この腕の中にいたいエターナルの戦艦の中で、宇宙を窓から眺めながら、キラの腕の中にいた。
「不安なの・・・?」
暗闇の中で、震えていた私を見つけたキラが手を差し伸べてくれた。
この腕の中は温かくて優しくて気持ちがいいから。
「不安じゃない!ただの武者震いだ!!」
「そう・・・」
そう言って抱きしめられたまま、ゆっくりと宙を浮く。
キラの吐息を感じる、熱を感じる、それが安堵を与えてくれる。
私は一度、彼を失った。もう二度と失いたくない。
「・・・今度は私が、お前を守るから」
「・・だから、アスランを見張ってるの?」
一瞬ドキリとしてそれから首を振った。キラが言った言葉は刺さった。
キラはゆっくりと瞬きをする。その仕草に鼓動がドクドクと鳴る。
「もし・・・そうなら、カガリでも許さないよ」
「・・・そうじゃない。ちゃんと、アイツの事、考えてるさ」
アスランはキラを一度殺した。でも、だから気にしてるわけじゃない。アイツも後悔してたし良い奴だって知ってる。・・・今、私の傍にいてくれる事を感謝している。
「キラこそ、どうするんだ?」
「・・・僕は、フレイとちゃんと話をしなくちゃ・・・」
遥か遠くを見ながら、キラが呟いて、私を強く抱きしめる。
きっとこの腕は、この先他の誰かを抱きしめるのだろう。
それとも、今気持ちを伝えたら、キラは私を選んでくれるだろうか?兄弟だって知った今でも、愛してくれるだろうか?
心が割かれた時から、魂は一つに溶け合いたがってる気がして。
この手を引いて飛びついて抱きしめれたら・・・と想っても、この気持ちは彼にとって迷惑にしかならないと知ってる。彼をとっても困らせる。
抱きしめてくれるこの腕の主を、守りたい。・・・祈るから。
この先の未来で、キラが泣かなくていい世界が訪れますように、と。
どうして僕たちは不器用なんだろうね?
カガリを見つけて、震えてるからって言って腕の中に閉じ込めた。
カガリを抱きしめていると温かくて優しくて気持ちいいから。
エターナルの軍艦の中で、浮かびながらポツポツと語らっていると、ただただ愛しさが増して行く。
気づいたら強く抱きしめていた。
ああ、これから僕は彼女を失うんだな・・・と思った。きっと彼女はこの先他の誰かに抱きしめられるんだろう。
それが、アスランなら・・・僕はこの気持ちを閉じ込めて構わないと思ってるんだ。
二つに割れた身体は、一つに戻りたがるのかもしれないと、誰かが言った。
でもそんな事のためにカガリを傷つけるのなら、僕が傷ついた方がずっといい。
僕たちは一つにならない方がいいと思う。
抱きしめるこの腕の中の存在に、誓うから。
この先の未来で、カガリが泣かなくていい世界が訪れますように、と。
「泣くなよな・・・」
「カガリこそ・・・」
涙が両方の頬を伝っていた。気づかずに。
こんな感情、知らないでいれたらと思った。
抱きしめ合う二人には何の隙間も空洞もなくて、コツンと額を合わせる。
「酷い顔してるぞ」
「・・・うん」
「きっと私もだな」
「・・・そうだね」
本当に言いたい言葉も、伝わっていた。
涙を拭ったら先に進もうか。選ぶ未来は未だ決まっていない。