サンドイッチ作る話時計の針がもう間もなくぴったりと重なろうとしていた。いい感じにお腹も空いてきたしお昼は何にしようかなとペンを走らせることを疎かにしながら窓の外に目をやれば、何に遮られることの無い陽射しが庭に降り注いでいるのが見えた。そうだ、と彼女は小さく呟いて目の前で作業をしていた五月雨に声をかけた。
「何入れる?」
「なにを選んでもよろしいのですか?」
先程とは変わって二人は台所で向き合う。色違いのエプロンは普段は厨当番が使う物だから彼女には少々大きめで、親から借りたようになってしまったがご愛嬌。
五月雨の質問返しに彼女は少し警戒する。
「挟めるものなら……カレーとかはちょっと困るけど」
「それは挟みませんけど」と真顔で訂正した五月雨はちらりとメモの貼り付けられている業者仕様の大きな冷蔵庫を振り返った。
「ポテトサラダを挟んでみたいです。昨日晩御飯に出た際に南泉がそんな話をしていました」
「あ〜。してたね」
五月雨の提案に彼女は冷蔵庫を開ける。昨晩の残りのポテトサラダを取り出しつつ他にも目をやれば、意外と挟めそうなものが多い。このベーコンとか食べちゃわないとダメじゃなかったかな。
「……ソーセージとかもどう?」
そんな風に冷蔵庫を覗きながらあれもこれも挟んでしまえと作ったのはサンドイッチ。気づけば何種類にもなってしまったが、二人でなら食べ切れるだろう。たぶん。
出来上がったそれをひとつ、五月雨が目線の高さまで持ち上げて断面を見つめる。スマホで調べながら見様見真似で作った生クリームに蜜柑と苺のサンドイッチは綺麗に花を咲かせてくれていた。五月雨が目を細める。
「とても美味しそうです」
「なんか食べたことないやつも出来たしね」
エビフライとベーコンとか今思えば何故その組み合わせにしてしまったのか。卵も入っているしボリュームがすごい。
「食べるのが楽しみですね」
五月雨は特に気に留めて無いようで次から次へとお皿を掲げては断面を観察している。その様子に彼女は頬を緩めながらわざとらしく咳払いをして見せた。
「もうひとつ楽しみを追加しよっか」
にこにこと見上る彼女に五月雨はお皿を持ち上げたまま不思議そう首を傾げた。
「レジャーシート持ってきてあっちで食べるのはどう?」
そう言って庭を指差せば、合点が行った紫の目は陽の光に負けないほどに輝いていた。