ヒプマイ 寂雷×乱数(案⑥)『夜の藤の花』 藤が見頃だと話を聞き、少し肌寒い春の夜。夜の藤が咲くと噂のフラワーパークへ足を運んだ乱数。珍しく一人で訪れて、ライトアップされた美しい花々に思わずスマホを取り出す。
「此処、写真映えしそう。撮っちゃおうかな」
スマホを片手に「ハイチーズ!!」と一人ライトアップされた花々を背景に写真を撮っていると藤の場所に佇む寂雷を発見。恐る恐る近づき、少し嫌みったらしく呼び掛ける。
「じゃーくらーいー。えぇーいがぁい。なんか似合わなそうなのにー」
軽く貶す口調に寂雷は聞く耳を持たずゆっくり振り向く。
「仕事帰りにラジオで耳にして立ち寄ったんですよ。それにしても、藤の香りがいいですね。紫色の花に薄い青のライト神秘的です」
寂雷の言う通り、フワッと香る藤の花の香り。優しくもキツくない香りは不思議と心をホッとさせてくれる。だが、藤の花を絶賛する言葉に嫉妬したのか乱数は頬を膨らませ「ちょっと、無視しないでよ」と拗ねる。
「すみません。でも、一番綺麗なのは藤ではなく――」
寂雷は一歩踏み出し、腕を伸ばす。乱数の顎に優しく手を添え――「キミですよ」と静かに唇を重ねた。