しくは下の記事2本をどうぞ。

    「オオカミとカラスの意外な協力関係とは?」
    https://nazology.net/archives/43874
    次の記事はだいぶ前にNHKで放送した番組のようですが、あいにく本家NHKの番組ページはもう消えていました。

    「一匹狼とカラスが組んで狩りをしてるって知ってました? 動物の驚くべき共存に驚きの声」
    https://temita.jp/twitter/54270

    オオカミとカラスの協力関係と同じような関係が人間と鳥の間にもあります。
    アフリカのミツオシエは人間にミツバチの巣の場所を教え、人間から破壊した巣(美味しい幼虫が一杯入っている!)をご褒美に貰うのです。
    そちらについてはこの記事を御覧ください。

    「野鳥と人が蜂蜜めぐり「共生」、科学的に解明 」| ナショナルジオグラフィック日本版サイト https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/a/072500045/
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
    1634

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第3話
    後にクロウリーが学園長となるカラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第三話です。
    今回は王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の結婚式のシーンです。
    本文約1450文字+カラス豆知識約740文字のおまけ付き。今回の豆知識はカラスがお互いを確認する方法「コンタクトコール」についてです(資料リンクあり)。
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部三話「結婚式」 五月のよく晴れた朝、王城は晴ればれとした雰囲気に包まれていた。
     城のすべての尖塔に美しい三角旗がはためき、城門は春の花々を編み込んだ花綱で飾り立てられて開放されている。城門からは次々と来客が流れ込み、城はかつてない賑わいに沸き立っていた。
     今日は、この国の王が新たな王妃をめとる、その結婚の式典が催されるのだ。城の庭園は民草にも開放され、たくさんのご馳走と飲み物が振る舞われる。
     麗々しい式典のクライマックスは、正午の結婚の誓いだ。国の最も高位の聖職者がやってきて王と新たな王妃の誓いに立ち会い、この結婚に祝福を与えることになっている。
     その場には、もちろんディアヴァルも訪れていた。なにせ不吉とされてしまうカラスの身、あまりおおっぴらに姿を表すことはしなかったけれど、物陰から人々を観察し、ちらりとでもグリムヒルデの姿が見えないかと期待していたのだ。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
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