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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第二部16話
    スノーホワイト姫が恋に落ちたことは、たちまち女王の知るところとなった。女王はなんとかして姫と若者を引きはなそうとするが……。
    (本文=3080文字/今回は豆知識はお休みです)

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑯話「女王と鏡」 暗い部屋の中、鏡だけがぼんやりと光を放っていた。
     その光は、鏡の前に立つ女王をあやしく照らし出していた。女王の美貌には一抹いちまつかげりがあった。美しさそのものが衰えたのではない。深い哀しみと疲れが、忍び寄る宵闇よいやみのようにかげを落としていたのだ。スノーホワイト姫の美がうららかに晴れた青空なら、女王の美は凄絶せいぜつなまでに燃え上がる夕焼けのようだった。
     女王は鏡に向かって問いかけた。
    「鏡よ鏡、今日、姫はどうしていたのか?」
     すると鏡面に光の波紋がゆらめき、その中心からある光景が浮かび上がってきた。

     ──井戸に向かって歌いかける姫。
     ──現れた貴公子。
     ──そして白い鳩を介した口づけ。

     それを見た女王の形相が一変した。目は驚愕に大きく見開かれ、口元は怒りに震えている。女王は鏡に詰め寄ると、蛇の縁飾りを両手で握りしめた。握る力の強さに指の節が白く浮き上がる。
    「なんてことなの……。あれはかたきの息子じゃないの……!!」
     絞り出すようにつぶやいた女王は、鏡を掴んだまま更に問いかけた。
    「鏡よ鏡、姫はあの男を愛したのか?」
     鏡の中で一際ひときわ明るく炎が燃え上がり、光を放つ。
    しかり」
     女王は鏡を突き飛ばすように放すと、どっと崩れるように椅子に座り込んだ。
    「なんてことなの……。やはり私はあの子の育て方を間違えた!! あの子に、しっかりと仇は仇、仇の息子もまた仇と教え込むべきだったのよ。あの子に憎しみを教えたくはなかった……。父を失った哀しみで十分だと思っていたのよ。それが裏目に出たなんて。ああ、今更遅い。あの子は仇の息子を愛してしまった……」
     ディアヴァルは、そっと女王の椅子の背に乗ると、いつものように身体を寄せて、くちばしで髪をいた。
     女王は、ディアヴァルに手を差し出すと、いつものように細くたおやかな指でそっと喉を撫でてくれた。その優しい感触に恍惚となったディアヴァルの耳に、女王の言葉が聞こえた。
    愛しい子マイ・ディア。私、どうしたら良いのかしらね。あの憎い仇からは何度も求婚されている。『愛し合って一つになろう。身も心も国も』というのが決り文句。反吐が出るわ。もちろんあいつは私の言いなりだから、どうとでも出来る。でも息子はそうじゃない。あの王子が姫を見初みそめたのなら、奴は喜んで婚姻を申し込んでくるでしょう。そうなったら、姫の代りに仇の息子が愛しい我が君の国をぐことになるのよ。そんなの駄目。許せないわ……!!」
     女王は立ち上がると、両手を揉みしだきながら部屋のなかを歩き回った。時々「ああ、だめだわ」とか「あれはどうかしら」などと呟いている。
    「急がなければ。あの男が求婚してくる前に、二人を上手く引き離さなければ。どうすれば良いの。考えるのよ。考えなきゃ……」

     女王は立ち止まると、キッと顔をあげた。そして書き物机に向かって座ると、羊皮紙に何か書き付けて畳み、封蝋ふうろうをたらして王の紋章が刻まれた印章を押した。
     そして、呼び鈴を鳴らして召し使い頭を呼ぶと、封書を離宮へと届けるよう命じた。

     翌日の晩。女王はまた鏡に同じことを問うた。すると鏡が見せたのは、高い尖塔せんとうの上に閉じ込められた姫が、白い鳩にたくして自分のリボンを王子に届け、王子がそのリボンに愛の言葉を書いて送り返す光景だった。
     それを見て、女王はまた手紙を書いた。
     更に翌晩。女王の問いに応えて鏡が見せたのは、地下室に閉じ込められた姫が自分の片袖を引きちぎってネズミに届けさせ、それに王子が愛の言葉と、救助の約束を書いて届ける様子だった。
     それを見た女王の顔が怒りと苦悩に歪んだ。彼女は疲れた様子で椅子に腰を下ろすと、片手を額にあて、もう片方の手を椅子の肘掛けに投げ出して深々とため息をついた。
     途方に暮れた様子で女王は呟いた。
    「私はどうすれば良いの? あの子をどこに隠しても、あいつと通じてしまうなんて……」
     すると、鏡が光を増した。
     鏡の中の顔が物言いたげに口を歪めている。
     光に気づき、目をあげた女王がそれを見た。
    「お前、何を笑っているの?! 答えを知っているのなら言いなさい!」
     鏡の中に炎が燃え上がり、男の顔を陰鬱いんうつに照らし出す。
    「私はあらゆる問いに答えるもの。あなた様の奴隷です。何でもお尋ね下さい」
     その声に、ディアヴァルはなぜか不吉な物を感じた。気づくと全身の羽毛が逆立っている。彼は女王が口を開こうとしていることに気がついた。その質問はしてはだめだ!止めなくては!そう思うのに、金縛りにあったように身体が動かない。声すらだせなかった。
     そんな彼に気づくことなく、女王が立ち上がった……。
    「鏡よ、鏡、教えておくれ。スノーホワイト姫をあの男から永遠に引き離す方法は?」
     鏡のなかでふたたび火炎が吹き上がった。踊る炎が男の顔に陰惨いんさんな影を与える。そして男が口を開いた。
    「姫を殺すことです」
     女王が打たれたようによろめき、あとじさった。
    「ダメよ、それは、それだけはダメだわ!」
    「御随意ずいいに」と、顔が応える。
     女王は追い詰められた表情で聞いた。
    「鏡よ、姫が生きていたら、この国はどうなるのか?」
     すると、鏡の中の炎がすっとしずまり、男の顔がよく見えなくなった。男の声はどこか遠くからのように小さく木霊こだまして聞こえてきた。
    「明日のことはわからぬ。未来は霧のなか……」
     女王はぐっと拳を握りしめると、ドン!と鏡の台座を殴り付け、そのままずるずると床にうずくまった。
     気がつくとディアヴァルは動けるようになっていた。彼は椅子の背から舞い降りると、女王のかたわらに寄り添った。
     彼の耳に女王の苦渋に満ちた呟きが聞こえてきた。
    「ああ、我が君、私はどうすれば良いのですか……」
     ディアヴァルは、心の底から女王を慰めたいと思ったが、ただ寄り添うことしか出来ないのだった。

     その晩、女王は手紙を書かなかった。そして、床についても眠れず、うつらうつらしたかと思うと突然、恐ろしい叫び声を上げて飛び起きるのだった。
     その声に何事かと護衛が声をかけたが、女王は何でもありません、夢を見ただけよ、と、下がらせるのだった。
     翌朝、ろくに眠れなかったであろう女王は、ベッドから起き出すと鏡に向かった。
     そこには、たった一晩でやつれ果てたおのれの姿があった。
    「何て事。こんな姿は誰にも見せちゃだめ……」
     そういうと、女王はいつも以上に丁寧に髪を整え化粧を施した。
    「これでいいかしら」
     そう呟くと、女王は鏡の前から下がって全身を映し出した。
     女王はすっと背筋を伸ばすと、自分の姿を頭の天辺から爪先までじっくりと検分した。
    「よし」
     小さく呟くと、手に杖をとる。
     それを見たディアヴァルは、さっと翼を広げると杖に飛び移った。
     女王は鏡に世界一美しいのはスノーホワイト姫だと言われてからは、毎朝毎晩の質問はしなくなっていた。だがこの朝、女王は鏡に問いかけた。
    「鏡よ、鏡。この世で一番勇敢なのは誰?」
     すると顔が現れて応えた。
    「それは女王さま、貴女です」
     女王は頭をそびやかすと、堂々とした足取りで部屋を出ていった。
     その目には、強い意志の光が宿っていた。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第3話
    後にクロウリーが学園長となるカラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第三話です。
    今回は王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の結婚式のシーンです。
    本文約1450文字+カラス豆知識約740文字のおまけ付き。今回の豆知識はカラスがお互いを確認する方法「コンタクトコール」についてです(資料リンクあり)。
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部三話「結婚式」 五月のよく晴れた朝、王城は晴ればれとした雰囲気に包まれていた。
     城のすべての尖塔に美しい三角旗がはためき、城門は春の花々を編み込んだ花綱で飾り立てられて開放されている。城門からは次々と来客が流れ込み、城はかつてない賑わいに沸き立っていた。
     今日は、この国の王が新たな王妃をめとる、その結婚の式典が催されるのだ。城の庭園は民草にも開放され、たくさんのご馳走と飲み物が振る舞われる。
     麗々しい式典のクライマックスは、正午の結婚の誓いだ。国の最も高位の聖職者がやってきて王と新たな王妃の誓いに立ち会い、この結婚に祝福を与えることになっている。
     その場には、もちろんディアヴァルも訪れていた。なにせ不吉とされてしまうカラスの身、あまりおおっぴらに姿を表すことはしなかったけれど、物陰から人々を観察し、ちらりとでもグリムヒルデの姿が見えないかと期待していたのだ。
    2210

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
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