メイドさんにご褒美スンっと扉が開いてそこに広がる光景にアスランは目を瞬かせた。
まず目に入ったのがこちらを見て固まってるシンと執務机でひらひらと手を振ってのほほんとしているキラの様子だった。目線を下げて、シンが着ている服装を確認する。
首元に大きなリボンをつけた白いエプロンと黒い膝までのスカート・・・フリルがふんだんにあしらわれたそれはメイド服と呼ぶのではないだろうか?可愛らしくネームプレートには「しん」と書いてある。同様の服をキラも着ているようだった。
「あ・・・アンタなんでここに?!!」
「・・キラ・・?」
訳が分からない状態のシンとアスランに対して、一人訳知りの男、キラが説明を始めた。
キラの体術訓練サボりの常習化が発端だった。キラの世話役を務めているシンはキラと一緒にサボりの罰としてメイド服での執務を命じられた。アスランもキラの体術訓練の相手役にとわざわざオーブから呼ばれたのだ。
「つまりは、全部お前のせいってことだな・・・」
「アスラン、そんなに怒らなくても!!それに・・・さ」
「?」
「そろそろ逢いたくなる頃かな?って」
着替えながらのキラの言葉。アスランは全部判ってる上でのキラの行動に嘆息した。そんな二人の会話にシンは一人できょとんとする。
「そうだな・・・でも、それとこれは関係ないからな」
「お手柔らかにお願いします」
思わず合掌して頼んでしまった。気心知れた仲とは言え、相手は軍学校でトップの成績で卒業した相手である。こてんぱんにしごかれるのは目に見えていた。
帰りはキラはそのまま直帰するから、戸締まりとアスランを送るように言われて一旦執務室に着替えを取りに来た。
こちらをじーっと見て来るアスランの視線がくすぐったい。
「んだよ!!変なら変って言えよ!!」
「・・・そんな事思ってない」
「ならなんだよ!」
本当はメイド服着てる自分なんて、女装してる所なんて見られたくなかった。着替えようと名札を外そうとすると、ボソリとアスランが言った。
「似合うなって・・・」
「・・・バカにしてんの?」
「いや、そうじゃなくて。本気で思ってるんだが・・・」
アスランは嘘をついていない。だから、タチが悪い。ソファに座ってるアスランの上に跨ると、挑発的な声で言ってやる。
「じゃあご褒美下さいよ・・・!!」
するとアスランの手が自分の頭を掴んで顔が近づく、間近に見える・・・と思ったら唇塞がれてた。
舌と舌が解かれた後、額に軽いリップ音を落とされる。
レースのリボン、フリルのエプロン、まるで女みたいな自分がアスランの上に乗ってて、こんなに誘われてるという状態が頭にわんわんと響いて来る。
「アンタね・・・メイドに抱かれる趣味あんの?」
「・・・お前に抱かれるんだろう?」
「ふーん・・・たっぷりご奉仕してやりますよ」
「優しくしてくれるのか?」
「・・・アンタ次第ですね」
手袋で、脱がせたアスランの素肌を撫でると反応するから、なんかやっぱり優しく出来るか不安になって来た。加減出来そうにない。
つんつんと突かれて、シンはハッとなって目覚めた。
そして一緒に寝てる筈の存在を確認して、居ない事を知って一抹の切なさを覚えた。
「・・・まさか泊って行くとは・・・準備しといて良かったや・・・」
「へ?!やっぱり夢じゃなかったの?」
自分を突いて起こした上官はやれやれと言った調子で、笑いかける。
アスランは居なくなっていた。昨日の記憶を掘り起こしてすぐに気づいた。
着崩されたメイド服、脱ぎ散らかされた床にのびているリボンもフリルのエプロンも。昨夜、何が起こったのか物語ってるようだった。売り言葉と買い言葉。
またのお越しをお待ちしてます(ハート)なんて恥ずかしくて言えないけど。だってまた大事な、大切な言葉すっ飛ばした・・・と煩悶するシンだった。