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    秘色-ヒソク-

    @hsk_yah

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    秘色-ヒソク-

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    さるいお おともだちに影響されて初挑戦!でも全然わかんない!難しすぎ!!服従とは別の気持ち、反発も忘れちゃうくらい、この二人はもっと根底で繋がってるよねって思うけど形にするのは難易度高すぎ。無謀な挑戦しました……。 お題【いつもの呪文がきかないの】https://shindanmaker.com/1130533

    #さるいお
    thatKindOfFish
    ##さるいお

     滅私、貢献、奉仕。
     滅私、貢献、奉仕。
     頭で考えて意識して、胸の内に留めるために繰り返す。負荷は欲しいけれど、それは自分を抑えるような圧迫感とは違う。服従したいけれど、この衝動には抗わなきゃいけない。だってなんだか乗っ取られそう。空っぽのはずの僕の中から顔を出そうとしているもの。奥の奥にいたのは無我だったはずなのに、これはなに、きみはだれ。
    「さるちゃん、」
    「あ? ンだよ、急に。ぼーっとしてたかと思ったら」
     さっきまで呼んでも気付かなかったくせに、って言われて、それが自分のことだってすぐには繋がらなかった。いけない、こんなの奴隷失格だ。しっかりしなくちゃ、なんて思ったそばから、こんなことを訊ねる自分がやっぱり信じられない。
    「ねえ、さるちゃん。自分に服従したら、僕、どうなるのかなあ?」
    「いやお前、唐突すぎてわけわかんねえよ。もっと伝わるように言え」
     あれ、優しい。珍しい。そんなん知るか、って言われるかと思ったのに。機嫌がいいのかな、それとも自分が言ったことだから? 自分に服従したことあんのかよ、って。
     あのね、僕は報酬なんて欲しくないんだ。労われると居心地が悪くなっちゃう。それなのに、最近ときどき嬉しくなっちゃうことがあって。気まぐれに、何かが返ってきたときに。ううん、誰にでもじゃない、滅多にないことなんだけど。そのときは気付かないまま、しばらくして冷静になると、困っちゃう。役に立つために何だってするのが僕の喜びで、だから何かしなくちゃ、じゃないと寄与できない。でも、なんにもしなくても、なんかいいなあってなっちゃうんだ、こうしてると。どうしてかな、僕の中に広がってる広大な虚無にまだ何かがある、とか? そんなことってあるのかな。
    「滅私、貢献、奉仕、って。どれだけ唱えても、しっくりこないんだよねぇ……」
    「んなもん簡単じゃねえか。その中のどれでもねえってことだろ」
    「それってなに? 僕の知らない僕のこと、さるちゃんは何か知ってるの?」
    「おまっ……それを俺に訊くなよ」
     そう言ったさるちゃんは焦ったみたいに仰け反って、それから呆れ顔、なんだろうこの反応は。溜息なんかついて、もう、これじゃ僕が変なこと言ってるみたい。結局ヒントも何もないし、なのにどうして、あんなに落ち着きなく騒ぎ立てていた衝動が、今は柔らかくかたちを変えている。もう一押し、根負けして教えてくれたりしないかな。それとも少しいじわる言うのもいいかもしれない。
    「ねえ、なんで? 知ってるなら教えてくれたってよくない!? さるちゃんのケチ!」
    「はあ!? ケチじゃねえよ! 俺に訊くな、自分で気付け! ……ったく、厄介だな。まあ、お前に関することでひとつ言うなら、」
    「言うなら? なに?」
    「こんなに我の強ぇ無我、世界中探し尽くしてもどこにもいねえってことなら知ってるよ」
    「なにそれ!? どういうこと? さるちゃんこそ、もっとわかるように言ってよ!」
    「はーー、疲れた。なんか腹もへったし。いお、なんか作れ」
    「えぇ? うーん……もう、わかったよ。何が食べたい?」
     何でもいいって返事がくるのはわかってる。でも、言葉通りの意味じゃないのもよく知ってる。キッチンへ向かおうと立ち上がった僕に向けて、さるちゃんが何か呟いた。だけど聞き返してもそこにあるのは答えじゃなくて、弾かれたギターの弦が震えるだけ。
    「あ、その曲、僕が好きなやつ」
    「知ってる」
    「じゃあ作り終わるまで、僕に聞こえるように弾いててよ」
    「俺の部屋から台所まで、アンプに繋いで爆音で鳴らせって?」
    「そうじゃなくて! 近くで弾いててほしいってこと!」
    「はいはい、わかってるよ」
     先に行ってろ、と手を振られるから、足取り軽く廊下を進む。自分のことはわからずじまい、でも今はそれも気にならない。効き目の薄い呪文より、今欲しいのは好きな音、きみの声。
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    DOODLEカイオエ/現パロ/カインの死ネタ/捏造過多/「無.花.果とムーン」の一部パロディ
    【カイオエ】生きて、元気に暮らせ カインがツリーナッツ類のアレルギーだったということは、周囲の大抵の人物が知っていた。ハイスクールの友人はもちろん、教師も寮監も直接関わったことがない近所のキオスクの店員も把握していたほどである。
     ナイトレイ一家はカインが寄宿制学校に編入すると同時に、古い持ち家を売却して引越しをしているが、当時公立小学校に通っていたカインが、クリケット大会で振る舞われたパイ料理を食べ、隠し味に使われていたアーモンドペーストで発作を引き起こし、みるみるうちに顔面蒼白と呼吸困難に陥って救急車で運ばれたエピソードは、近隣では知られただったそうだ。
     そうでなくとも、カインは有名な子どもだった。ごく平凡な家庭に生まれたが、常に恒星のような輝きを放っていた。運動神経がよく、あらゆるスポーツの代表になった。快活な性格で友人も多かったし、整った顔立ちで女の子にも人気だった。誰に対してもわけ隔てなく接し、いじめや不正を嫌った。人の上に立つよりは、人の中心に立つことに長けていた。その光は成長と共により明るさを増す。未来永劫愛し、愛される人生を送るのだろうと、誰もが確信していた節がある。
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