Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    tp0_g4

    @tp0_g4

    よんきしの絵とか文の落書き&練習置き場
    ※カプはランジクとヴェパシのみ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍟 🍶 🍖 🍮
    POIPOI 38

    tp0_g4

    ☆quiet follow

    ヴェパシ

    #ヴェパシ
    vipassi

    10/22:メメント・モリ「ハロウィンってね、死んじゃった人が戻ってくる日なんだって!」
     幼いエルーンの少年は、きらきらと無邪気な笑顔を向けてヴェインに話した。
    「おおー!そういえばそうだったなぁ!流石、物知りだなぁ!」
     わしゃわしゃと大きな掌で頭を撫でられ、少年は耳を揺らしながらにこにこと頬を赤らめると、まだまだ足りないといった様子で話しを続ける。
    「僕はね、おじいちゃんに会いたいんだ!だから今日は、お母さんと一緒におじいちゃんの好きなお菓子を買いに来たんだよ!」
     それからね、あとね、と、一生懸命な少年の話に対し、ヴェインは楽しそうに何度も頷く。
     ヴェインが出会ったこの少年は、食料の買い出しの為に立ち寄った店に母親と一緒に来ていた。好奇心が抑えられないのか、よっぽど外出が楽しかったのか、今ヴェインにしているように母親に何度も何度も質問を投げかけている姿がよく目立っていた。
     母親の気持ちを汲んだヴェインは配送の手続きなどを手早く済ませると、買い物が終わるまで自分が少年の話し相手になるのはどうかと提案した。店員の後押しもあり、少年の母親は申し訳なさそうにしつつも、感謝を込めてヴェインの提案を受け入れてくれたので、二人は店の近くの広場で待つことにしたのだった。
    「お兄さんも、ハロウィンになったら会いたい人はいる?」
     広場の長椅子の上で、少年は期待に満ちた顔を向けていた。その思いに応えるように、ヴェインは少年よりも元気な声で話す。
    「おう!いるぜ!でも、もし会えたらお兄さん嬉し過ぎて泣いちまうかもしれねぇー!」
    「わー!お兄さん泣かないで!」
     おーいおいと大げさに泣く真似をするヴェインの様子に、少年は小鳥のような声で笑いながらじゃれついた。そうしてふざけたり、お互いの好きな物の話をしていたら、いつの間にか、無事に買い物を終えた母親が少年を迎えに来ていた。
     母親は何度もヴェインにお礼を言うと少年と共に帰っていった。途中、少年は振り返っては千切れんばかりにヴェインに向かって手を振っていた。
     少年の姿が見えなくなった後、再びヴェインは長椅子に腰を下ろす。今まで特に気に留めていなかったが、広場にぽつぽつと飾られている装飾はカボチャや蝙蝠を模したものが多く、ハロウィンが近いのだと改めて実感させてくれた。
    「(実際に会ったら、やっぱ泣いちまうのかなぁ、俺)」
     少年と話したことを思い出すと、ヴェインは青空を眺めながらハロウィンの日に両親と再会した時の情景を、ありえないと思いつつも頭の中に描き始める。
     先程の少年のように、いや、騎士らしくもっと毅然とした態度で近況の報告がしたい。ちゃんと騎士になれたよとか、今は白竜騎士団の副団長なんだとか、身長が何十センチも伸びたんだとか。
     ランちゃんのことやジークフリートさんのこと、アーサーとモルドレットにトネリロとクルスのことも勿論、他の白竜騎士団の皆のこと。それにパーシヴァルの話もしたいしグランやルリア、ビィ君についても紹介したい。
     他にも沢山の凄い人達の話や、フェードラッヘに住む大好きな人達の話。小さな事件のことや大きな事件のことを、今も、これからもずっと頑張るんだって、全部、全部話したい。
     突然、ヴェインの視界が暗くなる。顔の表面に何か薄い布のようなものが覆いかぶさったかと思えば、その上からべしゃりと掌で押し付けられたような圧力がかかる。
    「おわぁ!!!」
     ヴェインは堪らずくぐもった悲鳴を上げると、顔面を襲った圧がすぐに去ったので、その隙に顔に乗せられた布を剥がす。布の正体はただのハンカチのように思えたが、よく見ると紋章が縫い付けられておりそれにはかなり見覚えがあった。
    「うわ、パーさん!」
     ハンカチから目線を逸らすと、武器屋への発注作業を担当していたパーシヴァルがいつの間にか目の前にいた。
    「街中で間抜け面を晒すな」
     驚きのあまり暫くぽかんとしていたヴェインだったが、突然ぶつけられた悪態には流石に納得がいかずに反論する。
    「ま、間抜けってなんだよ!大体、俺別に口なんか開けてなかっただろ!」
    「……無自覚か。おめでたい奴だ」
    「え……マジで俺、口開けてボーっとしてたの……?」
     急にしおらしく口元を隠し始めたヴェインの態度については無視を決めたのか、パーシヴァルが無言で立ち去ろうと背を向ける。
     焦ったヴェインがその場から勢いよく立ち上がった瞬間、目元が熱く滲んだような錯覚を覚えた。反射的に手で目元を拭うと熱は手の甲に移り、ヴェインは自分の瞳が濡れていたのだと初めて自覚した。
     何もかもを察すると、ヴェインはパーシヴァルに飛びつくような勢いで話しかける。
    「な、なぁ、パーさん!」
     訝しげな表情を向けられようが、構うことなくヴェインは喋り続ける。
    「これ、ありがとな!ちゃんと洗って返すから」
    「いい。貴様が持っておけ」
    「いーや!ぜってぇ綺麗にして返す!」
    「しつこいぞ駄犬!」
     ヴェインはパーシヴァルと押し問答を繰り返す。しかし何を言われようとも、また借りるかもしれないから、という理由だけは隠し続けていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏🎃👏👍💖😊✨💞💘🎃❤😭💛💝💛💝💛💝🎃🎃💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works